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【選挙ウォッチャー】 藤沢市長選2024・分析レポート。

 2月11日告示、2月18日投票で、藤沢市長選が行われました。
 実はこの選挙、地味にメチャクチャ面白いことになっており、ネタが尽きませんので、レポートする方も腕まくりをして、いつになく気合いが入っています。
 自民系の現職は壺(統一教会)、自民系の新人も壺(統一教会)、リベラルと見せかけて自称「ゴリゴリの保守」である新人はトランスヘイターでした。まともな人に投票したいと思ったら、まるで投票先がないという地獄味のある市長選となりました。

鈴木 恒夫 74 現 多選禁止条例を破って4選目を目指す壺
国松 誠  62 新 自民党を割って野心に燃える元県議の壺
相原 倫子 63 新 左右横断型市民派・トランスヘイター

 自民・公明・立憲などが推す現職、自民を割った元県議の新人ともに、過去に「統一教会」とのつながりが明るみになっており、統一教会と無関係の新人を選ぼうと思ったら「女性スペースを守る」と主張し、トランスジェンダー差別を繰り返していたオバサンしかいませんでした。
 あとで詳しく話しますが、「心が女だと言い張れば女湯に入れる」というのは、まったくのデマです。もちろん、心が女だと言い張って女子トイレに入ることもできません。LGBTに対する理解が促進されても、トランスヘイターの皆さんが心配しているようなことは起こらないので、このあたりの論点整理は必要だと思います。




■ 藤沢市長選・選挙ボード解説動画


■ トランスジェンダー差別と田中裕太郎

選挙を利用したトランスジェンダー差別を「人権侵害」として申し立てが行われた

 昨年4月の杉並区議選で、外国人や性的マイノリティーに対する差別発言を繰り返している田中裕太郎が、選挙公報にトランスジェンダーを差別するイラストを掲載したことが人権侵害であるとして、法務局や東京弁護士会などに申し立てが行われました。
 近年、選挙運動を利用したヘイトスピーチは横行しており、あくまで政治的な主張であるとして、悪質な差別発言を繰り返す人が目につくようになりました。田中裕太郎もその一人ですが、この人権侵害の申し立てが行われたその週の選挙でも、藤沢市長選や那珂市議選で「トランスヘイター」たちが立候補し、田中裕太郎と同様の主張がされていました。
 ネット上で語られる「心は女性だと言い張れば女湯に入れる」という言説がトランスジェンダーたちを苦しめているわけですが、こうした言説に乗っかることで票を獲得し、田中裕太郎は杉並区議になっています。どうすれば選挙を利用したヘイトを止められるのでしょうか。


■ 人権侵害だと申し立てが行われたイラスト

2023年4月の杉並区議選に立候補した際の田中裕太郎の選挙公報

 今回、問題として問われることになったのは、昨年4月の杉並区議選で田中裕太郎が採用した、このイラストです。目の焦点は合っておらず、鼻毛が出ていて、鼻と口の間に大きな空間を作ることで、ものすごくブサイクな仕上がりとなっています。このイラストに「悪意がない」と主張するのは少々難しいのではないでしょうか。
 この悪意を持って描かれたイラストで表現しているのは、「心は女性だと言い張れば、男でも女湯に入れる」というものです。
 しかし、この言説は「デマ」です。理由はシンプルで「いくら心は女性だと言い張っても、男は女湯に入れないから」です。
 言うまでもありませんが、男が女湯に入ったら、いかなる言い訳をしようが「逮捕される」です。駆け付けたおまわりさんに、いくら「心は女性なんです!」と叫んだところで、逮捕されないはずがありません。とても残念なお知らせですが、我々に女湯に入る術はないのです。
 実際、「心は女性だと言い張れば、男でも女湯に入れる」と主張している皆さんは、たびたび起こる「女だと言い張って男が女湯に入って逮捕された事件」を指して、「ほら! こういう事件が起こってる!」とおっしゃるのですが、「いや、逮捕されとるがな!」なのです。
 そもそも、トランスヘイターたちの言説には、大きな間違いがあって、このように女性たちに恐怖を与えてくる犯罪者予備軍というのは、「トランスジェンダー」ではなく、「女の裸が見たい変態の男」だということです。女性トイレに侵入してフガフガする奴も、女湯に入って湯船の中で静かに勃起する奴も、どいつもこいつも「トランスジェンダー」ではなく、「ただの変態の男」であって、女性たちが警戒するべきは「変態の男」なのです。
 そして、非常に重要なことは「トランスジェンダー=変態の男」ではないということです。男性に生まれながら、身体的な性と心の性のギャップに悩み、最終的に身体的な性を心の性に変える人たちに「女の裸を覗きたい」などという願望はありゃしません。これは僕に「男の裸を覗きたいか」と聞かれても、そこまで覗きたいとは思わないのと同じです。

明らかに悪意があるとしか思えない田中裕太郎が採用したイラスト

 不思議なことに、「トランスジェンダーから女性スペースを守ろう」と主張している人たちは、こぞって「ネトウヨ」です。しかも、誰よりも大きな声で主張している田中裕太郎に至っては「オジサン」です。
 女性たちが当事者の立場で恐怖を訴えるというなら、まだ話の辻褄が合いますが、今回は、どちらかと言えば「女の裸を見たい変態の男」に近しい立場にありながら、「女性たちはとても怖いんですよ!」と言い出しているわけですから、「どの立場から物を申しとんねん!」という話です。
 しかも、「トランスジェンダー差別」「外国人差別」はセットのようになっており、これまで外国人に対して差別をしてきた人たちが、新たな分野として手を出してきた差別が「トランスジェンダー」であるように見えてしまいます。
 トランスジェンダーは、かなりのマイノリティーです。身体的な性と心の性のギャップに悩まされながらも、そのまま身体的な性を受け入れるという人もいますので、「性別適合手術を受けて性別を変えるところまでする」という人は、さらに少なくなります。なので、トランスジェンダーを「女性たちを困らせる犯人」として扱っても、この冤罪で困る人の数はもともと多くありません。ただ、とても可哀想なのは、トランスジェンダーの人たちはそもそも「トランスジェンダーであることを知られたくない」と思っている人も少なくないため、声を上げにくいのです。声を上げにくいことをいいことにボコボコに差別するとのは「イジメ」の構造そのものです。とても許容できるものではありません。


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