世にもお粗末な恋愛弱者#05 人前で侮辱されること

共通の女の子の後輩と、3人でお酒を飲んだときのこと。

「Aちゃんはこんな店来ないでしょ？今日こんなお店でよかった？」と声をかける。後輩の女の子は「こういうお店、大好きです！」と笑顔で答えてくれる。「いやありがとね、オレとコイツは全然いいんだけどさ。Aちゃんは育ちがいいからこんなとこ来ないよね。こっちをメシに誘うときはそんなこと1ミリも気を使わないんだけどさ」と私を指さして笑う。

私だってそれに対して「ちょっとやめてよ～ちょっとくらい気を使ってよ～」と笑ってごまかす。その子は、いい子だから「（育ちがいいと言われたことに）そんなことないですよ！」って笑う。

別にいいよ、人前で私を笑いものにするのは。わかるよ、そういう空気。ほかの男友達とか上司とかもそうだもん。みんな、私を落としてほかの女の子を上げる。その道具に使われる。

「本当にかわいくないと思ってたらそんなこと言わない」

「ちえは返しが面白いから」

「そこまでいじってもらえるのってよくない？気を遣われてないってことじゃん。あの上司に気に入られてるんだよ」

そうやって言えば、私が傷つかないとでも思ってるのかな。私が面白い返事をするから言われるのかな。面白くない返事をしたら、どうなるのかな。その場がシラけるんだろうな。それで「え？なに？」って腫れ物扱いみたいになる？それとも「なんだよ、お前。空気読めよ」って言われる？何事もなかったかのように、話が再開されて存在が無視される？

私は、そういうことを言いやすいんだと思う。出会ってそこそこ仲良くなった人の9.5割には「いじっていい人」として認知されていると思う。自分は愛嬌で生きているタイプの人間だから、それはいいけれど。

せめて恋人には、そんなふうには言ってほしくなかった。

ほかの人の前で言うのはいい、気が大きくなるのもわかる。そこは理解している。だけど、2人でいるときには、せめてそう言ったことをフォローしてほしかった。

でもそういい出せずにいる。ほとんどの友達は私のことを「いじってもいい人」と認知していて、どんなことを言っても私が笑顔で面白おかしく返してくれるだろうと信じている。それがたとえ、ひどいことであっても。

でもその信任のうえで私は人間関係を築いてきた。だから、いろんな人と仲良くなれたし、距離を縮めることができた。いまさらその信任が崩れたら、周りはどうやって接すればいいのだろうか。恋人ですら、もともと友達だったんだからそういう信任があってこその関係だったわけだ。恋人になったからと言ってその信任は無効にはならないし、そういう私を好きになったのだとしたら急に「傷ついた」なんて泣いたらどう思うだろう。

そう考えたら、何も言えない。

もう誰にも、こんなことは相談できない。

でも私が知る中でたった2人だけ、私を傷付けない人を知っている。その2人は、似ている。