Smile Again MVの世界
6/25追記
Smile AgainのMV再生回数がもう少しで1000万回という所まで来ました。w-inds.の橘慶太さんが託してくれた、この美しい曲をもっと世界へ広めたい。そのために、MVの再生回数を伸ばしたい。
でも、このMVのドラマ部分はメンバーが2人しか登場せず、謎に満ちていて消化不良だという声が聞こえてきたのが、この物語をnoteに投稿した理由の1つです。
二次創作は隠れてしろという批判が起きる事も覚悟の上で投稿しました。
フラットな気持ちで曲を聞きながら読んで頂ければ、美しい情景が広がると信じています。
追記終わり
BE-1ツアー代々木公演の時のMessageのパフォーマンスがYoutubeで公開されました。この時、SOTAの衣装にレインボーフラッグが使われていて、やっぱり、Messageのテーマはジェンダーレスだったんだなと思われた方も多いと思います。MV公開日もカミングアウトデーでしたね。
そこから繋がるSmile AgainのMVも、その意味合いが隠されているだろうと考え、ジェンダーレスと人間愛がテーマの台本を書きました。
あくまで、メンバー本人がどうこうではなく、MVで演じられていたドラマのシナリオの考察です。
メンバー本人とは違うという意味で登場人物には別の名前をつけています。
二次小説ではありません!
ご理解頂ける方のみ読み進めてください。
フィクションですので、登場する職業等の詳細な設定は想像のものであり、事実とは異なります。
あくまで、物語の中の世界線です。
*****************
太陽の笑顔を取り戻せ!
やっぱり間に合わなかったな…
ここは羽田空港国際線の出発ロビー
もう、とうに搭乗時間を過ぎていた。いくら探しても玲音の姿は無く、電話にも出ない。
もっと早く素直になれば良かったと思うが、後悔と絶望で心が麻痺して何も感じなくなっていた。涙も出てこない。外は雲一つ無い快晴で太陽が燦燦と輝いているのだが、純にとっての太陽は玲音であり、太陽を失った今、目の前に広がる光景は灰色で何の色も無かった。
呆然とベンチで途方にくれていると、突然誰かに手首を掴まれた。
(玲音?!)
顔を上げると、立っていたのは駿だった。
「来て」
駿は純を引っ張り上げると、有無を言わさず手を引いて行った。
いつもなら文句を言う所だが、考える気力すらなかった。
展望デッキまで連れてくると、「ちょっと待ってて」とだけ言い残し、駿は立ち去ってしまった。
(何なんだ、一体…)
その時、轟音がして、見上げるとジェット機が飛び立っていくところだった。
(行っちゃったな…)
実感が湧かないまま、呆然と空を見上げてると誰かに呼ばれた。
「J?」
聞き覚えのある声に驚いて振り返る。
「玲音?」
そこには不思議そうな顔をした玲音が立っていた。
純は目の前の光景が信じられず、嬉しさと驚きと戸惑いで頭が混乱してショートしそうだった。
「な、何で?もう、飛行機に乗ってるはずじゃ?」
「それが、何か緊急事態が起きたとかで降ろされちゃってさ。Jこそ、見送りに来ないって言ってたのに、何で?」
目の前に想い続けていた人がいるのに、突然の事で言葉が出て来ない。心臓が急に早鐘のように打ち始めた。
「J?」玲音が首を傾げる。
純の中にブワッとある想いが湧き上がった。
「ち、がう…」「え?」
「Jって呼んで欲しくない…玲音には、名前で呼んで欲しいんだ」
涙が溢れそうになるのを堪えて顔を上げて玲音を見る。
目を丸くした玲音がゆっくりと純の方へ歩み出る。
玲音が手を伸ばし、純の頬に触れた。
「純?」
2人の間にサーっと風が吹き抜けた。
純は、玲音の手に自分の手を重ねた。
「一人で行かないで欲しい。玲音は俺の太陽だから」
瞼を閉じると涙がツーと流れ落ちる。ゆっくりと目を開けると、それまで灰色だった世界が色鮮やかに変わっていて、目の前には一番見たかった人の笑顔が太陽のように輝いていた。
「やっと純の気持ちが聞けた」
純の顔に笑顔が波のように広がった。
2人の想いが重なった瞬間だった。
******************
「ミッションコンプリート」
離れた場所から2人を見守っていた駿が翔に報告した。
横では合流した龍介がライブ映像を送っている。
純の顔に笑顔が戻ったのを確認した陸樹は、ほっと安堵の溜息をついた。
「了解!戻って合流しろ」翔が応えた。
「で?満足か?」翔が陸樹に憮然とした顔を向けた。
「ああ。Jの顔に笑顔が戻ったからな。お前たちへの依頼は達成された。サンキュー」
「俺が聞きたいのは、仕事の話じゃなくて、お前の気持ちだよ」
翔の鋭い目が何もかも見通すように光る。
(ホント、誤魔化せないヤツ)
「いいんだよ、ホントに。Jにとって、太陽は玲音かもしれないけど、俺にとってはJだから。Jの顔に笑顔が戻れば、それでいい」
Jの顔から笑顔が消えたのは、数週間前のことだった。
インターポール警察の刑事である陸樹とバディの真琴が一般人である純と玲音と知り合ったのは、とある立てこもり事件がきっかけだった。
国際手配をしていた犯人が純を人質に立てこもり事件を起こし、その場に居合わせたジャーナリストの玲音と協力して犯人を確保した縁からの付き合いだ。
玲音が犯人の身の上話を聞き出し、巧みな話術で心をつかみ、戦闘意欲を失ったところに突入して確保ができたのだが、人質という究極の状況でも怯むことなく、冷静な対応で状況判断をして適切に行動した純のおかげでもあった。
本来は、事件の関係者と個人的な付き合いはしないものだが、何故か、昔からの知り合いのような気持ちがして、3人はすぐに意気投合してしまい、普通に友達になってしまった。
純は、モデルをやっていて、背が高く、女性のような中性的な魅力があった。天然マイペースで物怖じすることがなく、サバサバしていて面白い。陸樹は、ほとんど一目惚れに近い勢いで純に惚れてしまった。
玲音は、駆け出しのジャーナリストで、カメラを趣味にしていた。人が良く、人の心を掴むのがうまい。ちょっと話をするだけで優しさと誠実さが伝わってきて、誰とでも仲良くなってしまうという特技を持っていた。
陸樹とバディの真琴は国際的な犯罪組織を追う事が多いため、各国に情報屋を雇っていたが、日本で懇意にしている情報屋はかなり若いチームだった。
表向きはカフェの店長をしている翔がチームリーダーで、まだ高校生くらいの若さの駿と龍介は見かけによらず、2人とも優秀なハッカーだ。
翔のカフェをたまり場にして付き合いを重ねている内に、いつの間にか、7人とも昔からの友達のようになっていた。
その日も翔のカフェで純と玲音がコーヒーを飲んでいた時だった。
玲音がおもむろに純に切り出した。
「実は、今度シンガポールに取材に行くことになったんだ」
「へー。海外へ写真を撮りに行きたいって言ってたよね。良かったじゃん。どれくらい行ってくるの?」
「シンガポールは、1か月くらいだけど、その後、フリーのカメラマンになって、世界を旅して回ろうと思ってる」
「そ、それって、いつまでか決まってないってこと?」
「うん。数ヶ月か数年か、何も決めてないから、当分帰ってこないかもな」
玲音の話では、日本から連絡があまりつかないような場所へも行くつもりらしかった。
純の頭の中が真っ白になっていく。玲音がいきさつや、やりたいことなどを熱く語ってくれているが、耳に入ってこない。
その時、電話が鳴った。陸樹からだった。「ごめん、ちょっと出てくる」
店の外に出て、電話に出る。
「あ、J?悪い。明日の映画だけど、急に打ち合わせが入っちゃって、遅れそうなんだけど大丈夫?…J?聞いてる?」
「聞いてない」
「は?」
「俺、どうしたらいいかわかんない…」
「どうした?大丈夫か?」
「大丈夫じゃ、ない…」
純は電話を切って、その場にへたりこんだ。
今まで、傍にいられればいいと思っていた。友達として、傍でその笑顔が見られれば、それだけで十分だと。
でも、次にいつ会えるか、連絡が取れるかすらもわからなくなるという事態は考えていなかった。どうしていいかわからなくて、胸が苦しくて、涙が出て来た。
しばらく、時間を置いて、少しだけ気持ちを落ち着かせてから席に戻った。しかし、明らかに浮かない顔で泣きはらした目も誤魔化しようが無い。
「J?大丈夫?何があったの?」玲音が驚いて心配そうに声をかける。
「ちょっと、親が倒れて…今日はもう、帰るよ」しょうもない嘘をついた。
「え?!じゃ、じゃあ、送るよ!」
一人で大丈夫だと意地をはってみたが、優しくされると、余計に泣きそうになる。
外に出ると、目の前に車が止まった。
「乗れよ。送るから」陸樹だった。
「早すぎない?」
「警察特権」
「悪徳刑事」
「で、何があった?」
純は、玲音が海外へ行ってしばらく帰ってこないつもりらしいという話をした。
本当は、玲音が自分の夢に向かって踏み出そうとしているのだから、応援しなきゃいけないとわかっている。でも、頭と心が追いつかない。
「素直になった方がいいんじゃない?」
「素直になって、何を言えって?そんなの、ただのお荷物になるだけだろ」
それ以来、純の顔から笑顔が消えてしまった。玲音は親が倒れたという嘘を信じていて、そのせいで、暗い様子なのだと勘違いをしているようだった。
純が笑わなくなってから、いつも元気いっぱいの玲音からも笑顔が消えてしまった。
もうすぐ玲音が旅立つという頃になって、陸樹が他の4人を集めた。
「今回は、俺からの個人的な依頼だ。純と玲音に笑顔を取り戻して欲しい。ただし、2人には気づかれないように。引き受けてくれるか?」
「当り前だろ。友達からの依頼は断れない」翔がニヤッと笑う。
「じゃあ、作戦会議だな。”太陽の笑顔を取り戻せ大作戦”ってとこか」
「そんな作戦名いるか?」
「まあまあ、気分だよ」
いつも飄々としている真琴は、この状況を楽しんでいるようだった。
こうして、”太陽の笑顔を取り戻せ大作戦”が始まったのだった。
*******************
純と玲音の笑顔を取り戻す
今回のミッションは、翔達が思っていた以上に厄介だった。
まず第一に、
「俺達は人の心はハッキングできない」
得意の武器が封印された状況なのだ。
2人の笑顔を取り戻すためには、大きなポイントが2つあった。
1つ目は、
純が自分の気持ちを玲音に伝えること
2つ目は、
玲音が純の気持ちを受け入れること
陸樹には、1つ目の問題さえクリアできれば、なんとかなるという、根拠の無い自信があった。
4人は、正直半信半疑だったが、陸樹の主張に従い、1つ目の問題をなんとかする事に賭ける事にした。
とは言え、これが結構難題だった。
純自身が自分の気持ちに自信を持っていない上、伝えた事で逆に2人の関係にヒビが入る事を強く恐れていた。何より、これから自分の夢に向かって踏み出そうとする玲音の足枷になりたくないという気持ちが大きかった。
さり気なく、翔や龍介が背中を押そうとしても、拒絶されてしまう。
「もう、俺らで玲音に伝えちゃった方がよくね?」
シビレを切らした駿が陸樹に提案したが、却下された。
普通の男女だって周りが無理やりくっつけたカップルは長続きしないものだ。
ジェンダーレスが浸透しつつある昨今でも、マイノリティには世間の目が厳しい。自分自身が納得して進まないと、後で後悔する事になりかねない。
一応、保険として、玲音の気持ちにも探りを入れる事になった。
カフェで翔が玲音に問いかける。
「もうすぐ出発だってのに、浮かない顔だな」
「ああ、何だかずっとJが元気なくて…親御さんの具合って、そんなに悪いのかな?」
(まだ信じてたのか。その誤解は解いておいた方がいいだろ)
「陸樹の話だと、それはもう大丈夫らしいぞ。心配無いってさ」
「え?じゃあ、何でずっと暗いんだろ?」
「そりゃ、大切な人にもう会えないかもしれないってなったら落ち込むだろ(言い過ぎかな?)」
「俺のせい?」
「あー、いや、たぶんだけど…」
玲音の瞳が揺れるのを翔は見逃さなかった。
だが、一方で、純の方は最悪な状況になっていた。
玲音の出発が明日に迫るというのに、空港へ見送りに行かないと言い出したのだ。
「何でそこまで意地を張るんだよ?!」
さすがに、陸樹が問い詰めた。
「うるさいな!泣きたくないんだよ!みっともない所見せたくない…」目の前にしたら、泣いてしがみついてしまいそうで怖い。笑って見送れる自信が無かった。
陸樹は、盛大に溜息をついた。
「わかったよ。好きにしろ。まあ、いざとなったら、玲音くらい、幾らでも探し出してやるから」
「え?」
「俺はお前のためなら幾らだって手を貸すって言ってんの!もし、自分の選択が間違いだって気付いたら、意地を張らずに助けを求めろよ」
「陸樹…」
その夜、純はほとんど眠れ無かった。玲音への気持ちを何度も自分へ問いかける。
本当にこのままでいいのか?伝えるべきじゃないか?
伝えた時に玲音はどう思うんだろう?軽蔑されたら?
友達のままでいればいいんじゃないか?
でも、もし、2度と会えなかったら?
抜け出せない迷宮に心が囚われてしまっていた。
暗い闇の中に沈んでいく感覚
いつの間にか、夢の中にいた。
雨の中、もう来ないと思っていたのに来てくれた
自分の気持ちに自信が持て無かった時、男とか女とか関係なく大切な人と言ってくれた
傍にいて支えたいと思った
名前を呼んでくれた
どんな不安も、その笑顔で吹き飛ばしてくれた
俺の唯一つの太陽
また巡り会えた
きっと何度だって探して見つけるんだ・・・
もう一度笑って欲しい
名前を呼んで欲しい
他には何もいらないから…
俺の太陽は玲音だけだ…
ハッとなって、急に意識が浮上した。
目が覚めた。
夢の内容は朧気にしか覚えていなかったが、はっきりわかった事があった。
玲音を失っちゃダメだ!
玲音は俺の太陽なんだから!
気が付くのが遅過ぎると陸樹に怒られそうだったが、大慌てで準備する。
(ヤバっ?!もうこんな時間!)
純はダッシュで駅に向かった。
「ミッションスタート」
純が家から出て来るのを確認した龍介が合図した。
*******************
「「了解」」龍介の合図に翔と駿が応えた。
純が決断するまで待て、と陸樹に厳命されていたため、空港に待機していた駿は待ちくたびれていた。
「ようやく出番か。ぎりぎりだっての」
空港の保安システムに潜入し、玲音のチケットに紐ついているパスポート情報をテロ容疑がかけられてる人物のものに一度書き換えた上、更に玲音の情報を上書きして偽造を装う。それから、容疑者がシンガポールに向かう予定らしいという情報を流す。
翔がその情報をチェックして、真琴に通報する。
真琴が航空会社へ人物照会を依頼した。
「パスポートが偽造されている可能性があります。該当者が現れたら別室へ誘導してパスポートを押さえてください。こちらで確認します。飛行機は予定通り出発して問題ありません」
搭乗口に現れた玲音は身に覚えの無い容疑で取り調べを受けるハメになり、可哀想だったが、致し方ない。
当初、純が来るか来ないかわからなかったので、爆破予告をして、飛行機が飛ぶのを止めたらどうかという真琴の提案もあったが、迷惑過ぎるので却下された。
「空港に着いた」
龍介の報告を受けて、駿が他の便の複数のチケット情報にも同様の偽造をしかけた。
翔がそれらの偽造を見つけ出して、確認し、真琴に報告する。
真琴が航空会社へ結果を連絡した。
「複数の出発便で同様のトラップを確認しましたが、全てシロでした。こちらの捜査を撹乱するのが目的だったようです。今足止めしている方の容疑も晴れました。ご迷惑をおかけした事をお詫びしてください。捜査で予約してあったシンガポール行きの明日のチケットがありますので、振替をしてあげてください。捜査協力に感謝します」
その頃、純は、玲音を探し回っていた。何度電話しても繋がらない様子で焦っている様子が見てとれる。青冷めた顔が今にも泣き出しそうだった。
(あー、もう、見てるこっちが辛い…早くしてくれよ!)
純が諦めて空港を出て行かないように見張ってる龍介は、純の辛そうな様子に貰い泣きしそうだった。
「ねえ、まだ?もう、俺見てらんないんだけど!」
「よし、仕込みは完了した。龍介は玲音を確保しに行ってくれ。Jは俺が見とく」
「やっとか、OK」
玲音が解放されたという連絡を聞いて、駿が純を迎えに行く。純はすっかり意気消沈した様子で呆然とベンチに腰掛けていた。駿は思わずニヤけてしまいそうになるのを堪えながら、純の手首を掴んだ。
ギョっとした顔の純を無理やり引っ張って展望デッキに連れて行く。
そして、別れ際、土産をポケットにねじ込んだ。
一方、玲音は、航空会社の人に謝られながら、一体何が起きたのか不思議で仕方無かった。
そこへ、龍介が現れた。
「玲音!よかった!間に合った!何で電話に出ないんだよ?Jが探してるから、こっち来て!」
「Jが?何で?」
「いいから、早く!」
玲音は、純の事がずっと気がかりだった。最初は純を心配してるだけだと自分に言い聞かせていたが、やはり違う。せっかく、やりたい事ができるチャンスが目の前なのに、何かが引っかかって、悶々とする日々だった。
翔に、純の元気が無いのは大切な人がいなくなるからだと言われた時は、ドキっとした。
本当の純の気持ちが知りたかった。
言い出せないまま出発が迫り、純に見送りには行かないと言われた時、胸がズキっとした。何の保証も宛も無いのに、一緒に来て欲しいと言いそうになる。自分の気持ちを封印するために電話の電源を切っていた。それなのに、純が来ているという。こんな偶然って、あるのか?狐につままれているような気持ちだった。
展望デッキに行くと空を見上げる純がいた。青空に映えるその綺麗な横顔にドキっとした。思わず、カメラを向けてシャッターを切りたくなった。
「J?」
純は心底ビックリしたような顔で振り返った。
「玲音?何で?もう飛行機に乗ってる時間だろ?」
玲音自身、何でここにいるのか、夢でも見ている気分だった。
「何か、緊急事態とかで降ろされちゃって。Jこそ、何でここに?見送りに来ないって言ってたろ?」
純の気持ちが知りたかったが、純は、呆然としている様子だった。
「J?」
その時、純がハッとなった。
「ち、がう…」「え?」
「Jって呼んで欲しくない…玲音には、名前で呼んで欲しいんだ」
純が自分の気持ちを吐露するように言葉を振り絞った。
玲音は手を伸ばして、純の頬に触れた。
「純?」
純の頬に触れると、風が吹いた。
風と共に、純の気持ちが流れこんでくるような錯覚を覚えた。
純の手が重なった時、玲音と純の気持ちも重なった。
「一人で行かないで欲しい。玲音は俺の太陽だから」
玲音の心からモヤが消え、自然と笑顔になった。目を開いた純の顔にも笑顔が広がった。
「やっと純の気持ちが聞けた」
ずっとわかっていたのに、気付かないフリをしていた自分の気持ちがはっきりわかった瞬間だった。
*******************
玲音は、航空会社から今日乗り損ねた分の振替として、明日の便のチケットを貰ったので、明日シンガポールへ発つつもりだと純に話した。
「俺は、色々な国で、そこに住む人達の日常の小さな幸せをカメラに収めたいと思ってるんだ。世界平和とか、大きな事を言うつもりは無いけど、どこの国に住むどんな人種の人にも、大切な日常があると思うから、それを切り取って残したいと思ってる。そして、それを見た人が自分の幸せに気が付いてくれる事を願ってる。今の会社の人達や色々お世話になってる先輩方が協力してくれて、今回、ようやく夢に向かって踏み出せる事になったんだけど、所詮フリーのカメラマンだから何の生活の保証も無い。だから、今まで言い出せ無かったけど、実は、もう一つ、ずっと撮りたいと思ってたものがあるんだ」
「何?」
「純の日常風景」
「俺!?」
「うん。純はモデルだから撮られ慣れてると思うけど、そういうちゃんとポーズをキメてる写真じゃなくて、普段の日常や風景に溶け込む純が綺麗だなって思ってて、ずっと撮りたかったんだ。さっきも、空を眺める横顔がすごく綺麗だったから、シャッターを切りたくなったよ」
「・・・お前、時々、急に恥ずかしい事をさらっと言うよな…」
「と、とにかく、一緒に来て欲しいとはお願いできる立場じゃないけど、できれば俺のライフワークになって欲しいんだ」
「行くよ」
「え?」
「俺の幸せは、すぐ隣にあるってわかったから。チケット取れたら、すぐにでも追いかける。玲音が写真を撮ってくれるなら、向こうでもモデルの仕事を続けられるかもしれないし、何とかなるだろ」
その時、純の電話が鳴った。慌ててポケットからスマホを取り出した時に何か紙切れが落ちた。電話は陸樹からだった。
「俺からの餞別だから、素直に受け取れよ」
ポケットから落ちた紙切れは、明日のシンガポール行きのチケットだった。
「な?!何やったんだよ!」
「捜査機密は教えられない」
「何が捜査機密だ!悪徳刑事!・・・でも、ありがとう…助かった」
「どういうこと?」
「よくわかんないけど、シンガポールへ行ける事になった。直近の仕事は入れてないし、今後の予定次第で一度は日本に帰らなきゃいけないと思うけど、一緒に行くよ!」
その時、今度は玲音の電話が鳴った。航空会社からだった。
「この度は大変ご迷惑をおかけいたしました。本日の宿泊場所が手配できましたので、ご連絡です。○○ホテルです。ホテル側の都合で2名様でご予約をしておりますが、1名様でお泊り頂いても問題ございません。支払いは済ませてありますので。それでは、良いご旅行を」
玲音は、また狐につままれたような気分になった。
「何かよくわかんないけど、ホテルが2名分で予約してあるらしいから、純も泊まりに来る?」
「は?」
「一体、今日は何がどうなってるのか…。でも、純も一度家に戻って準備するんだろ?まだ午前中だし、夕方頃落ち合えればいいんじゃないかな?」
「あ、うん」
「俺も予定が一日ずれたから、会社と現地に連絡取らなきゃいけないし、また後でね」
「う、うん」
純は、玲音と別れてから、急に現実に引き戻された。
(え、俺、よく考えたら何か駆け落ちみたいな事になってないか?しかも、何でホテルに2人で泊まる事に?まだ何の心の準備もできてないのに!ま、まさか、これも陸樹が??何がどうなってるんだよー!!)
一方、作戦会議室では、陸樹が真琴に抗議していた。
「何でホテルを2名で予約してんだよ!?」
「え?だって、シンガポールへ行く前に、今後の事とか2人でよく話合った方がいいだろ?」
「そ、それはそうかもしんないけど…」
「陸樹は2人の仲を取り持ちたかったんじゃないのか?」
「いや、そこまでは…」
「何だ、それ?変なやつww」
「俺はただ、Jがまた笑ってくれればよかっただけで…」
「でも、シンガポールへ行った後、玲音はあちこちの国を予定を決めずに回るつもりなんだろう?Jが笑顔でいられるか、わかんなくなるんじゃないか?」翔が口を挟む。
「あー、それについては、別に、いざとなったら、幾らでも口実つけて会いに行けるし。探し出すのが得意なチームもいるしな」
「公私混同にも程があるだろ!」
「公でも私でも付き合いがあんだからいいだろ!」
「やれやれ、Jにストーカーで訴えられないでくれよ」真琴が溜息をつく。
「なぁ、さっきJに取り付けた盗聴器、無効にしていい?可哀想になってきた…」駿が声を上げた。
「いや、ホテルに行くっていうなら、心配だ…」
「それこそ犯罪になるから、やめとけ」
真琴が呆れ返ってる。
「Jも面倒なやつに惚れられたもんだ…」
翔、駿、龍介は、純に同情して溜息をついた。
その頃、玲音と純は同時にくしゃみをした。
空には綺麗な飛行機雲が流れていた。
END
*******************
ここまでお読み頂き、ありがとうございました!
あのわずかなMVのシーンで何でこんな展開にと思われた方も多いと思いますが、Messageから繋がるMVだったからこそでした。
最後に、繰り返しになりますが、実際のメンバー同士の関係性等とは一切関係がありません。
二次小説でもありません。MVの世界観をドラマ化しただけですので、ご理解をお願いいたします。
引用元:https://youtu.be/ZZG7PAPCX4E
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?