夕暮れのガラガラ電車

会社員がたくさん降りる駅まで

人だらけの電車が重すぎて

少しもスピードが上がらない

何も考えずに人々は乗り降りをくりかえし

気がつけば満員電車はガラガラ電車になっている


濃紺のダッフルコートを着た少年は

学生らしくない瞳をして

夕暮れのホームで何かに待ちわびている

今日も夕焼けを眺めずに迎えていた夜空に

ビル風は擦りぬけていく  何も見えずに


わたしはひとり 置き忘れられた荷物のようで

振り向けば背中を並べて青い電車が走っている

疲れ果てぶっちょうづらしたOLを

みるみるうちに追い抜くが

負けじとばかりスピードはぐんぐん上がり

おもしろがってながめてばかりいる


逆流していく錯覚に  アインシュタインの相対性理論

ひとあし早くホームにたどりついた電車から

遅れてすべりこむ電車を待っている

夜風は今日も冷たいけれど

今日も一日  平和であったと

ほっとするのもこんな時


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?