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作文「ウンナナクールと僕」

「ウンナナクールの仕事をするのが夢でした」
2016年、下着ブランド、
ウンナナクールの新クリエイティブディレクターのプレゼンに参加した際、
プレゼンで初めに言った言葉だ。
https://www.une-nana-cool.com

4年が経ち、「ウンナナクールと僕」は
毎年年間広告制作を重ねるごとに、より僕らしく
よりウンナナクールと連携が見えてきているように思う。

2015年まで、ウンナナクールというブランドは
ワコールというよりは、ドラフトのものだったと思う。
ドラフトは、D-BROSや、KIRINの広告などデザイン業界において名を知らぬ人はいない。
宮田識さん率いる有名なデザイン会社だ。
ウンナナクールを知ったのも、15年間担当したドラフトのつくるデザインが美しく、
他の下着ブランドとは全く違う独自のブランディングで憧れのブランドだった。

ウンナナクール=ドラフト。

この関係地は崩れないものだったし、誰も踏み入れることのできない聖域だったと思う。
それがまさか競合とはいえプレゼンテーションの話がやってきたのだ。
まだ れもんらいふを立ち上げて3年の弱小アートディレクターとしては恐れ多く、
太刀打ちできる相手ではなかった。
が、
その頃世の中は「広告」という価値が変わりつつある頃だった。
SNSが登場し、Twitterでコピーライターではない人の言葉がバズったり、Instagramもクリエイターはうまく活用出来ていない。
YouTuberが憧れの職業という世の中に変化していた。

ウンナナクールが今、本当に変わりたいという思いがあるのなら勝算はあると思った。
ドラフトのつくる世界とはまったく違うものをつくる。
それが軸だ。

ウンナナクール=ウンナナクール。

プレゼンシートのコンセプトはこれだ。
ブランドや広告が主役ではない。
ウンナナクールの社員、店員、ファン、それぞれ個人が主役の時代になったのだ。

「女の子の人生を応援する」

ドラフトが作ったウンナナクールのテーマに立ち返った。
個人が主役の今、より、この言葉を輝かせることができるかもしれない。
僕は、コピーライターでもインフルエンサーでもない、
作家・川上未映子にコンセプト作りを相談した。

「女の子、登場。」
女の子の気持ちとからだをめぐる問題は、複雑です
「女の子らしくしなさい」「可愛らしくありなさい」そう言われつづけて
出会う物語は、たとえばシンデレラ、白雪姫、マッチ売りの少女、人魚姫
王子様に迎えてもらって幸せになるか、最後は不幸になるお話ばかり 女の子に与えられた理想は、長いあいだ、最高の男性に出会い
誰かに幸せにしてもらうことでした
そのために美しさを磨き、難しいことは考えない
それこそが、女の子のしあわせなのだと それをしあわせと思う女の子も、もちろんいます
でも、いろんな女の子がいるはずです 大切なのは、女の子が生きるための選択肢が
ひとつでも多く増えること 誰かに好かれるために可愛くなりたいのではなく
自分がなりたいから、なる
しあわせの価値は、自分で決める
女の子である自分のからだと生きかたを、自分で、肯定する ただひとつの、かけがえのない自分のからだに
今日、はじめての下着をつけるとき
それはひとりきりで自分にむきあう、ささやかな儀式
しっかり胸を、はれるように
あなたの気持ちは、あなたのもの
あなたのからだは、あなたのもの 努力も憧れも、
自分自身のためでありますように
川上未映子

このマニュフェストは、
プレゼン段階から完成されたものである。
川上さんと打ち合わせする中で、
SNSの共感という時代は、いよいよ女の子の時代。
社会で「女子力」という言葉は、実は男のための言葉で、
お茶をサッと出せるとか、一歩後ろを歩くとか、、、
そうではなく、女の子が女の子のアイデンティティを振りかざしていい。
「新女子力」を応援できるブランドにしようという話し合いをした。
それこそブランドが持つ「女の子の人生を応援する」ということなのだと。

この考えは今も変わっていない。
プレゼンにを勝ち取り、ウンナナクールの
クリエイティブディレクターに就任した僕は、
このマニュフェストをベースに
スペシャルチームを作り、ブランドの考えをより強固に刷り込む
ブランディングを進めている。

年に1度の店長会で全国から店長が集まる日には
川上未映子さんとトークショーを社内向けにすることで
ブランドの社員みんながコンセプトをしっかりお客様に届けれるよう
取り組んでいたり、
商品のテーマづくりも、僕と商品のデザイナーで
アイデアを出し合ってやっている。
インスタグラム、コラボ、イベント、HPなど
全てにおいて社員の力で、話し合いながら進めている。

広告も
ペティートメラーから始まり
乃木坂46を卒業したばかりの伊藤万理華さんを起用した2年目、
「私いい度胸してる」
のんさんを起用した3年目、
「わたしは、わたしの夢をみる」
岸井ゆきのさんとモトーラ世里奈さんを起用した4年目は
小説の一片を切り取ったような、物語を
「わたしだけの素敵」という言葉で表現した。
川上未映子さんの言葉だけでなく、
瀧本幹也さんの写真も素晴らしい。

いい意味で
どんどん「私物化」できているように思う。
新商品の広告アイデアに、知り合ったクリエイターや
関わってみたいクリエイターをうまく起用できているし
広告宣伝費をうまく使い、
レコードデビューするというプロモーションまで(笑)
https://kiss.tokyo/records/

それもこれも、全て
「女の子の人生を応援する」という言葉があるからこそ
ブランドサイド、クリエーターサイドが「自分事」にしてしまっても
ウンナナクールのブランディングになる。
僕が「映画を作りたい」「あの人とコラボしたい」「こんなイベントをしたい」
それが全てブランィングにつながるという事だ。
これは、ブランドとクリエイターとの間に
もう違う方向を見ることはないという「信頼」があるからだ。
こんな最強のアートディレクションはない。

「映画製作をデザインする」
として、先日僕は映画監督宣言をした。
https://lemonlife.jp/movie/
これから公開へ向けて製作される映画のコンセプトは
「女の子の人生を応援する」だ。

そう、
ウンナナクールのコンセプトそのものなのだ。
今後、映画とウンナナクールがどう関わるのかに期待してもらいたい。
今までにない。関係値を持つ作品になると思う。

僕は、最初に
「女の子の人生を応援する」という言葉は
ドラフトが作ったもの、だと言った。
それは間違いない。しかし、
この言葉は、ウンナナクールを通じて
僕の映画のテーマになり、自分のものにしているのだ。

「これいいですか?」と
ウンナナクールの社長に尋ねると
「どんどん千原さんやみんなの言葉にしてください。楽しみです」と言っていただいた。
そして僕は映画を通して「女の子」それぞれ個人の言葉にしてほしいと思いっている。
そう、ドラフトが作ったこの言葉は、長い年月を経て「女の子」の言葉になろうとしているのだ。
それこそが
ウンナナクール=ウンナナクール。へ
向かっていることなのかもしれない。

ラッキーにもウンナナクールはその事に
何年かけてもいいと僕に言ってくれている。
来年、映画で一つの答えを出すことになるが、
ずっとずっとウンナナクールと僕の関係は続くのである。

最後に、
僕が2016年、ウンナナクールにプレゼンした時の
シートの「初めに」の言葉で締めくくりたいと思う。
この言葉はウンナナクール社員全員が知っている。
この言葉を読むと、
アートディレクターとしての新鮮な気持ちにいつでも立ち帰れるのだ。
ウンナナクールのみんな、ありがとう。
これからもよろしくね。

ウンナナクールのグラフィックは
僕のあこがれでした。
僕の目指すデザインの理想。
ただ理想は理想。僕自身できることを積み重ねたデザインは"れもんらいふ"という屋号が方向をつくり、
現実のデザインを作り上げて行きました。
僕はグラフィックの美しさだけで戦うデザイナーではありません。
"デザインが人をつくり、人がデザインをつくる。"
デザインで作られた人と人のつながりを生かしながら、多くの人の力を借りてアートディレクションして行く。
そこが"れもんらいふ"のデザインです。
今回、ウンナナクールの目指したい方向は、
ウンナナクールであるウンナナクールだと思います。
新しいウンナナクールのアイデンティティを作り上げ、ウンナナクールの場所をつくることだと思います。
ウンナナクール=ドラフト。から
ウンナナクール=ウンナナクール=たくさんのクリエイター=女の子たち。へ
僕が培ってきたデザイン力、すべてをここに、、、
このために今までの出会いがあった。そう思う。
新しいウンナナクールをつくりましょう。みんなで。
そんなプレゼンテーションをお届けします。
アートディレクター 千原徹也

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