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「第七帖・紅葉賀」2021/11/03 源氏ゆる語り

今回は「先帝の四十もしくは五十の賀」で「朱雀院への行幸(みゆき)」が行われることになり、その素晴らしい催しをどうしても桐壺帝が藤壺さんに見せてあげたくて、行幸の前に内裏の清涼殿の前庭で舞人や楽人たちに試楽(予行演習)をさせる…という場面から始まる巻です。
配信アーカイブはこちら

ちなみに行幸とは帝が内裏を出て、どこかにお出かけなさることを指します。内裏を出るだけで大行事になっちゃうんですから大変ですよね〜。

この先帝というのは光源氏のお父さんである桐壺帝の、父か兄かどちらか。
これは詳しく書かれていません。
藤壺さんの父親も物語内で「先帝」と書かれてますが、それとは別人です。
ここで出てくる先帝は譲位した後に朱雀院で隠居生活なさってたので、桐壺帝がその朱雀院にお祝いに出かけて盛大な宴を開くことになってるんですね。

ちなみにこの朱雀院という邸宅は後に、桐壺帝の第一皇子であり光源氏の腹違いの兄にあたる朱雀帝が引き継ぎます。つまり源氏の腹違いの兄皇子に当たるこの人は、譲位した後に朱雀院で暮らしたので後々「朱雀帝」と呼ばれることになったわけです。
わかりやすく判別するために後世の本や解説では彼のことを最初から「朱雀帝」と呼びますけど、実は源氏物語の中では朱雀帝とは呼ばれていません。譲位して朱雀院に住むようになってから「朱雀」という通称が出てくるんですね。
朱雀院の場所はこちら。

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ちなみに藤壺と源氏の罪の子、後の冷泉帝も、譲位後に冷泉院で隠居生活を送ったから「冷泉帝」と後世の読者が呼んだっていうことで、やはり通称なんですよ。さて、上の図で冷泉院の場所は見つかりましたか?探してみてくださいね。

第一回目にもお話ししましたが、桐壺帝だって、桐壺更衣を溺愛しちゃった帝だから「桐壺帝」って呼ばれただけだしね。ちなみに桐壺更衣の桐壷ってのも、後宮の淑景舎という部屋の中庭(壺)に桐の木が植えてあったから、そのお部屋が桐壺と呼ばれてて、そこに住んでた更衣さんだから通称「桐壺更衣」。
藤壺さんも同じく、飛香舎というお部屋の中庭に藤が植えてあったから飛香舎が藤壺って呼ばれてて、そこで暮らしてた女御だから通称「藤壺女御」ね。
だから帝が代替わりすると、新しく藤壺に住んだお妃が藤壺女御になるわけで。そこを間違うと「あれ?藤壺女御って死んだんちゃうん?」ってなことになって混乱するわけですね〜。ご注意あれ。(更衣、女御の違いはもうわかりますかね。お妃のランクですね。親の身分によってランクが変わる。女御が上です。)

物語中は男女問わず誰も個人名で呼ばれず、全てその時の役職や物語中に作者によって設定された通称で呼ばれます。後世の解説の際にはさらに読者たちの間で共有された通称も加わって説明されたりしてますし(葵の巻で亡くなったから葵の上とか)、その辺を把握するのが大変なのもこの時代の物語の特徴ですね。

あ、前置きがすっかり長くなりました。
まぁこの巻のあらすじについては配信アーカイブで詳しく聴いてもらえるので、noteはざっくりと目次と補足って感じで。

まずこの巻の最初の見せ場は光源氏と頭中将という若手エリート美男子2トップが「青海波」という舞を舞う場面なんですけども、その前に配信では猫の喧嘩やらいろいろ事件がありましたね。びっくりしましたねww

当日アップした資料も貼りますね。
ちなみに配信では青海波、垣代、秋風楽のお話をしました。

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詳しい説明についてはアーカイブで。8分過ぎからかな。
青海波を舞う源氏を見ている藤壺女御の心情がね〜。切ないですよね。
そして藤壺からのお返事を「持経」のように大切にする源氏。
内容は源氏の想いをはぐらかすようなものですけども、そのはぐらかし方も見事で、うっとりしちゃうんですね〜。それすらも理想の女性の証なんですね。

そしてこの華やかな宴の話のあと、配信を邪魔する猫。なんだったんでしょうね、この日はww。アーカイブ15分くらいから。って、猫の大暴れをいちいち紹介してどうする!まぁ、チエルームよりうちの猫たちの方が人気がありますからねw

猫がスッキリした後w、配信はこの巻の次の重大なポイント!藤壺女御出産準備の場面に入ります。18分30秒くらいから詳しくお話ししています。
ここがね〜、作者がね、またもう、上手いんですよね。

あ、この話題の中で兵部卿宮という人物が出てくるので、系図載せときますね。わかりやすく聴いていただけるかと思います。

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ちなみにこの系図、源氏と紫の上にまだ婚姻関係の二重線が引かれてないでしょ?これはまだ二人の間に男女の関係がないからなんですよ。まだ幼いですからね。源氏は彼女を大事に育てています。
そうは言っても周囲はそんな内情を知らず、源氏がどこぞの女君を囲っているという噂だけが一人歩きしますからね。ここでの左大臣側の必死さもよくわかります。「石帯」の話などもご説明しました。24分くらいからかな。

そんな中、どこぞの女君を引き取ったことよりももっと大問題だった秘密の大事件、源氏と藤壺の間の罪の子が「桐壺帝の皇子」として生まれてくるのです。アーカイブ25分30秒くらいから。
源氏との逢瀬の時期から計算して、ピッタリの出産日。
桐壺帝とはその時期は一緒に過ごしてないのよ、藤壺さんは。なんせ体調悪くて里下がりしてたんだから!この辺りの詳細は「第五帖・若紫」にて。

桐壺帝の子なら出産は遅くても12月。
でも里下がり中の4月に源氏との不慮の逢瀬があったので、実際の予定日は2月。2ヶ月違う。

ただ、当時は出産時期がズレているのをもののけのせいにできるというね、これ、便利ですよね。出産時期から逆算すると明らかに帝の子ではないんですけど、もののけのせいで出産が遅れてるって言えちゃう。いや〜〜、恐ろしいね。

生まれた皇子は源氏に瓜二つ。
ただ、これもね、源氏と皇子が同じ桐壺帝を父とした兄弟で、母親同士がよく似ているとなれば、二人が瓜二つでもおかしくはないわけです。うまい話です。

その皇子を前に、この秘密を守り抜く決意を固める藤壺女御。
そして何も知らない桐壺帝の思い……切ないの、これが。
桐壺帝、まじでエエ人過ぎる。純粋なんだよなぁ、この人。
だからこそ、あんなにも桐壺更衣を愛してしまったんだよな。
ぜひそんなことを思い出しながら、配信のこの場面の解説を聞いてもらえたら。源氏の思いもまた、複雑です。

そしてこの時の決意が、藤壺と源氏の今後のあり方を決めることになる。
ある意味、この秘密こそが、二人の絆となるわけです。
哀しい、そして罪深い絆です。源氏にとっては、やるせない絆です。

そんな源氏の心を癒してくれるのが、だんだん女としての成長も見せ始めている若紫という可愛い姫君。32分くらいから36分くらいまでの二人のやり取り、以前より少し変化してきた二人の関係。とても繊細に描かれています。
「女君」「姫君」という呼び名の使い分け、ここは注目していただきたいところです。

さて、この紅葉賀の巻の最後は藤壺女御がお妃のトップである中宮の位をいただくところで終わるのですが、その前にひとつ、ちょっとした寄り道息抜きエピソードが挟まれています。
これが有名な「源典侍(げんのないし)」という好色のお婆さんのお話。
源氏と頭中将がこの老女を完全にからかって悪戯を仕掛けてるのが、もう、ひどいですよね。ひどい。ほんとにこの二人はこういうとこやんちゃなんですよ。困ったもんです。
ただ、この源典侍もある意味なんとも下品というか露骨というか、ホンマ、エエ加減にしなさいよアナタ…みたいなとこあるんで、ちょうどいい笑い話に仕上がってます。ま、源典侍からしたら、ある意味ご褒美みたいな出来事ではありますよ。本人はイケメン貴公子二人に取り合いされてるって思いこんでますからね。極上の冥土の土産ですよ。さらにはこの人、ちゃんと年相応の夫もいますから、彼女にとっても最高の男遊びができたってことなんです。当時の女房はこんなふうにエリート貴公子とアバンチュールしたりしてたんですね。若い時はモテたんでしょうね、源典侍。

ってなわけで、このエピソード、結構面白いんで、ぜひ聞いてみてください。終始半笑いで話してますけど、私ww
作者の紫式部も絶対笑いながら書いてたと思う!
あとはやっぱり頭中将の源氏に対する遠慮のなさもいいですよね。
源氏にとっては彼の存在もまた、救いになったことでしょう。

さて、この日の配信の最後は、なぜ第一皇子を産んだ最初の妃である弘徽殿女御を差し置いて、藤壺女御を中宮にしたのかということについてお話しして終わっています。帝がこのように取り決めた経緯からは、藤壺さんへの強い愛情だけでなく、当時の宮家についての大きな問題が読み取れます。
桐壺帝は、ある意味で皇族の権威というものを強い勢力を持つ貴族たちから守ろうとしたとも言える。ただ、それが弘徽殿女御の父である右大臣方の不満を募らせつつあり、その矛先が源氏に向いていくことになるんですね。
それなのに、源氏ったら、あんなことをやっちゃう!!!
何をやっちゃたか?それは次の「花宴」巻で。うふふふ。

では最後にもう一度、今回のアーカイブ貼っておきますね。

https://twitcasting.tv/chieroom/movie/708201994


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