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「第十四帖・澪標 」2021/12/22 源氏ゆる語り

今回は明石から都に返り咲いた光源氏がどんどん盛り返していく「澪標」の巻のお話です。
冒頭は前回の配信での言い間違いについて訂正しております。前回のnoteでも訂正したやつですね。誠に申し訳ありませんでした。
本編は5:30頃〜始まります。

「澪標」とは「水路標識」のこと。
配信でもお話ししていますが、よく和歌に詠まれる単語でして、「身を尽くし」と「澪標」とで掛詞になっています。
掛詞、本当にうまいこと言いますよね。ダジャレ、言葉遊びなわけですが、知れば知るほど「上手いなぁ」と感心させられます。

ちなみに掛詞にはこういうのがあるんですよ。
これ、大学受験用のテキストに載っているやつですが。

こういうダブルミーニングをうまく使って和歌を作るんですね。
しかも会話の中で流れるようにスマートに詠まないとモテないんですよ。大変ですよ〜。

と、いうわけで。まずはこの巻の系図を。

この巻はまず桐壺院の霊が成仏できていないことを源氏が心配している場面から始まります。配信9:00頃からです。
あ、9:30くらいから例の如く茶トラのコジローちゃんが叫んでまして、10:30頃には完全に私と会話してますがww
それは置いといて、ここで注目したいのが当時の「誰かが夢に現れる」という事柄に対する認識ですね。
あの人が夢に出てくるのは、あの人が私に会いたいから、伝えたいことがあるから、と。
今でも亡くなった人が夢に現れた時はこのように捉えるケースが多々ありますが、生きている人の場合はあまり見られなくなってますね。

源氏としてはやはり須磨の浦で夢に現れた桐壺院の言葉が気がかりでしょうがない。大々的な法要の準備を始めます。
世の人々は手のひらを返したようにこぞって源氏にお仕えしている。

一方で語られるのは弘徽殿大后の怒りと不満、そして朱雀帝の晴れやかな様子です(13:45〜)
源氏復活に不満だらけの弘徽殿大后に対して、朱雀帝は亡き父院の遺言をずっと気にかけていましたので、今は晴れて源氏を京に呼び戻し、何事につけても彼に相談をして政を行なっています。父院の思し召しの通りになっているのです。

そんな中、いよいよ退位しようという気持ちが固まっていく朱雀帝。
一つだけ気がかりなのは、やはり愛する朧月夜のことです。
そんな帝の切ない思いと、その愛情を受けて心を改めている朧月夜の後悔が語られます。

20:35〜東宮が元服、そして朱雀帝が譲位。
藤壺と源氏との罪の子である東宮がついに即位して帝となるのです。
彼は読者から冷泉帝と呼ばれることになるんですが、これは朱雀帝同様、後に譲位して冷泉院に移ったことからその呼び名になるんですね。
だから、物語の中では「帝」「上」と呼ばれるだけで「冷泉」という名は出てきませんが、便宜上「冷泉帝」という通称で説明するのが常になっています。

元服した彼はとにかく源氏にそっくり。
複雑な母・藤壺さん。
しかし、ここで再び源氏+左大臣(ここで摂政太政大臣に出世)側に権力がどーっと移った新しい時代が始まるわけです。

そしてその後(28:20〜)、作者は明石の上の現在を語り始めます。
明石の上はどうなっただろうと源氏が文を送ると、無事女君が生まれたとの知らせ。待望の女君です。
ここで思い出すのは以前に宿曜(星占い)で言われてたこと。
お子は三人。一人は帝、一人は国母(帝の母)、一人は臣下として位を極める。この明石の姫君こそ、入内して国母となるはずの娘なんですな。

ちなみに配信では源氏が物語の中で見てもらった他の占いのことにも触れてます。この占いの「フリ」っていうのは第一部ではとても重要ですね。

源氏は、全てが住吉の神のお導きであったと強く思います。
そしてこの娘の未来、源氏一門の未来について、確信するのです。

そうなると早く京に引き取りたい。
しかしまだ引き取る準備ができていないので、まずは優秀な乳母を送り込みます。あ、40:30頃〜、源氏ったら別の意味でも復活、というか面目躍如って感じのエピソードもありますので、こちらはアーカイブでぜひ。ふふ。

44:30くらい〜明石に乳母たち一行が到着。
明石の入道や明石の上の喜びが描かれます。
一方、源氏は京に迎え入れるための準備を着々と進めます。
まず紫の上を説得。うまいこというんですよね〜。詳しくはアーカイブで。

そうそう、49:15くらいからお話ししているんですけど、何故か明石の上のことを紫の上に全部話し始める源氏。これ、なんで全部話すの?って思いません?本当にこれ、理解できない。黙っとけよ源氏!ていつも思いますw
だって紫の上も、せっかく穏やかに受け入れてたのに、そんなの事細かに話されたらだんだん複雑な気持ちになってきますよね〜。
それを慰めつつ、その嫉妬の仕方を可愛く思う源氏。なんやのそれ!
当時の読者も「なんで全部言うの〜!?」ってイライラしたかも?

ただ、作者はちゃんと意図があってそうしてるんです、おそらく。
物語では明石の上と紫の上のことが交互に語られることが今までもありましたね。それをすることで、この二人の置かれている立場の違いがくっきりと際立つ。これは今後も続きます。
源氏がこの二人の女君に要求するもの、それはつまり作者がキャラ設定として必要としていること。この辺、詳しくはアーカイブでどうぞ。

54:00過ぎからお話ししている、源氏が絶賛する紫の上の様子から見られる「源氏の理想の女像」。ただの支配ではない感じも面白いです。

その後、新しい邸宅を造って花散里や明石の上などの女君たちを迎え入れる計画をする源氏についても語られます(58:20頃〜)。
ここにきてやっと思い出して尋ねてもらえた花散里。
彼女は「おっとり慎ましやか」キャラを確立しましたね。
他の女にしても、源氏との関係性の設定がどんどん固定されていく感じがあります。

そして物語は以前とはガラッと変わった世の中の情勢を語ります。
ここでは弘徽殿大后や兵部卿宮(紫の上の実の父)への源氏の態度が面白いですね。源氏、なかなかやります。
そして住吉大社へのお礼参りの話へ。1:10:00くらい〜ですかね。
ここでのポイントは、同様にお礼参りに来ていた明石の上一行と偶然出会うところです。出会うと言うか、源氏サイドは気づいてないんですよね。
明石の上がとにかく一方的に気圧される形になります。
彼女からの視線の切なさ、辛さ。そして付きまとう「身の程の自覚」。
今後もしつこいくらいにこれが描かれることになるんですね。
がんばれ!明石の上!

そして1:16:30頃〜は、六条御息所を源氏が見舞う場面について。
帝が変わったので、伊勢の斎宮も変わります。
娘と一緒に京に戻ってきた六条御息所は、病気になって早々に出家してしまっているんです。ここでのポイントは仏道と神道のこと。
これ、なんとも日本っぽい混在のあり方。よく考えると矛盾がいっぱいなんですが。日本人にとっての宗教というのが、いかに後付けの感じのものなのかがよくわかる気がしますね。これについてはまた機会を設けてお話ししたいと思っていますし、実は源氏物語の第三部においては「宗教」特に「日本における仏教」とかなり向き合っていくことになります。

すっかり弱ってしまっている六条御息所から娘(前斎宮)の後見を頼まれるが、釘も刺される源氏。「娘には手を出すな」と。さすがです、六条さん。

そして六条御息所の死後、源氏は自分が父親がわりの後見となって前斎宮を冷泉帝の妃にと考える。まだ11歳の帝に対し、前斎宮は20歳、かなり年上だが、幼い帝にとっても頼りになる妃となるだろう。源氏のライバルの権中納言(かつて頭中将と呼ばれていた人)の娘が先に入内しているが、その娘はまだ12歳(弘徽殿をお部屋として与えられたので弘徽殿女御と呼ばれています)。子供同士の結婚でおままごとみたいな二人だから、前斎宮が入内すればまた違う関係性の妃となるだろう。
そして源氏は帝の母である藤壺女院と相談しつつ、着々と入内計画を進めていきます。

ここでは藤壺さんが母としてめちゃくちゃ強くなってるのが見事ですね。
すっかり肝が据わっています。自分が幼い帝を守っていかないといけないんですものね。源氏とガッチリ手を組んで、帝にとって有益になるような入内の画策をするキャラになってるのがポイントです。

そして源氏は前斎宮を二条院に引き取り、紫の上にも協力をしてもらって、入内準備に入ります…というところで、この巻は終わります。

なんかこう、明石から戻ってからの源氏は、一気に逞しくなりましたよね。
須磨に行く前は、華やかに自分の思うままに生きていかんとしているかのような若者だったのが、ここにきて権力を求める動き、そして一門の繁栄を目指す動きをし始める。これが大人になるってことなんでしょうかねぇ。
かつては怯えながら秘密を守り続けていた源氏と藤壺が、今は自分たちの子供が帝として立派に生きていけるように手を組んで諸々の画策をしているというのも、面白いと思いませんか。源氏というより、藤壺の変化がやはり大きいかな。「母は強し」と思わされますね。

あ、それと、ここで配信では話していなかったプチ情報を。
さっきお話しした、冷泉帝とはおままごとみたいな夫婦関係の弘徽殿女御12歳。彼女は権中納言の娘なんですが、おじいちゃんに当たる太政大臣の養女になって入内しています。そう、孫を養女にするんです。なぜそんな面倒なことをするのかというと、娘の箔をつける為なんですよ。みんなわかってることなのに、わざわざそれ、意味ある?って感じですけど、意味あったんでしょうね、この時代には。

ということで、今回は少し長いですが、アーカイブ、もう一度貼っておきます。気になるところだけ聞いてみるのも一興かと。ぜひどうぞ〜。



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