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「第八帖・花宴」2021/11/10 源氏ゆる語り

さて今回は私の大大大好きなシーンのある巻です。
その場面では興奮気味の語りになっていますが、お許しください。

冒頭にお話ししておりますように、この花宴(はなのえん)の巻は、平安後期〜鎌倉初期の歌人であり『千載和歌集』の撰者でもある藤原俊成さんが、この巻の幽艶な情緒について言及した時に
「源氏見ざる歌詠みは遺恨のことなり」
と言ったということでも有名です。

この流れから、勅選の八大集や当時の季節の区切り方のお話などもさせてもらってます。中高生にとってはテスト対策にぴったりですね。ふふ。

そして華やかな桜の宴の後…
ついに、ついに、源氏はあの女君と出逢うんです!!
出逢ってしまうんです!!

その前に、宴の様子(7分頃〜)や、美しく舞う光源氏を見つめる藤壺中宮の心中の描写(13分過ぎ〜)も見処なので、この辺りもじっくり聞いていただけたら嬉しいです。
猫が途中で邪魔しますけど。もはや恒例になりつつありますww

ではメインの事件の前に系図を載せておきましょう。

うん。系図、今回も安定して曲がってますね。
本を写真で撮ってますからねw
後日、ちゃんと直しますね。とりあえず。すみませぬ。

アーカイブ17分20秒くらいから、始まります。
そう、始まるんです。
私が大好きな、朧月夜の君との出会いのシーン!!!

何がいいって、朧月夜がね、美しい月を見るために廊下を立って歩いてくるんですよ。暗闇の中から、「朧月夜に似るものぞなき…」と有名な和歌の一部を美しい声で口ずさみながら…!なんて美しい登場なの!
それを源氏が見つけて、魅了されてしまうんです。

ちなみにこの時に彼女が口ずさんでいる和歌は、平安時代前期の貴族で中古三十六歌仙の一人である大江千里(おおえのちさと)が詠んだもので、『大江千里集』に入っているほか、後に『新古今和歌集』にも選ばれています。
「照りもせず曇りもはてぬ春の夜の 朧月夜にしくものぞなき」という和歌。この「しく」が「似る」に変えてあることについては配信アーカイブの20分20秒くらいから詳しく説明しておりますので、そちらを是非。

大江千里の他の和歌では『古今和歌集』に入っている
「月見れば 千々に物こそ悲しけれ わが身一つの秋にはあらねど」
も、有名ですね。これは百人一首にも入ってます。ご存知の方も多いかと。

さて、話を戻しまして

22分40秒くらいから、あたくし温度感高めでお話ししてますがwこんな登場の仕方をする女性、すごく珍しいの!でもこれがね、朧月夜さんに本当にぴったりで、彼女のキャラクターをこの出逢い方が全て物語っていると言っても過言ではない!って思っちゃう。当時の人も大興奮だったことでしょう。だからこそ、この女君は「朧月夜」と呼ばれるようになりました。

もう、このあとはここには書くまい。
興奮気味のアーカイブをどうぞ。我ながら、とても熱が入ってます。
だって好きなんやも〜〜ん。

二人が逢瀬を遂げちゃった「庇(ひさし)の間」、この図があるとわかりやすいかな。部屋を取り囲む広めの廊下というか。これを几帳などで区切って女房たちが仮眠の場所や控えの場所として使ったりしてたんですよね。

朧月夜さんのキャラ設定、そしてそんな彼女に溺れていく光源氏。
そりゃそうですよ。艶っぽいったらありゃしない!!
二人が交わす言葉、そして和歌。互いの扇を目印になるよう取り替えて、名乗ることなく別れる夜明け前の情趣…。はぁぁぁなんて美しいの…。

それにしても、彼女を見事手に入れる瞬間の、あの光源氏の一言。
アレはすごいですよね。
若さも美しさも権威も財力も全て持っている光源氏だからこそ、発する事のできる台詞です。めっちゃ調子に乗ってますよね。
自身の才覚や美貌だけでなく父帝や左大臣家のバックアップも受けて「皆人にゆるされ」る状態で調子に乗っている若き貴公子。
うまく描いてますよ、作者は。

そしてその一言を聞いて「光源氏様なのね、じゃ、いいかも…」なんて安心してしまう朧月夜よ。わかるけど!わかるけども!

せっかくなんで原文と対訳、載せておきましょか。

小学館日本古典文学全集より

その後、源氏が派手好きな右大臣家での藤の花の宴で朧月夜を見つけ出した場面も、とってもオシャレで美しいんですよ(アーカイブ49分過ぎから)。

そう、なんていうか、この二人の恋模様って、艶っぽくてオシャレでハイレベルな風流さで、でも若さゆえの衝動と官能にズブズブと溺れる感じがとにかく美しくて。官能に絡め取られていくのを楽しんでいる、というか。
それがいいのよねぇ、若い時の朧月夜と光源氏って…。
艶かしく瑞々しい。はちきれんばかりww…

と、ここで「若い時の」とわざわざ書いたのには理由があるのですが、それはまた後の事。第二部でお話しするまでお楽しみに…。

そして55分20秒からの、物語最後の「逆接」についての説明。この余韻…。この余韻なんです。素敵すぎる。ここはぜひアーカイブで。

この恋が、源氏にとっては須磨明石への流浪の原因になるわけなんですよね。
ああ、甘い破滅…。まさに…。

というわけで、興奮しすぎなチエルームとともに、どうぞこの巻はぜひ通してアーカイブを聞いて楽しんでいただけたら嬉しいです。最後にもう一度リンク貼っておきます。





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