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100日後に引退するBL小説家 15日目、16日目

4/6(月) 15日目

 zoomでの談笑を3本するなど、大変有意義なおこもり生活だった。

 そして久しぶりに昼からワイン。久々の酒は気分がいい。

 小説家仲間と創作談義をしたり、BLやヒプマイの布教をしたり、遠隔バーの実験に参加したりとめちゃくちゃ楽しい。

 交通費もかからないし、やはりネット上でのコミュニケーションがもっと進んでくれればいいのになあと思う。交通費もかからないし。交通費も……かからないし……!

4/7(火) 16日目

 緊急事態宣言が出されるらしい。土地と物品の供出以外に法的な行使力はない。それでも世間はヒリつくし買い占めは進み、散歩をすれば白眼視されるのだろう。

 日常である。

 危険危険と連呼をし過ぎて、みんなの耳が疲れ始めた。脳は情報処理の量を落とし、緊急事態に過剰に適応しようとする。新しい秩序、新しい社会の始まり。社会は社会でしかなく、希死念慮の波がすぐそばまで迫っている。


 ほんの少し前まで、私の心は再び壊れそうだった。しかし今は生き生きとしている。びっくりするくらいに。そして、世界のどこかで、日本のどこかで、前の私とおなじくらいに心が壊れそうな人がいる。

 医療従事者。最期に会えないまま家族を亡くした人。品薄でクレーマーに怒鳴られ辟易する、ドラッグストアの店員。

 世界のバランスは、たった一種類のウイルスでこんなにも変わるものか。興味深い。実に、興味深い。


 本音を言うと、今、ものすごく楽しい。不謹慎だが言いたくてしょうがない、楽しい、充実している。家にいても家族からイヤな目で見られないし、友人たちがどんどんzoomに参入して気軽に話せるようになったし、いいことづくめなんだもの。

 楽しい、楽しい、とっても楽しい!

 ずっとこの状態が続けばいいのに!!!

 この楽しさは災禍の裏で起こっていることは忘れてはいけない。でも、私が苦しんでいる間に楽しんでいた奴らが、私に手を差し伸べることはなかった。

 ざまあみやがれってんだ。


 世界が美しく見える理由が、今、わかった。

 私が醜くなっているだけ。

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