マガジンのカバー画像

【文学】 手のひらサイズの短編小説と、現代短歌集と。

22
掌説(しょうせつ)。ショートショートよりも短い世界最小の小説統一フォーマットを作りました。基本、400字ちょっとで完結。スマホ1〜2画面ぶんの長さ。ヘミングウェイが作った?と言わ…
運営しているクリエイター

#コメディ

【1分で読める小説】 その3 ヨコヅナイワシ

駿河湾で採取された新種の深海魚は、セキトリイワシの中でも特に巨大であったことから「ヨコヅナイワシ」と命名された。全長1.4メートル。まさに横綱クラスの圧倒的な迫力であるが、残念なことにすでに生きた状態ではなかった。 数年後、ビッグニュースが飛び込んできた。駿河湾の南東で、今度は生きた巨大深海魚が確保されたのだ。しかもヨコヅナイワシをしのぐ大きさで。日本魚類アカデミーはすぐさま分析を開始。世界的にも珍しい新種であることが確認された。 命名は難航を極めた。駿河湾の生態系ではヨ

【1分で読める小説】 その2 超大作

(解説)この映画は突然の光で幕を開ける。医師、看護師、そして両親。笑顔が主人公の彼を取り囲む。この上もなくハッピーなオープニングだ。観客の心は一瞬で鷲掴みにされ、その興奮はラストまで途切れることがない。 中盤の山場はセックスシーンだ。初体験を前にした彼の期待、緊張、不安。この複雑な感情をここまでリアルに描き出した名作を私は知らない。なんという高揚感。そして脱力感。「全米が泣いた感動の超大作」という評判も十分うなずける。 ラストも涙なしには見られない。オープニングと同じ病院