見出し画像

【アークナイツ考察】 帰還!密林の長 で得られるインテリアのパネル「空想」の由来と ケオベの茸狩迷界 の音楽世界

こちらは私がPrivetter(ちはる(ニョロモん)名義)にて2021.3.13に掲載した同タイトルの文章をnoteへ移動させたものになります。

アークナイツの日本で通常プレイできる現在(2021.3.13)までのネタバレを含みます。
また、曲の個人的な解釈や、一部で別作品のゲームとその音楽についても触れていますので苦手な方は閲覧をお避けください。



 「美しい夢のように。」


 * * *


帰還!密林の長のRI-EX-8の強襲作戦クリアで勇士の試練より得られるインテリアのパネル「空想」。

パネル Op.49 2

パネルに書かれている文字をよく見ると、パネルの中央部にある黒の「Op.」と白で逆さまの「49」を組み合わせた「Op.49」、そしてパネルの左右のアルファベットの言葉を右から左につなげると一番上が「Tempo di marcia」と読めます。

パネルの「空想」というタイトルと音楽に関する説明の記述を合わせると、これらはショパンのピアノ独奏曲である、幻想曲ヘ短調 Op.49(作品(番号)49)のことを示しているようです。

幻想曲 (ショパン) 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


この曲は12分程度と長い曲ですが、Wikipediaに書かれているとおり大きく3つの部分に分けられ、先ほども述べた「Tempo di marcia」は序盤、それに続いて中盤の「poco a poco doppio movimento」、終盤の「Lento sostenuto」という構成になっています。

パネル「空想」には、わたしがアークナイツを小さなスマートフォンでプレイしているからか、2段目と3段目ははっきりと読み取れない(画像参照)のですが、文の長さから2段目は中盤の「poco a poco doppio movimento」、3段目は終盤の「Lento sostenuto」と書かれているのではないかと思っています。

パネル Op.49

そして、はっきりと読み取れる4段目の「Allegro assai」については、終盤11:56からの分散和音が始まる小節に、「Allegro assai」を示す表記(出版物により書き方は異なるが同じ意味)があるので、それを示していると思われます。
(Wikipediaの外部リンクより楽譜が閲覧可能です)


曲を聴き、今回の2つのイベントと合わせて考えたとき、ケオベがきのこなどを食べて幻覚を見ている期間を曲で表現したととらえるようにしたもののように感じました。

つまり、帰還!密林の長のストーリーではケオベがはぐれている間、作中では具体的には書かれていない物語の劇伴を想定した、もしくはケオベの茸狩迷界が曲から創造された物語にも読めます。

これは、ドイツ語の「fantasie」は英語の「fantasy」に相当し、日本語で空想、幻想のほかにも夢想、そして幻覚などがあるのも要因の一つです。


ここでは曲の定説(?)とは異なり、またクラシックにそれほど詳しくないわたし個人の解釈にはなりますが、 ショパン 幻想曲ヘ短調 Op.49 の音楽からケオベの冒険を想像してみたいと思います。
(曲の秒数はWikipediaの上のページから聴くことのできる音声ファイルに対応しています)


曲の出だしは暗い印象でゆっくりですが、明るい部分と交互になっており、ラジオ体操第一とおなじリズムでもあるため、ふわふわと脱力した様子で奇妙さがありながらも、どこか楽しげに歩いているようです。
ケオベが幻覚を見ながら歩き回っているのを、ドクター一行=プレイヤーが見ている感じととらえていいのではないでしょうか。

曲が始まってから3分ほど経つと曲の印象が変わり、ここからはケオベの心境や彼女の幻覚の中での主観的な様子を表すかのようです。

3:00から徐々に速くなっていき、さまざまな幻覚が入れ替わり立ち替わりあらわれたかと思うと、3:40あたりには高いところから転がり落ちるような半音ずつ高速で下がっていくメロディーがあります。
この部分は実際に転がっていくと考えることもできますし、ゲーム曲的なとらえ方でいくとヴァルキリープロファイルの通常戦闘曲「未確認神闘シンドローム」や、すこしアレンジが加わると初代ポケモンの「ライバルあらわる」の出だしと同じで、出会いたくないものに遭遇してしまった場面を示しているようにも思えます。
統合作戦であるケオベの茸狩迷界のプレイヤーの立場からは、通常作戦などの敵と戦う部分を表していることになるでしょう。

その後も楽しげな部分と窮地に陥っているような部分が繰り返され、5:15あたりは喜び勇んで進んでいくような感じで、短いながら凱旋曲のようにも聞こえます。

7:20ごろからののんびりとしたメロディーは、ケオベがはちみつクッキーをたくさん食べて満腹感に浸っているといった感じでしょうか。

終盤、11分ごろからゆっくりしたまどろむようなメロディー、そしてきらびやかなピアノのあと突然「ジャン…、ジャーン!」と終わるのは、夢から半ばむりやり覚めたようにも聞こえるかもしれません。
それでも満足しているような、ケオベの純粋な明るさも感じられる気がします。

茸狩迷界の通常クリアの文章からも、この曲の余韻に近いものを感じました。

茸狩迷宮 一般クリア画面

ケオベの物語としての曲の解釈はここまでになりますが、話は変わってこの曲、中ボスやラスボスのジャズっぽさが全開の曲(厳密にはフュージョン?)とも似た進行が、おおまかにではありますがみられるようにも感じます。

すこし専門的になりますが例を挙げると、幻想曲と出だしの部分はテンポに違いはあるものの、主旋律のサックスの各分散和音のはじめの音は下がっていくこと。

また、4:37~4:48に行きつ戻りつもありながら足早に半音ずつ上に上がっていく部分は、ボス戦曲のループ直前となる部分でゆっくり16小節をかけて半音ずつ上がっていくところと似ているようにも感じます。

クラシックとジャズというジャンルの違いはありますが、全体として一定方向に上がったり下がったりすることが多い部分に共通点が見いだされるのではないかと思います。


上記のボス戦曲はテクニカルな要素を感じる曲ですが、幻想曲ヘ短調 Op.49も演奏が非常に難しいと言われているようです。
(実際にWikipediaに載せられている演奏もミスタッチが目立つ場所があるので相当の難易度なのだと思います)


なお、別作品のローグライクゲームである各不思議のダンジョンシリーズのモンスターハウスに入った時の曲は、ドラムの印象や曲のテンポ、一部の旋律(半音下り)など近い要素がみられます。
(風来のシレン1~2の通常モンスターハウス曲の「お化け屋敷」、ポケモン不思議のダンジョンシリーズ「モンスターハウスだ!」など)
それぞれのゲームでは、出現はランダムですがモンスターハウス自体がダンジョン攻略の難所となっています。
このため、今回のボス戦曲はダンジョン型のローグライクゲーム音楽の流れを汲んだものともいえるかもしれません。

なお、これらの曲は演奏の難しさがゲーム攻略の難しさをも表現していると思われ、特にアークナイツのボス戦曲は、ステージ攻略中にとっさの判断が多く求められることを、時には(サックスの音色に代表されるような)アドリブ(即興)も交えて演奏する(=play)かのようにプレイしてほしいという思いをあらわしているのだと感じました。


 * * *


今回、音楽について考えていく中で気になったのが音楽とアーツとの関係性でした。

作中ではラヴァのセリフやイベントなどで、楽器の演奏がアーツの操作と関連があるようなことを示されていますが、この曲ももしかするとなにか関係があるのでしょうか?

今後のストーリーに期待したいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?