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どうして3軍を作らないの?

2019年の日本プロ野球は福岡ソフトバンクと読売の日本シリーズでほぼ全てのスケジュールを終えた。

フェニックス・リーグや秋季キャンプ、プレミア12の代表戦、ウインターリーグなどの日程が残るものの、いよいよシーズンオフ、ストーブリーグの到来である。

各チームのファンにとっては来季に向けて戦力補強などのニュースを楽しみに過ごす日々である。

ところでドラフト会議前に埼玉西武が来季から「3軍制」を導入するというニュースが報じられた。

リーグ2連覇した西武が、若手選手の育成強化を目的に来季から「3軍制」を導入することが14日、分かった。専属の3軍コーチを置き、17日のドラフト会議でも多くの育成選手を指名する予定だ。

ところが実際にドラフト会議で埼玉西武が指名した育成選手はたった1人であった。

報道が独り歩きしてしまった感は否めないが、実際には「3軍は対外試合を行わない」という方針が発表された。

奇しくも3軍制を導入している福岡ソフトバンクと読売が日本シリーズに出場しただけに、「どうして3軍を作らないの?」と歯噛みしている他球団ファンも多いことだろう。

まず福岡ソフトバンクや読売が導入している「3軍制」とはどのようなものか簡単に説明しよう。

日本プロ野球には1軍と2軍(ファーム)が12球団とも存在し、3月からそれぞれリーグ公式戦を開催している。

1軍はセントラル・リーグとパシフィック・リーグで、それぞれ6球団ずつ所属していることはご存じだろう。

ところが2軍のイースタン・リーグは7球団(北海道日本ハム、東北楽天、埼玉西武、読売、東京ヤクルト、千葉ロッテ、横浜DeNA)、ウエスタン・リーグは5球団(中日、オリックス、阪神、広島、福岡ソフトバンク)と奇数で構成されている。

奇数では試合を組めないチームが発生してしまい、効率よく試合を消化できないというデメリットが避けられない。

この状況は大阪近鉄が球団合併で消滅し、東北楽天が新規参入した2005年シーズンから15年間続いている。

一方で2005年オフから育成選手ドラフトが始まり各球団の選手数は増えているため、選手としては試合に出る機会がますます減ることになる。

そこで空き日程を埋めるために社会人チームや独立リーグのチームとの練習試合を開催し、若手選手の試合機会を増やそうと努力している球団が増えている。

球団によっては空き日程を埋めるだけではなく、2軍を公式戦遠征組と居残り組に分けて同じ日に2試合組むこともある。

現に3軍の存在しないオリックスだが、同じ日に2軍の公式戦と非公式戦を開催したことが今季2度ある。(もう1日予定していたが、公式戦は雨天中止となった)

福岡ソフトバンクと読売はファームチームを2つ作り、2軍公式戦とは別に独自に非公式戦を開催するために「3軍制」を敷いている。

広島や来季からの埼玉西武が目指している「3軍制」はこれとは目的が異なり、対外試合は行わずリハビリ目的や若手選手のトレーニングのために存在している。

それではどうして他球団は3軍を作らないのか?

それは3軍の試合を消化できるだけの投手が不足しているからだ。

若手選手の出場機会を増やすために対外試合数を増やそうにも、試合数を増やすこと=登板数も増えるということを忘れてはいけない。

投手は登板数が増えるだけ疲労や負担は大きくなるし、投球数が肩や肘などの故障にも影響すると言われるだけに、試合数に見合った人数の投手がいなければ3軍は成り立たない。

つまり若手野手を育成するために試合数を増やそうと思っても、投手もそれなりに人数が必要になるわけだ。

2019年に各球団が実施した試合数と投手人数を調べてみた。

1人あたり投球回

ここでは1軍公式戦とファーム公式戦、そしてファーム非公式戦をカウントしている。

ファーム非公式戦は3~10月までで計算し、春季教育リーグや秋季教育リーグ(フェニックス・リーグ)は含んでいない。

3月からにしたのは、2月は春季キャンプで各球団とも対外試合を実施しているが、記録を調べることが困難な球団があるため含めないことにしたためだ。

なお横浜DeNAのみファーム非公式戦の試合結果がウェブサイトから見つけられなかったため「不明」とした。(何試合か実施されていたようなので、ご存じの方は教えてほしい)

投球回の計算は概算であり、試合数×9回で計算している。

投手人数もトレードや途中入団・退団も同じ1人と計算している。

さてこうして見ると、「3軍制」を敷いている福岡ソフトバンクと読売の投手人数、試合数ともに多いことが一目瞭然だ。

気になるところでは、東北楽天には福岡ソフトバンクとほぼ同じ45人もの投手がいたにも関わらず、試合数では平均以下だった点である。

実は東北楽天は2017年に50試合ほど育成試合を開催するなど、「3軍制」を実質的に敷いていた球団である。

読売も一度「3軍制」をやめたことがあり、継続するには予算面や費用対効果の問題があると思われる。

オリックスは2019年ドラフトで育成選手を8人も指名し、「3軍制」を敷くのではとも噂された。

しかし来季の投手人数が大幅に増えることは考えられず、現状では40人ほどの見込みである。(今季は39人)

中堅ベテラン選手を戦力外にして高卒を多く獲得していることと、黒木と山崎颯の2人がトミージョン手術明けのため、今年以上の投球回を消費することが難しいだろう。

ただ施設的には「3軍制」を敷く準備が整いつつあるので、そう遠くないうちに始動させることも夢ではないと思われる。

再来年に期待したい。

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