9|猪を捌く-4 ワイルドボアバーム

とにかく豊富な脂肪をつけていた猪。
脂身だけの塊もあり、肉に付随しているものも、食べきれない量がある。

精製するとラードないし保湿剤になると聞いたので、試してみることにした。猪油a.k.aワイルドボアバーム。人の肌と組成が近く、やけどの薬にもなるらしい。

まず「煮出し」で保湿用の油をとる。煮て、油を溶かし出して、冷やして分離させる、というのがざっくりした手順。

脂身を細かくサイコロ状に切って、濾す手間を省くために排水溝用のネットに入れて、水を入れて、火にかける。灰汁をとって弱火で煮ること約2時間。こんなもんかな?と思って、鍋ごと冷蔵庫に入れた。

まだまだ油分は残っているので、続いて「焼き出し」をする。これは香ばしい匂いがするので、ラードとして食べる用。

ネットから出してフライパンで焼くと、すぐにじゅうじゅうと油が出てくる。随時ホーローの保存容器に注ぐのだけど、やってもやっても油が出てきて、だんだんクラクラしてくる。どれくらいやってたんだろう。換気扇を「強」で動かし続けるも、最後は油にやられて頭が痛くなった。できるなら屋外でやるほうがよさそう。

焼かれて油を搾り取られた最後には、油を出しきってしゅんっと縮みまくった元脂身の脂カスが残った。捨てるのは勿体無いので、天かす的な存在として料理に使うべく、保存袋に入れて冷蔵庫へ。

それにしても、油をとったあとの脂身って何なんだろう?というか、油って何なのか。考えてみると、よく知らない。

油って、目に見えるところに「油」としては存在してない。水のように流れてはないし、降ってもこない。ごま油、紅花油、菜種油、オリーブオイル。どれも、ごま、紅花の種、菜種、オリーブと、植物の種が含む油分を圧縮分離してつくるらしい。あ、ゴマってタネなんだ。

米油も米からつくられる。ということは、お米って稲のタネなのか。検索してみたら、そうだった。わたしたちはタネを食べてるんだねって、リスみたいな気持ち。(正確にいうと、玄米なら果実、胚芽米が種、白米は胚乳を食べてるそうです)

タネには油がある。油は「育つ」を支えるもの。

考えてみれば、石油だって不思議なのだ。石油はナン億年も前の生き物の死骸が堆積してつくられるという。石油製品というとなんとなく悪者に響くけれど、石油自体は天然素材である。そして、そこから様々なものがつくりだせる、そのこと自体は、ただただワンダーでミラクルだと思う。

さて、煮出した方はどうなったか。鍋の蓋をあけてびっくり、全然固まっていなかった。これはどうやら失敗、煮出しではほとんど油分が精製できていなかったよう。

なんとかかき集めて肌に塗ってみると、たしかに匂いはほとんどなく、肌馴染みもさらりと気持ちが良い。しかし、ここからまたエッセンシャルオイルを加えて香りづけして、とかできるほどの量はない。

バームはどうやってつくるのかな。オイルを加えるとして何%くらい入れて大丈夫なのか、化粧品というのか、そういうもののつくり方は、まったくわからない。

「猪油」の検索では詳しい情報が出てこないから、また手づくり化粧品の世界も調べないといけない。

手づくり沼も沼である。やればやるほど、わからないことがどんどん広がっていく。


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