珍品と出会った話
(ちょっと余裕がないので、パパっと書ける「本の話」)
いつもの神保町。
昨日金曜は「趣味の古書展」初日なので、いつものように9時半には列に加わった。
前を見やるといつものメンバーが既にいて、「おはようございます」と挨拶を交わしてゆく。
好き先輩に恵まれたものだが、10時に開場すると一転して強敵と化す。
いい本はみんな欲しいから、誰も容赦はしてくれない。
実はその弱肉強食たる戦が、案外楽しかったりするのである。
「先輩」といったって、年の頃は僕の親と同じか、それ以上の方が多い。
古書展通いを数十年続けている人だって珍しくない世界。
いわば歴戦の勇士を相手にしているわけだ。
僕なんて通い始めて3年経っていないから、まだまだ収集家を名乗るのもおこがましく思えてくるけれども、若手としては、僕は目利きと手早さとに優れている方だという自負がある。
そんなこんなで、今回もいい本を掴み取ることができた。
漱石『道草』、永井荷風『濹東綺譚』、堀辰雄『風立ちぬ』、萩原朔太郎『定本 青猫』、『菊池寛集』署名入り(ヘッダー画像はこれの表紙)……。
どれも重版ではなく、レッキとした初版本である。
さすがに名著だけあってどれも一般的な古書価は中々のものだが、ここではバカ安で買うことができる(というか、相場からして安くなければ僕は買わない)。
カゴいっぱいに本を詰め込んで、棚に戻す分を選別中に先輩方と見せ合いっこをし、時に「これいります?」なんて交換したりして、この交流もたまらなく楽しい。
でまあ、人が多くて大混乱の会場にあって、1点だけ珍品を拾うことができた。
出品していたご主人から「それ、絶対面白いと思うよ」とお墨付きを頂いた一品である。
値札には「与謝野寛写真他」とあり、中を開くと与謝野寛(与謝野鉄幹)や与謝野晶子の家族写真、関連するお寺、原稿などの写真がキャプション付きで貼りこまれている。
どういう経緯で誰によって作られたものかわからないし、そもそも鉄幹とか晶子について特別詳しいわけでもないのだが、貴重な資料であることは間違いなさそうだ。
ほんとうは研究者が持っているべきところかもしれないけれども、まあこういう出会いはコレっきりだし、運命と思って大事にすべきだろう。
ゆっくり調査していきたいと思っている。
いやしかし、安くて大量に買ったとはいえ、1日で3万は買い過ぎた。
当分は貧窮問答歌である。
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