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Radio Chidorian #06


始まりましたRadio Chidorian。
ただの音楽好きが、気に入った新譜を中心に紹介していこうという、押しつけ型マンスプレイニング風 “読む” ラジオ番組です。

SpotifyのMusic + Talk機能が使えなくなるということで、当番組は文字で音楽を紹介する形に変わりました。
今回は6曲ご紹介します。それでは、始めましょう!

M-1 『HIND'S HALL』 Macklemore

アメリカのラッパーMacklemoreが、5月7日にSNSに投稿する形で新曲を発表しました。
YouTubeにもアップされましたが、今回はXの投稿にリンクを張りました。因みに、ストリーミングで得られた収入は全てUNRWAに寄付するそうです。それではお聴きください。Macklemoreで『HIND'S HALL』。

曲は怒りに満ちた内容で、コロンビア大学などで抗議を続ける学生に連帯する意志を示し、イスラエルに加担するアメリカ政府や企業を批判しています。
タイトル『HIND'S HALL』の“HIND"は、ガザで亡くなった女の子の名前です。その辺りの経緯も含め、この曲の情報は翻訳家nofrillsさんの一連の投稿が参考になります。ぜひお読みください。

投稿でも紹介されている、SALAさんによる日本語字幕付きバージョンも貼っておきます。ふたつに分かれていますので上手い具合に観てください。

Macklemoreも言うように、学生たちの抗議行動を警察を入れて排除するよりも先にやることがあるのは明らかです。Ceasefire Now! Free Palestine!

付け加えておきますと、私は「音楽に政治を持ち込むな」なんていうのはナンセンスの極みだと思っていますよ。

M-2 『Ajala』 Ezra Collective

ということで、次の曲にいきましょう。
イギリスの新世代ジャズシーンの中核をなすバンド、Ezra Collectiveの新曲『Ajala』です。ライブバージョンでどうぞ。

Ezra Collectiveで『Ajala』。ライブバージョンでお聴きいただきました。
レコーディングバージョンより随分テンポが速いんですね。
タイトルの“Ajala”はナイジェリアのジャーナリストOlabisi Ajalaの名前から取られています。彼は、スクーターで世界87カ国を旅して廻ったことで知られていて、西アフリカ・ヨルバ語のスラングにもなったといいます。

Ezra CollectiveのドラマーFemi KoleosoのコメントがNME JAPANに載っていましたので引用します。

『アジャラ・トラベル』という言葉は落ち着いていられない人を意味するスラングなんだ。多くの人が僕のことをそう評する。でも、その言葉は僕にとっては素晴らしいドラム・ビートを表すものでもある。素晴らしい音楽がもたらすものなんだよ。落ち着いていられず、動いていたい僕を表す言葉だけれど、『アラジャ』はそうしたいろんな動きを意味しているんだ。

エズラ・コレクティヴ、ニュー・シングル“Ajala”の音源が公開(NME JAPAN)

現代の新世代UKジャズシーンの中核をなすミュージシャンの多くが、音楽教育NPOのTomorrow’s Warriorsと関わりがあるようです。Ezra Collectiveもここの卒業生で、Tomorrow’s Warriorsを知ることが彼らを理解する事に繋がるのですが、今日はここまでにしておきましょう。
今知りたい!という人はこちらの記事を参照してください。

「新世代UKジャズ」について絶対知っておくべき8つのポイント
  3. UK新世代ジャズの中心地「Tomorrow’s Warriors」https://rollingstonejapan.com/articles/detail/34906/4/1/1

ローリングストーン ジャパン

M-3 『Look at Us』 Addict Ameba

次は、イタリア・ミラノを拠点に活動する音楽集団Addict Amebaの最新アルバム『Caosmosi』から、1曲目に収録されている『Look at Us』です。

Addict Amebaは、2020年にファーストアルバムをリリースし、この『Caosmosi』が2枚目のアルバムになります。
『Look at Us』でフィーチャーされているJoshua Idehenは、イギリス出身ナイジェリア人のスポークンワード・アーティストです。

M-4 『Give & Take』 Rosie Frater-Taylor

4曲目は、Rosie Frater-Taylorの最新アルバム『Featherweight』から、1曲目に入っている『Give & Take』です。

Rosie Frater-Taylorは、2018年に19歳で自主制作でアルバムを発表したそうなので、生まれたのは1999年でしょうか。1998年という説もあります。
楽器は、父親がドラマーだった影響かドラムから始めてギターに転向し、英国王立音楽院などで音楽教育を受けます。やはりというか、彼女もEzra Collectiveと同じくTomorrow's Worriersでも学んでいます。
2018年にファーストアルバムをリリースし、今作『Featherweight』は3枚目のアルバムになります。
ジャズシーンのミュージシャンとして語られることの多い彼女ですが、その枠からはみ出している感じがしますね。
MVでもわかるように、彼女はギブソンレスポールを愛用しているんですね。これがかっこいい。「レスポールといえば」のギタリストJimmy Pageが彼女のことを「Such a connection with the guitar」と評したと紹介されています。

M-5 『Bored』 Laufey

以前もこの番組でクリスマスソングを紹介したことがあるアイスランド出身のアーティストLaufayが、この4月の終わりに『Bewitched: The Goddess Edition』というアルバムをリリースしました。これは昨年リリースされたアルバム『Bewitched』の「拡大版」という位置付けで、『Bewitched』はオリジナル曲にスタンダード曲を織り交ぜた構成になっていましたが、今回の「拡大版」は、更にオリジナル曲を4曲付け加えてあります。新曲だけでミニアルバムにしても良さそうですけどね。

Laufeyの作る曲は歌詞が秀逸で、彼女の等身大の想いがストレートに表現されていて、所謂Z世代と呼ばれる、彼女と同世代の女性たちに支持されるのがとても良くわかります。
例えばアルバムに入っている『Letter To My 13 Year Old Self』は、名前や容姿で差別され傷ついていた13歳の自分に宛てた手紙になっていて、成長した今あの日に戻ってあなたを抱きしめたい、そしてただ「あなたは美しい」と伝えたい、と優しく歌うのです。これにはおっさんの私も胸を打たれます。
今回お聴きいただく『Bored』という曲は、恋人といても全く楽しくない、この恋には飽きた、ああ退屈だ、という内容で、どれもスタンダードジャズのような美しい旋律に載せて歌われるので、英語を理解できないとまさかそんな内容とはつゆ知らず、といった事態になりますね。
まあこんな風に解説する私も日本語以外はサッパリなので、歌詞がわかればまた違う楽しみ方ができる、くらいに思うことにしましょう。

それでは、Laufeyの『Bored』を、ライブバージョンでお聴きください。

M-6 『Love Me Not』 Ravyn Lenae

今回ラストにご紹介するのは、Ravyn Lenaeの新曲です。
Ravyn Lenaeは1999年アメリカ・シカゴ生まれのシンガーソングライターです。偶然ですが、先ほど紹介したRosie Frater-TaylorやLaufeyとタメですね。
8月にリリースされる予定のセカンドアルバム『Bird’s Eye』から先行曲が公開されました。そのうちの1曲『Love Me Not』が一際耳を引く名曲です。

MVとは別のページ(https://youtu.be/7avJyVkxVA0?si=-qXW46RPV7j3Tvhw)の概要欄にあるこの曲のスタッフリストに、作者の1人としてAnderson Paakの名前が書いてあるのでビックリしたのですが、共作ということなのか、調べても情報がなくてわかりませんでした。

いずれにしてもとても良い曲です。今回はこの曲を聴きながらお別れしましょう。Ravyn Lenaeで『Love Me Not』です。

※今回ご紹介した曲を加えたRadio Chidorianのプレイリストです。
 Spotifyのみになりますが、よかったらお聴きください。


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