100日後に引退するBL小説家 12日目
4/3(金) 12日目
私以外の家族(父、母、弟)は全員出勤している。全員埼玉県内なので首都封鎖の影響はないだろうが、本音を言うと外出制限はあったほうがいい。
経済活動を止めると死ぬ人間が大勢いるのはわかっているけれど、ニートの自分としてはイマイチ実感がわかない。困ったら国の制度を使えばいいと考えているから。役所の窓口が激混み、っていうのは考え物だけど。
人間、美しく死のうとしがち。みっともなくても、まず生きる方向に舵をきらなければ何も始まらない。
ここ最近の感染症騒ぎは、私から希死念慮をすっぱりと拭い去ってしまった。おそらく死や苦しみとの距離感がほんの少し近くなって、見える景色が変わってきたのが原因だと思われる。
ぶっちゃけ、平時よりめちゃくちゃ精神状態がイイ。不謹慎だが、このまま騒ぎが続いてくれればいいのにと考えてしまっている。
アメリカだっけか。予算の割り振りに悩んだ役人が自殺したのは。他人事ではない。自殺者3万人超えの日本では、まったくもって他人事ではない。
カネと見栄ごときで死ぬな。どうか、どうか生きて。
死後の世界に逃げたいのはわかる、ちょっと前の私だってそうだった。けれど、どうせ輪廻転生する。苦しみは永遠に続く、と考えないといけない。
そのかわりいいこともある。楽しみも永遠に続く。新しい楽しみを発見したり、知らなかった喜びを見つけたりできる。
あなたは心だ。心は世界だ。よって、世界はあなただ。
へたくそな三段論法をもってしてでも、世界を、あなたを、現世に引き留めたいのだ。私は。
大学生時代、一回だけ自分が制御不能レベルに泥酔したことがある。先輩方に両脇を抱えられながら、「世界は美しい! 素晴らしい縁に恵まれている!」とこの世の全てを賛美していた。記憶がはっきり残っている。
今ならわかる。この非常事態とシラフの自分の距離感は、平時の社会と泥酔した自分の距離感と似ている。
世界は美しいよ。みんな生きて。
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