見出し画像

「第十二帖・須磨」2021/12/08 源氏ゆる語り

うちの次男坊、茶トラのコジローくんとの会話から始まります今回の配信、ついに須磨の巻、ヒーローの流浪のくだりが始まります。

貴種流離譚といいまして、物語の主人公が苦難の時期を経たあと成功・大成するという話型が古くからございます。これは世界共通でございますね。
源氏物語もその話型を取り入れているわけですね。

それについても冒頭にお話ししております(例に挙げた漫画が古いとのご指摘もいただいておりますがww)
アーカイブはこちら

冒頭にお話ししております「須磨がえり」
そう、昔からこのあたりで挫折する人が多いんですよね。
リスナーの皆さん、本当によく頑張ってここまでついてきてくださってる…

挫折した方も、noteと配信アーカイブでいつでも復帰できますからね。
いつでも帰ってきてくださいませね。

アーカイブは7:30くらいから本編のお話に入ります。
系図貼りますね。

第十帖の賢木の巻のラストで朧月夜ちゃんとの密会が事もあろうに右大臣に見つかり、弘徽殿大后の怒り爆発!ということで、この須磨の巻の冒頭では光ちゃんはすでに謀反の罪で官位剥奪されています。
この時代、官位剥奪というのはもはや流罪の準備段階。
そのため、光ちゃんは先に自分からどこかに引っ込んでしまおうと決めます。そして選んだ土地が須磨だったんですね。

ちなみにこの官位剥奪・流罪、そして須磨での謹慎生活。
これについてはアーカイブ10:30くらいから、藤原伊周や在原行平の話と絡めてご説明しています。

15:00〜緩やかなお別れシーン
ぐずぐずしてますよ、光ちゃん。注目したいのは、ここで彼が自分のやらかしたことをあまり反省してない感じがするってことですよ。
宿世を嘆くのはこの時代の普通ではありますけど、宿世よりリアルにアンタかなりやばいことやらかしてるやないの、わかりやすく…!
まぁ、藤壺さんとお話しした時には「もしかしたらこれはあの密通の罪の報いか」と感じているようなことを匂わせますが…いやいや、それはともかくよ、もちろんそれはそれで天罰があってもおかしくないけどよ、リアルに朧月夜ちゃんのことは現場を押さえられてるわけで、謀反の罪って言われてんのはこっちの事件がもとなんだからさー。宿世だのなんだのの前に、右大臣の屋敷に夜な夜な忍び込んでた自分の行動を反省しなさいよぅ〜!
…などと、当時の読者も思ったかもしれませんねww

若さとは馬鹿さ。しっかり須磨の地で反省していただきたい。

ここで作者は、先に3月20日の出立の様子を書いてから、遡って2〜3日前からの関係者各位とのお別れの様子を順に描いていきます。
それぞれ物哀しくも素敵なやりとりがございますが、やはり注目したいのは
18:20からお話ししている紫の上とのお別れのシーン。
源氏が都を離れるというのは、紫の上にとっても辛い時期の始まり。
鏡を読み込んだ和歌のやりとり、美しいです。
配信で読んだけどめっちゃ噛んでるので、ここに載せておきますね。
お恥ずかしい。

源「身はかくて さすらへぬとも 君があたり 去らぬ鏡の 影は離れじ」
 〜私の身はこうして流浪しても、あなたのそばにある鏡に映ったこの影はずっと離れませんよ〜

紫「別れても 影だにとまるものならば 鏡を見ても なぐさめてまし」
 〜お別れしても、そこに影だけでもとどまるのならば、鏡を見て心を慰めることもできましょうけれども…〜

そして24:25頃からお話ししている「懲りないふたり」のやりとりも素敵です。懲りないふたり…つまりは、光源氏と朧月夜。
本当にね、ダメな子達です。本能に正直すぎて。それがまた魅力的でもあるんですけどね。

27:50からは世間の様子も少し。話はそれますが、ここで右大臣って言ってるのがユダヤ人って聞こえちゃって、自分の滑舌の悪さに反省しているチエルームです…。

28:45〜いよいよ須磨へ。道中の様子は特に描かれず、心情だけで紡がれます。作者は旅の細かなことは書けなかったのでは?取材旅行に行くわけにもいきませんしね。景色などを想像で書くのは難しいでしょう。それでおそらく心情のみを記すのにとどめたのではないでしょうか。

須磨での住まいのことについては、在原行平が過ごしていた家の近くと設定して、さりげなく現実と絡めているのが面白いですね。
寂しいけれども静かで風流な暮らしぶり。光源氏一行は現地では大歓迎されます。

一方、都ではあの心優しい朱雀帝が、父桐壺院の遺言を違えて源氏を須磨の地に追いやっていることで自分を責め、辛い思いをしています。
愛する朧月夜が今もなお源氏を慕い続けていることも哀しい、本当に切ない心情が描かれます。
ある意味、彼は毒母と毒祖父の被害者ですよ。かわいそう。

その毒母・弘徽殿大后は、都の人々が源氏と文をかわし、彼のお返事の文面や筆跡や和歌などの素晴らしさに賞賛を惜しまないことに激しく怒っております。
その怒りを受けて、次第に都の人々との文通も絶えていくのです。

ただ、厳選された家来たちとの静かな暮らしから風流が途絶えることはない。彼らは寂しいながらもとても雅に時を過ごしており、そのやりとりには中国の故事や漢詩などがたくさん引用されています。
これ!これがポイントなんですね。
この場面においては、読者にもかなり教養が要求されることになります。
そこでついていけなくて退屈になっちゃう人もいて、それが須磨で挫折する理由の一つかも?
アーカイブ40:00くらいから、そのお話もしております。

ちなみに、作中で登場人物の性格などに合わせて巧みに和歌は作るけれども、漢詩は一切作らない、これは作者のポリシーです。
これもまた、当時の常識と紫式部の思考の表れですね。

その後は、明石の入道の決意がサラッと描かれていたり(43:45〜)、
宰相中将が須磨にやってきたりするとこがいいですね(48:00〜)。
宰相中将(以前は頭中将と呼ばれていた人・亡き葵の上の兄)がかっこいいですよね。泣かせますよ。友達って素晴らしい。

そしてアーカイブ50:25〜
この巻のラストを飾る突然の暴風雨。
ここで不気味な夢を見ることで、以降の物語の空気が一変するんですね。
そして明石の巻で物語が大きく動く事になる。
何が起こったかはアーカイブにてどうぞ。

あ、最後の総括でいい間違えしてるの発見。
54:09「ミカドでは弘徽殿の大后が」→「都では弘徽殿の大后が」
都と言おうとしてミカドって言ってましたね。言い間違いです。
訂正します。

ということで、最後のもう一度アーカイブ貼っときますね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?