【選挙ウォッチャー】 藤沢市長選2024・分析レポート。
2月11日告示、2月18日投票で、藤沢市長選が行われました。
実はこの選挙、地味にメチャクチャ面白いことになっており、ネタが尽きませんので、レポートする方も腕まくりをして、いつになく気合いが入っています。
自民系の現職は壺(統一教会)、自民系の新人も壺(統一教会)、リベラルと見せかけて自称「ゴリゴリの保守」である新人はトランスヘイターでした。まともな人に投票したいと思ったら、まるで投票先がないという地獄味のある市長選となりました。
自民・公明・立憲などが推す現職、自民を割った元県議の新人ともに、過去に「統一教会」とのつながりが明るみになっており、統一教会と無関係の新人を選ぼうと思ったら「女性スペースを守る」と主張し、トランスジェンダー差別を繰り返していたオバサンしかいませんでした。
あとで詳しく話しますが、「心が女だと言い張れば女湯に入れる」というのは、まったくのデマです。もちろん、心が女だと言い張って女子トイレに入ることもできません。LGBTに対する理解が促進されても、トランスヘイターの皆さんが心配しているようなことは起こらないので、このあたりの論点整理は必要だと思います。
■ 藤沢市長選・選挙ボード解説動画
■ トランスジェンダー差別と田中裕太郎
昨年4月の杉並区議選で、外国人や性的マイノリティーに対する差別発言を繰り返している田中裕太郎が、選挙公報にトランスジェンダーを差別するイラストを掲載したことが人権侵害であるとして、法務局や東京弁護士会などに申し立てが行われました。
近年、選挙運動を利用したヘイトスピーチは横行しており、あくまで政治的な主張であるとして、悪質な差別発言を繰り返す人が目につくようになりました。田中裕太郎もその一人ですが、この人権侵害の申し立てが行われたその週の選挙でも、藤沢市長選や那珂市議選で「トランスヘイター」たちが立候補し、田中裕太郎と同様の主張がされていました。
ネット上で語られる「心は女性だと言い張れば女湯に入れる」という言説がトランスジェンダーたちを苦しめているわけですが、こうした言説に乗っかることで票を獲得し、田中裕太郎は杉並区議になっています。どうすれば選挙を利用したヘイトを止められるのでしょうか。
■ 人権侵害だと申し立てが行われたイラスト
今回、問題として問われることになったのは、昨年4月の杉並区議選で田中裕太郎が採用した、このイラストです。目の焦点は合っておらず、鼻毛が出ていて、鼻と口の間に大きな空間を作ることで、ものすごくブサイクな仕上がりとなっています。このイラストに「悪意がない」と主張するのは少々難しいのではないでしょうか。
この悪意を持って描かれたイラストで表現しているのは、「心は女性だと言い張れば、男でも女湯に入れる」というものです。
しかし、この言説は「デマ」です。理由はシンプルで「いくら心は女性だと言い張っても、男は女湯に入れないから」です。
言うまでもありませんが、男が女湯に入ったら、いかなる言い訳をしようが「逮捕される」です。駆け付けたおまわりさんに、いくら「心は女性なんです!」と叫んだところで、逮捕されないはずがありません。とても残念なお知らせですが、我々に女湯に入る術はないのです。
実際、「心は女性だと言い張れば、男でも女湯に入れる」と主張している皆さんは、たびたび起こる「女だと言い張って男が女湯に入って逮捕された事件」を指して、「ほら! こういう事件が起こってる!」とおっしゃるのですが、「いや、逮捕されとるがな!」なのです。
そもそも、トランスヘイターたちの言説には、大きな間違いがあって、このように女性たちに恐怖を与えてくる犯罪者予備軍というのは、「トランスジェンダー」ではなく、「女の裸が見たい変態の男」だということです。女性トイレに侵入してフガフガする奴も、女湯に入って湯船の中で静かに勃起する奴も、どいつもこいつも「トランスジェンダー」ではなく、「ただの変態の男」であって、女性たちが警戒するべきは「変態の男」なのです。
そして、非常に重要なことは「トランスジェンダー=変態の男」ではないということです。男性に生まれながら、身体的な性と心の性のギャップに悩み、最終的に身体的な性を心の性に変える人たちに「女の裸を覗きたい」などという願望はありゃしません。これは僕に「男の裸を覗きたいか」と聞かれても、そこまで覗きたいとは思わないのと同じです。
不思議なことに、「トランスジェンダーから女性スペースを守ろう」と主張している人たちは、こぞって「ネトウヨ」です。しかも、誰よりも大きな声で主張している田中裕太郎に至っては「オジサン」です。
女性たちが当事者の立場で恐怖を訴えるというなら、まだ話の辻褄が合いますが、今回は、どちらかと言えば「女の裸を見たい変態の男」に近しい立場にありながら、「女性たちはとても怖いんですよ!」と言い出しているわけですから、「どの立場から物を申しとんねん!」という話です。
しかも、「トランスジェンダー差別」と「外国人差別」はセットのようになっており、これまで外国人に対して差別をしてきた人たちが、新たな分野として手を出してきた差別が「トランスジェンダー」であるように見えてしまいます。
トランスジェンダーは、かなりのマイノリティーです。身体的な性と心の性のギャップに悩まされながらも、そのまま身体的な性を受け入れるという人もいますので、「性別適合手術を受けて性別を変えるところまでする」という人は、さらに少なくなります。なので、トランスジェンダーを「女性たちを困らせる犯人」として扱っても、この冤罪で困る人の数はもともと多くありません。ただ、とても可哀想なのは、トランスジェンダーの人たちはそもそも「トランスジェンダーであることを知られたくない」と思っている人も少なくないため、声を上げにくいのです。声を上げにくいことをいいことにボコボコに差別するとのは「イジメ」の構造そのものです。とても許容できるものではありません。
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