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あの子達が今日も幸せでありますように。

重い話なので、心が疲れている方は読まない方がいいかもしれません。また今度お会いしましょうね。












この時期になると、ラルチザンパフュームのシャッセオパピヨンという香水を使いたくなります。
邦題は「ちょうちょを捕まえて」。原題を直訳すると「蝶狩り」だそうです。怖い。邦題のセンスがすごい。チュベローズがお色気むんむんじゃなくて清楚に出てるのが大好き。春の陽だまりの中、花畑にいるような香りです。赤毛のアンと春のプリンスエドワード島みがあって、10代の女の子から香ってきたらそれだけで恋に落ちそう。
最初サブスクサービスで試してかなり気に入ったけど、自分が香水に求めている像には少しそぐわない気がしていました。ちょっと香りが若すぎる、あと10年早く出会いたかったなぁ…なんて。

そんな香りをボトル買いしたのは今から2年ほど前のこと。初めての体外受精で妊娠したのもつかの間、流産してしまった後のことでした。
当時は何故か自信まんまんに「体外受精をすれば妊娠する」と信じていました。そのために生活習慣や食習慣を変え、自分に足りない栄養素を勉強してサプリで補い、ヨガや鍼灸で体を整え、etc。自分にできることは全てやったつもりです。その甲斐あって一回で妊娠でき、胎嚢も確認できました。
先生も順調だ、このホルモン値で当時の私の年齢なら80%以上は出産に至ると仰ってくださり、自分がその80%に入ると疑いませんでした。初めての悪阻に耐えながらずっと夫と二人でお腹に話しかけてた。責任もってこの子を育てなきゃ。怖いな。でも夫と二人で頑張るから安心して大きくなってね、早く会いたいな。そんなことを思っていました。
だから次の診察で、内診がやたら長くても「どうしたのかな?」としか思ってなかったし、先生に「胎嚢が大きくなってない。心拍が確認できないから流産の可能性が高い。1週間様子を見て、心拍が見えなければ手術を考えましょう」と言われてもいきなりすぎて何も言えませんでした。ただ「あぁ、人生そんなうまくいくはずなかったんだ…」と思っただけ。
ショックは時間差でやってきて、病院の中でも帰り道でもずっと涙が止まらず。流産が確定した時も、手術が終わるまでは何もしなくても涙がでてくるような日々でした。手術が終わってからは何も考えないようにして逆にぱったり泣かなくなった。それはそれでやばかったと今なら思います。
そんな中でも同僚のお子さんが風邪をひいたら彼女のフォローをするのは自分。私は不妊治療中も他人の子を見たからといって特に苦しくなったりはしないタイプの人間でしたが、さすがに流産直後の身にはかなり堪えました。この頃は本気で休職を考えてたな~。

この香りはそんな一番苦しい時期に購入した私にとっては鎮魂歌の香りなのです。お線香みたいなものでしょうか。
流産手術後の診察をした日、治療が再開できるまでのお休み期間に自己流タイミングをとってもいいのか一応確認した時のことでした。「いいけど体外受精での妊娠だったんですよね…?」と医師に聞かれて涙腺崩壊したのです(不妊治療していた病院と流産手術をした病院は別でした)。確かに今更自然妊娠する確率は低いけど、その聞き方はどうなんだ。年齢的に一か月も無駄にしたくないのに、ダメ元でチャレンジすることすら暗に否定しなくたっていいじゃないか。その時に病院の待合室で泣きながら「シャッセオパピヨンを買わなきゃ」と思ってその足で買いに行きました。
私の気持ちが少しでも明るくなるように。そして、いってしまった子があの世で幸せにしていてほしいと願って買った香りなのでした。きっと天国にはこんな香りのする花畑があったらいいな。今もきっと幸せにしているはず。そうであってほしいと今でも変わらず、心から祈っています。

妊娠中は香水をお休みしていたので遠ざかっていましたが、久しぶりにこの香りをつけたらいろいろ蘇ってきたので書いてみました。今はお空にいってしまった子も、受精卵のまま着床できなかった子もこんな香りのお花畑で遊んでいてほしい。勿論無事に生まれてきてくれた子も、みんなみんな幸せになってほしい。
私がつけると春は陽だまりのお花畑、秋は落ち着いた色気のある女性みが出て好きです。なりたい像的には秋の香り方の方が好きですね。あまり持続しないでふっと消えてしまう儚さも込みで愛してます。

香水は5本までと決めているので使い終わったらリピートするのかは決めていません。なんとなくリピートはしない気もします。きっとこの香りがなくてもあの子達が幸せだと素直に思えた時が卒業のタイミングなのかな、と思ったりしています。

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