25|穴掘り、傾斜土槽法、壁壊し
GWには庭に深さ60cmの穴も掘った。60cmも掘れるかしら、と思ったが、途中何度も石にぶつかりながらも掘れた。清々しい気分になった。
掘っていくと色の違う層がみえてきて、いつも立っている場所の、地下のことは何も知らなかったと思った。毎日、知らなかったことさえ知らなかった新しい何かと出会っている気がする。
なぜ土を掘ったかというと、土壌浸透調査のためだ。業者の人が緊急事態宣言下で都内から出られず、宣言延長の気配も濃厚ということで、やり方を教えてもらって、自分たちでやることになった。
深さ60cm、幅30cmの穴を掘って、水を入れて、1cm水位が下がる速度を測る。早すぎても遅すぎてもだめ、いいかんじに土壌に水が浸透していくかを確かめる。
で、やってみたところ、全然だめだった。話にならなかった。
というのも、深く掘ったところから何もしていないのに水が滲み出てきたのだ。そういえば、田んぼの中には向かないと言われていた。こういうことなのか…
水がしみこむより滲み出てきてしまうんだから、毛管浸潤トレンチにしてもエコロンにしても、土壌浸透系は向いてないんだと思った。
仕方ない、合併処理浄化槽を入れて、水洗トイレにできる逃げ道も残しつつ、コンポストトイレをやってみよう。それはそれで気楽かな。
と思ったのもつかのま、待ってって声が頭なのか体なのかどこかから聞こえる。地下水脈の干渉があるなら、合併処理浄化槽にも何らかの影響がありそうじゃない?合併処理浄化槽も、地下1.6mの深さにコンクリの基礎をいれて設置するものなのだ。
ネットで見ると、地下水位が高い場合の設置には、浮上防止ベルト等の施策が必要とか。やりようはいくらでもありそうだが、土中のバランスを崩しそうな感じがして、やらないで済めばやらないほうがいいような気がする。直感的にやりたくない。
時間は迫ってるけど、他の方法ないかなー…!追い詰められたところで、もうひとつ方法があったことを思い出した。
「傾斜土槽法」だ。
傾斜土槽法は、微生物を繁殖させた箱を何段か積み重ねて、それらをフィルターにして通過させることで水を浄化する、土中の浄化力を応用した装置。屎尿処理はできない、生活排水浄化専門で、飲み水の浄化もできるという。
これもコンポストトイレの会社の人が教えてくれたんだけど、土中方式に比べると浄化力が弱そうだと思いスルーしていた。でもトイレはコンポストにするから、生活排水だけならちょうど良いのかも。妹島和世が手がけた「犬島くらしの植物園」でも、キッチンの排水処理に採用されていて、「花水土(はなみずち)」という商品名で販売している。
ということで、販売会社に問い合わせると、開発者の生地(きじ)さんの連絡先が書かれた資料をくれた。そこには会社の番号と個人の携帯番号があった。開発者の携帯に電話できる距離感すごいな…と思いながら携帯に電話したところ、すぐに繋がった。で、色々聞いて、できそうだったので、傾斜土槽法でいくことにした。
いよいよ、生活排水処理方法も決まった。良かった…!いわゆる、胸をなでおろす心地になる。
生地さんは四国電力の関係会社の環境部で働いていて、傾斜土槽法に関する論文を何本も執筆していて、愛媛大学との共同執筆もあり、傾斜土槽法はスリランカやバングラディシュの排水や飲み水の浄化にも利用されていて、いわく、有機性排水の浄化にはベスト、今はまだ一般化されていないが、ゆっくりと世界的に普及していくだろうと考えています、とのこと。
これは我が家も一つのサンプルになれるわけで、論文のためのデータ提供とかできたらいいね、と夫と話した。普及前の前途ある実験に参加してると思うとワクワクする。最先端だと考えると、維持に疲れた時にも頑張れそう。
難点は、高さが必要な装置の上部から水を流さないといけないから、排水管に高さが必要なこと(水は高い方から低い方へしか流れない!)。お風呂、洗濯機、洗面所、台所、すべての管をそれぞれ外に出さないといけないから、壁にボコボコ穴があくこと。気密…
普通はトイレもその他排水も全部床下で合流して、下水に流れていくのよね。普通と違うことをするのは、設計者も施工者も慣れてないから、予想外のトラブルがあるかもしれない。冬の雪や気温の低さとか、四国とは条件も違うから、北陸なりの工夫も必要だろう。でもそういうの全部含めて実験だ。
コンポストトイレ同様、微生物の働きにおもねる装置なので、冬からの利用開始は良くない、ということで、自ずと引越し時期が来年の春以降に決まった。
引越しの時期を微生物が決める。我々の新しい暮らしの主導権を握るのは微生物だ。ほんとうは、生き物みんなそうなのだけど、それを実感する暮らし。それこそいま、人間社会は微生物に振り回されまくっているところで、恐怖とは別回路で関係を実感すること、知っていくことは、すごく大切だと思う。
GW中には、壁をなくす予定の壁を2箇所と、吹き抜けにする部分の床の解体もした。
腰を入れて振りかぶり、木槌をドカンドカン振りおろすと、壁はどんどん壊れていった。力を込めて打ちつけると打点の周囲がみるみる崩れていく、その気持ち良さといったらなかった。
もしかして、現代の私たちには振りかぶりや振りおろし、穴掘りといった、全身をつかう動作が足りないのかもしれない。もしかして、じゃないな。足りないよね。
この身体で穴が掘れたこと。壁が壊せたこと。それだけで妙に達成感があり、満たされた気持ちになった。
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