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【特別企画】選手インタビュー 川瀬将義編|第5回ちはやふる小倉山杯

はじめに

こんにちは。
ちはやふる基金スタッフです。

今回は本大会4回目の出場となる川瀬将義名人。今年の名人戦では見事2度目の防衛に成功し、目標である永世名人に向けて着々と進んでいます。また、Karuta Clubの代表でもあり、かるたの普及も行っています。

インタビューでは強くなるためのヒントも聞けましたよ!最後まで要チェックです。


❶川瀬名人にとっての「ちはやふる小倉山杯」

見せる・見られる大会

—川瀬名人の目から見た小倉山杯はどんな感じですか?

タイトル戦だとはあまり思っていないです。「お祭り」っぽいかな。あと、3試合しかないので体力的には楽ですね(笑)

—(笑)一般大会とは違った気持ちで臨まれているのでしょうか?

そうですね。やはり小倉山杯は「見せる」「見られる」大会
勝ち負けにこだわるというよりは、フラットな気持ちで取れてるのかなと思ってます。

「ちはやふる小倉山杯」はお祭りみたいで、他の大会とは違った雰囲気があって僕は好きです。

お金をいただいていますし、大会に対する基金の思いも知ってるので、どう観客を盛り上げていくかを考えてますね。

—見せる側の視点での小倉山杯を感じているんですね。

今は選手で出ている方が大事なんだろうなと思ってるんですけど、本当は大会の運営や裏方を手伝いたいくらいです(笑)

—ありがとうございます(涙)「大会でもっとこうしたい!」といった選手の想いも聞きたいと思ってます。

それで言うと、見に来てくれた人と接する機会をもっと増やしたいですね。僕はもっと選手に(ファンとの触れ合いを)求めていいと思っています。

試合が終わった後ならいいと思うんですよね。試合が終わる前は求められるときついなあと思いますけど。決勝が終わった後に、もうちょっと何かあってもいいのかな。やっぱり、もっと見に来てくれた人と接する機会がほしいですね。

—基金としても、選手とお客さまがコミュニケーションを取れる形を模索していきたいと思います。

ありがとうございます。欲を言えば、後夜祭とかやりたいです(笑)

第4回ちはやふる小倉山杯

❷今の練習環境・練習相手は?

メインは一人取り。ポイントは…

—小倉山杯ももうすぐですが、練習はどれくらいされてますか?

今は週3〜4日練習をしていますね。

—名人戦が終わった後も練習してますか?

そうですね、終わった後も。今週は4本。先週までは週3本でした。今週からは4本取るつもりです。

—今は横浜にお住まいとのことですが、練習の時は三島に行くのでしょうか?

名人戦の後は三島にはまだ行ってないです。
でも、小倉山杯の1週間前は各会対抗団体戦があるので、今週末には三島に行きます!

実はほとんど一人取りなんですよね。名人戦が終わってからは一人でしか取ってないです。

—一人取りって難しくないですか?

確かにそうかもしれないです。でも、人と試合をする方が楽かなあと思います。何も考えなくていいので。

ちゃんと「練習」するなら、一人取りの方がいいなあと最近は思っていますね。今は一人取りの方が都合がいい練習をしたい、というのもありますが。

—一人取りは文字通り「一人で試合をする」のですよね?

そうです。自陣に25枚、相手陣に25枚並べて、一試合だけ取ります。その前に払い練をする時もあります。

—一人取りは自分を見つめないと難しいかなと思うのですが、どういうところを意識してやっていますか?

自分の取りが速いか遅いか」「ちゃんと動けているかいないか」「ちゃんと反応できているかどうか」を見る。これ、ぶっちゃけ僕は人と取っていても同じことしていて。なので、あんまり変わんないです。

相手の影響で自分の取りをさせてもらえないようなパターンの練習も必要だとは思いますが…今は相手どうこう以前に、単純に自分の取りを見直さなきゃなあと思ってるので一人取りをしています。

やっぱり試合を勝ちに行っちゃうとできない練習もあったりするので、その辺りをしっかり見つめ直してやってますね。

「やってますね」とか言って、一人取りがすごそうに話してますけど、家から出るのめんどくさいだけですよ(笑)

強くなりたいなら〇〇せよ?!

—それでも、駆け引きの練習などは人と取らないと難しいんじゃないのかなと素人感覚では思うんです。自分のライン(基準となる速さ)が決まっていて、そこを超えられたらOKみたいな感覚なんでしょうか?

そうですね。(人との試合と一人取りは)両方必要だと思っていて。やっぱり取りのレベル、速く取れないことには始まらないし、それを誰が相手でもやれないと。誰が相手でもというと言い過ぎかもしれないですけど、相手次第ではできなかったら、それはその時どうするかは考えないといけない。

—自分のラインはみんな持っているものでしょうか?

持ててない人が大半ですね。A級でも持ててないと思ってる。僕はありますよ。たぶん小倉山杯に出る人はみんな持ってるんじゃないかなと思います。お手つきをいっぱいする人は、持ってない傾向が強いです。

B級でも持ってる人は持ってると思います。持ってる人は持ってるんですが、その基準があんまり高くない。基準はあるんだけど、レベルが高くないだけで、初段を取ってなくても持ってる人は持ってるかもしれないですね。

—自分のラインはあった方がいいのですか?

絶対にあった方がいいです

—それはどうやって身につければいいですか?

これ、インタビューに書かれちゃうのか…本当はオンラインかるた部Karuta Club Roomに入って学んでほしいな…(笑)

(人と取っていると)相手に影響されちゃうんですよ。「自分がいつどう取っててどこで取れば正解か」って一生懸命自分と向き合わないとわかんなくて。相手と向き合った時点ではそこはわからないので、一人取りをしてください

1番の根幹にあるのが、自分がどのタイミングで札に触ればいいのかだと思う。そこの基準が1番大事。そこを持ててない人はやっぱりずっとブレ続けるので、ヒョイって手を出しただけでお手つきしてくれる、簡単に勝てる人になっちゃう。

でも、相手と試合した方が楽しいから。みんな誰かと練習したがりますよね。

—そうですよね、そこが一人取りも楽しいとなったらいいなとは思うけど、やっぱり試合が楽しいですよね。

それでいくと、僕は相手がいても一人取りになっちゃうことが多いんです。同じレベルで戦ってくれる人が少ないんです。もちろん、対人戦がつまんない、物足りないという意味ではないですよ!

みんな人と取りながら楽しくかるたをして強くなっていくんだけど、強くなればなるほど同じレベルで戦ってくれる人が少なくなるから、練習相手がいなくなって、結局一人取りに行き着くという話だと思うんです。

—川瀬さんを困らせるくらいの人がじゃんじゃん出てくるといいですね!

じゃんじゃんは困るな(笑)一人二人でいいかな(笑)みなさん待っています!

ちはやふる小倉山杯 川瀬将義

❸ポジティブスイッチは?

押す必要はない

—川瀬名人のポジティブスイッチを教えてください!試合前にネガティブになるタイプでしょうか?

難しい質問ですね(笑)ならないというのも嘘かもしれないしなあ…。
ポジティブスイッチは押す必要がないというのが答えかもしれないです。

あと、私は普通にしているといろいろやりすぎちゃうタイプなので、試合前はしっかり試合のことだけに集中するようにしています。他のことはやらないようにする。疲れないようにすれば、ポジティブなんで。

それと、しっかり寝て食べてれば大丈夫です。疲れがたまるとやっぱりネガティブになるので。寝不足とかね。

—いろいろとやってることが、自分がかるたのこともやれるためにプラスに働いてるなという意識はありますか?

ありますね。それがなかったら僕はかるたをやっていないと思います。

—そうなんですね。試合前のルーティーンはありますか?

うーん、なんもしないです。
基本フラットですね。試合に対する向き合い方が雑なだけな気もするんですけど、「負ける時は負けるじゃん」と思ってるので。

—ちょっと意地悪な質問ですが、名人戦もですか?

「負ける時は負けるじゃん」というのは変わらないんですよ。勝とうとは思ってるし、勝ちに行くし、やれることはやるんだけど、でも究極負ける時は負けるじゃないですか。かるたって運も絡むので、負ける時は負けるんです。

自信との裏返しで「やれることをやって、それで通用しなかったらしょうがないよね」というところがあるので、そんなにネガティブにはならないです。なので、ポジティブスイッチを押す必要があんまりないんですよね。

—「柳」みたいですね。流れに身を任せながら運気を掴みにいくイメージで。…あってますか?

あってます!もちろん、試合前にやれることはやっているし、準備はしています。

—試合の前にやれることは全部やれていますか?

やってるんですけど、究極でやってはないと思ってて。やっぱり会社員をしてるし、かるたを普及する活動もしてるし。ほぼできてないと思っていて。

絶対に勝つための準備をするんだったら、それより試合の練習した方がいいよねっていう局面って死ぬほどいっぱいあるんですよ。でも、それを選ばない。そこは僕の甘いところでもあり、でもしょうがないよねっていうところでもある。自分に厳しいだけな気もします。

—私もそんな気がします。

遊びじゃないんだ

単純に僕、かるたに関しては遊びだと思ってないんで。上のレベルで戦ってる人たちはある程度そうなんじゃないかなって思ってるんですけど。

別にかるたが楽しいのは否定しないんですけど、遊びとしてはやってない。

僕が楽しさを見出してるところは、「これができるようになった」「あれができるようになった」みたいなところですね。自分の成長してるところに楽しさを見出してるのであって。もしかしたら、僕の楽しみ方が変なのかな(笑)

—そんなことないと思いますよ。勝つことが目標で勝ってないというか、自分のために戦ってないけど、自分のためじゃないから勝てる、ちょっとヒーローっぽいなあと思って見ています。

ありがとうございます(笑)

勝つことが全てだった

—かるたを遊びと思わなくなったのはいつからですか?

多分小学2年生からですかね。

—えー?!

はい、原点は。小学1年生かもしれないですけど。

—これを一生自分の仕事にしていこうみたいな感覚ですか?

いやいやいや。小学2年生の時はそうじゃないですよ。「勝たなきゃ意味がない」「勝つのが全て」と思ってましたね。

僕が小さい時にかるたをやっていた環境って、子どもがいないんですよ。周りでかるたをやってた子どもは、5年生の人が一人いたかな、くらいで。それも1ヶ月に1回会うかどうかで。友達と楽しくやるかるたをやったことなかったんです、大学に入るまでは。

東北大学かるた会に入ってだいぶ変わりましたね。だから団体戦にこだわってるのかもしれないですね。でも、1年生の最初の頃は小学生の流れでやってたので「勝たなきゃ」とか思ってました。

僕自身、中高でかるたをやらなかったのが結構大きくて。中高はやれなかったという言い訳の元やらなかったんです。

寮に入ってて、かるたやる時間もないし、部活も一応やってたか。でも、大したことしてなくて、やろうと思えばやれたんでしょうけど、それこそ一人取りなんか全然できたんでしょうけど、やる気もないからやんない。「勉強もしなきゃねー」みたいな感じでほとんどやってなくって。

でも、夏休みに帰省した時は「ちょっとやるか」みたいな。しばらく休むとちょっとやりたくなったりもするんですよね(笑)もうA級だったんで、やればある程度は勝てますし。それくらいの温度感でやってたら、やっぱり大会では超A級には勝てなかったです。それこそ三好さんと対戦して、遊ばれて負けてましたね。

どうすれば勝てるかなあとか思ってやってたところはあるので、大学では強くなろうとしてましたし、小学生の時の頭があって「強くならなきゃ勝たなきゃ」と必死で。「A級優勝しなきゃ」みたいな。

しばらく頑張ったらA級で優勝できたんですけど、今度は他のみんなにも勝ってほしいなっていう欲が出てきて。

特に団体戦になると、自分が勝つだけじゃチームは負けてしまうので、「どうやったらチームが勝てるんだろう」ってことばっか考えてたのが大学3年生くらいですね。

仲間がいるから…

仲間がいれば楽しいじゃないですか。団体戦で絶対に勝たなきゃいけない時の「お前勝てよ!」っていうプレッシャーをかける勝ち方みたいな感じじゃなくて、「どうやってチームを作って、どうやってコミュニケーションを取って、どうやって後輩を育てて活躍してもらうか」みたいなところに重きをおいて活動してたんで、だいぶ変わりました。

—東北大学かるた会さまさまですね。そこがなかったら今の川瀬さんがいなかったかもしれませんね。

はい、いないと思います。仲間に感謝です。

第4回ちはやふる小倉山杯

❹小倉山杯、どんな戦いをしたい?

全力で挑む

—当日、たくさんの観戦者にお越しいただきますが、みなさんに見てほしい姿はありますか?

僕は全力を出すだけなので、しっかり勝っているところを見てください。
名人戦の時よりレベルを上げられているといいなあと思っています。

❺誰と対戦したい?

〇〇さんに勝って優勝したい!

—小倉山杯にはトップレベルの選手が集結しますが、対戦したい方はいますか?

小倉山杯最強の恵令さんです。恵令さんに勝って優勝したいです。選手権では勝てましたが、小倉山杯でも勝ちたいです。

あとは粂原さんと対戦したいです。きっとギリギリの戦いになるのでしんどいんですけど、やっぱり高いレベルでの駆け引きは楽しいんですよね(笑)

他には井上さんとも対戦したいですね。あの山添さんを倒すんだ〜って思って。井上さんとも選手権で取ってるんです。その時は勝ってるんですけど、クイーンになったということはだいぶ強くなってるだろうから…という意味で気になりますよね。

—どの組み合わせも見てみたいです。ありがとうございました!


おわりに

いかがでしたか?

自分に厳しくありながら、競技かるた界のために奔走する川瀬名人。自分自身のかるたの話をしていたつもりが、気がつけば「かるた界をどうしていくか」の話になってしまう場面もしばしば(笑)業界の未来を真剣に考えている姿が、まさにかるた界のヒーローのようでした。

次回も選手インタビューをお届けします。
記事の更新は基金のSNS(XInstagramFacebook)でお知らせします。
お楽しみに。


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