「第四帖・夕顔」2021/10/14源氏ゆる語り
今回は帚木三帖(帚木・空蝉・夕顔)と呼ばれる三つの巻のラストを飾る夕顔の巻。
帚木の巻で悪い兄さんたちに「堅苦しくない恋の相手には中流階級の女がちょうどいい」とけしかけられた若き光源氏の、秘密の恋の苦い思い出。
前回の「中流階級の人妻・空蝉」に続く2人目の女です。
空蝉さんには振られちゃった光源氏ですが、今回の夕顔ちゃんはとってもいい感じ。可愛いし素直だし、いい感じで親しみやすいし、品もあるし気の利いた和歌も読めるしセンスもいい。
年上の上流階級の女を妻や恋人に持つ光源氏にとっては、初めての「気を張らなくていい可愛い恋人」である夕顔さん。実は帚木巻の雨夜の品定めでライバルの頭中将が「突然消えてしまった忘れられない女」として話していた人なのです。だからこそ光源氏は余計に興味をそそられる。頭の中将には内緒なのもまた盛り上がっちゃう要素になってるわけです。悪い子ですね。
まぁ、夕顔も実は源氏より2歳ほど年上なんですが、キャラ的に可愛らしくて年上感がない設定です。あと何より身分的にも気を張らなくていい。
ちなみに夕顔に初めて出会うのが、ものすごく気を張らなくてはいけない高貴な年上の恋人「六条御息所」に会いに行く途中だっていうのがまた効果的じゃないですか!
六条御息所の邸から明け方に帰っていく光源氏の艶っぽさと、夕顔と一緒にいる時の少し力の抜けた感じ。この違いもポイントです。夕顔ちゃんとたわいもない会話をしてる時なんか、年相応の恋にはしゃいでる感はありますよね、やっぱり。
っていうか、六条での源氏があまりにカッコよく艶っぽすぎて、前半はそっちのエピソードにかなり力が入ってますが。っていうか萌えてますが。ははは。この六条での艶っぽい源氏の様子はアーカイブだと33分くらいからですかね。
一方での夕顔ちゃんへの源氏のメロメロっぷりについては44分くらいからお話ししてます。はしゃいでます。はしゃいでるんです。年相応です。
そして、はしゃいじゃった結果、光源氏ったら夕顔ちゃんを誰も住んでいない荒れた邸に連れ出して、そこでしっぽりと一夜を過ごそうなんて盛り上がったせいでね、彼女はもののけ(女の霊)にとり殺されてしまうわけなんですよ。そりゃもうあっけなく。
なんですか、これは、ホラー映画のオープニングですか。若い男がね、浮かれて彼女を連れて肝試しに行ったりなんかしたら、だいたい殺されるんですよ。霊とかゾンビとかジェイソンとか!
まぁ冗談はさておき、まだ17歳の光源氏にとっては、これはもう本当にトラウマになるような経験でした。
詳しいことは配信アーカイブでお聞きいただきたいのでここに皆まで書きませぬが、この時の光源氏がね、可愛いんですよね〜。子供っぽさが出ちゃうの。
恐ろしい風が吹き荒れる真夜中、夕顔ちゃんがもののけのせいで死んじゃって、正気を失ったようになりながら泣き乱れる夕顔付きの女房の右近さんもこのまま死んでしまいそうな勢いで、自分だけはしっかりしないと!と思って気を張って右近を支えながら助けを呼ぶけれど、内緒のランデブーにしたくて人払いをしちゃってたせいで家来もほとんどおらず、頼りの惟光(源氏の一番信頼している家来)を呼びにやらせてもどこへ行ったかわからずなかなか助けに来てくれない。必死で気持ちを強く持ってなんとか夜を超え、ようやく夜が明け始めると今度は「ああ、これは自分が父の妻である藤壺女御に許されぬ恋をしている罰なのか?こんな事件が人に知られたらどうしよう。父の帝に怒られる。聞いた人には笑い物にされるだろう。どうしよう…」などと自分の心配をはじめます。朝になってちょっと気が緩んだんですかね。ちょっと子供っぽさが出てきます。
そしてやっと家来の惟光がやってきた時、彼は「何してたんだよ!もう!」と怒るんですが、一方でホッとしてしまって、事情を話そうとするけど言葉に詰まる。そして改めて夕顔ちゃんを亡くしてしまった悲しみが堰を切って溢れ出し、うえ〜〜んと泣いてしまうわけです。
その感じがね、本当に幼いというか。まだ17歳なんだもんな、ほんとはすごく怖かったし悲しかったのに、今まで我慢してたんだな、かわいそうに〜〜ってなるんですね。
実はここで作者が泣いている光源氏の様子を描くのに「らうたし」という表現を使っているのもポイントです。「らうたし」って本来「可愛い」っていう意味なんですよね。ここではよく「痛々しい」くらいに訳されたりしますが、つまり作者は明らかに源氏の「若さ・まだ残る幼さ」を描こうとしてるんですよね。愛おしくなるくらい痛々しく泣いている、まだ子供っぽさの残る17歳なんです。いや〜〜、いいね。さすがね、紫式部。
さて、この後、源氏と惟光がどのようにしてこの事件を秘密裏に対処したのか、それは配信アーカイブにて。全部書いてたらとてつもない長文になっちゃう。
空蝉と夕顔、二人の中流階級女性への恋はどちらも残念な結果に終わり、若い源氏にとっては苦い思い出になりました。まだまだですね、光ちゃん。
でもこの経験で、彼は男として少し成長するわけです。良くも悪くもww
世間的には内緒にされたお話でございました…っていうことで、帚木三帖のラストを飾る「夕顔」巻は幕を閉じるのでした。
ちなみに、夕顔に取り憑いた霊というのはこの荒れた屋敷に住みついていた霊であるということで物語の中では決着してますが、六条御息所と源氏のエピソードが合間に挟まれることによって、この霊も実は六条さんの生き霊だったのでは?なんていう読み方もできますね。印象操作ですよww。作者、上手いですよね〜〜ホントに!
これについては、アーカイブの1:08:30くらいのとこからですね、紫式部のもののけ観についてお話ししてます。これ、この後もけっこう重要になってきます。こういう考え方の持ち主だということを心に留めた上で読んでいくと、面白い発見がいろいろできます。
てなわけで、今後もお楽しみに〜。
最後にもう一度アーカイブ貼っときますね!
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