ラストディフェンダー・続章クリア100人(推定)突破記念記事3

我流ゲームデザイン考:1

とりあえず北国狩人物語やラストディフェンダーを作る上で心がけていたことについてまとめてみました。
最初から気を付けて作っていたところもあれば、作っている最中に気づきを得て心がけるようにしたところもあります。
分かりやすくシステム編とシナリオ編でスッキリ分けようと思ったんですけど、自分の場合はシステムを優先しつつもシナリオを行ったり来たりしながら作っていたので剥がせず、分けようと苦心するのも阿保らしいので特に分けた構成になっていないです。

また、こういった創作論は自分の思考を一般化して他の人にも応用できるような形になるのが理想だと思ったんですが、自分の場合は自分が今までに楽しんだゲームやら何やらの、こういう所が面白いな~と感じた部分を逆算して抽象して作品に適用しているに過ぎません。ですのでゲームデザインの技術を科学的にしっかり学んだ人からすれば既知のことだったり、そんな風に考えるのはお前だけだよ、みたいに映るかもしれません。
また、所詮ツクールのデフォルト機能メインで作れるようなRPGしか作った事の無い身なので、UIやら基本システムからキャラ絵まで全部自作でやってやるぜ、という志を持つ創作ガチ勢の方にも合わないかもしれません。
……とまあ、色々と前置きが長くなりましたが、以下本文になります。


【シチュエーションを起点としてシステムとシナリオを設計する】

自分は、RPG作りで一番の土台になるものを『シチュエーション』と考えています。当時steamのインディーゲームを好んでいたというのもあるんですが、自分が好んだそれらのゲームは大体一部のシチュエーションに特化した作りになっていたものが多かったように感じたからです。
シチュエーションとは言ってみれば、プレイヤーにどのような境遇をロールプレイさせるゲームなのかということです。
特にダンジョン探索系はダンジョンに潜るというシチュエーションを軸にしてゲームとしてのサイクルを成立させていたりします。

自作RPGである北国狩人物語であれば『狩人の主人公が病弱な妹の診療代を稼ぎながら狩りを行うシチュエーションを体験する』。
ラストディフェンダーであれば『軍人の主人公が、単身で大切なものを守るシチュエーションを体験する』といった感じです。(ついでに続章ならば魔物がうろつく廃墟をコソコソじっくりと探索するシチュエーションを体験する)
自分の考えるシチュエーションという言葉と、おそらく類似の概念としてコンセプトというものがありますが、コンセプトという言葉は具体性が乏しいため好きではないです。なのでコンセプトという言葉は脳内で『プレイする人間をどのようなシチュエーションで楽しませるか』という、次の設計に繋がりやすい言葉に置き換えることにしています。
というか、そうしないと取っ掛かりがなさ過ぎて何も考えられなくなるのでそうしました。
自分自身、やりたいシチュエーションを定めることで得られた一番のメリットは、思考の判断基準が確立出来たことでした。ゲーム作成中は追加したい要素や削らなければならない要素がポンポン出てくるものですが、その際に土台となるシチュエーションと照らし合わせて、要る要らないの選別がしやすくなって迷うことが少なくなったように思います。


【主人公は独り】

これは完全に自分の好みの問題なのですが、プレイヤーが操作するキャラはなるべく一人(主人公のみ)にしようと思いました。
以前から疑問に感じていたのですが、パーティ制のRPGで主人公以外のキャラクターを操作するときってプレイヤーはどのような心持ちであるべきなんでしょうか。プレイヤーが主人公を操作するのは分かります。主人公の役割をプレイヤーが演じる、或いは操作するのがRPG(諸説あり)ですから。
プレイヤーが主人公以外を操作するとき、そこにプレイヤーの意識の乖離が生じ、ゲーム操作への没頭を妨げてしまうのではないか……というのがの自論です。なので自分が作るゲームでは主人公は基本一人で戦わせます。
ただ、北国にはチェルノが居るしラストディフェンダーには防衛戦で兵士を操作できるじゃん、とお思いでしょうが、北国でチェルノの行動をプレイヤーが操作できるのは、プレイヤーが操作しているルスランが指示を出しているからで、同様にラストディフェンダーで、静や防衛戦での兵士たちをプレイヤーが操作できるのは、プレイヤーが操作している近衛が指示を出しているからです。
そんなことはいちいちゲーム中に説明しませんが、メタ的には説明がつくようにしています。

この『主人公が独り』というのは、シナリオの考え方や展開にも影響してきます。
ちょっと話はズレますが、フィクションでは主人公の物語を追体験するものであるべき、という思想の為か自分は群像劇を忌避する傾向があります。あまりキャラクターがごちゃごちゃと多く出て、途中で人気が出たキャラにスポットを当てて話数を消費されるのがとても嫌いです。そんなもんより物語上の特異点とも云うべき主人公の物語を掘り下げて欲しい。
ただ、ワールドトリガーとか銀河英雄伝説とかその他の戦記物とかもモロに群像劇なのに好きだったりするので、嫌いなのは主人公を基点として始まった上で或る程度進んだ結果、路線変更した群像劇系の作品ということになるんですかね。具体名は特に思いつきませんが……。

そして、この主人公独り理論は、実はシナリオを考える上で非常に効率に優れています。
システム的にもパーティバトルのような複雑な設計は要りませんし、シナリオ的には仲間の要素を展開に入れ込む必要もなくスッキリさせることが出来るので、初めてRPGを作る人は主人公独りで作ってみるのがいいかもしれません。

ただし、こんなことを書いてますが自分が次に作るものはパーティバトル前提にするつもりだったりします。
パーティバトルにはパーティバトルでしか出来ない楽しみ方があるので……

【主人公は男】
これも自分の好みです。
男の背中、男に襲い掛かる過酷な宿命、宿命を達成し、男は旅立つ……
これらが北国狩人物語でもラストディフェンダーでも同じく自分のやりたかったことのすべてです。
とはいいつつ、次の奴は男女で主人公選択できるようにしたいとか思ってますが


【上手いプレイをしたときのプレイヤーに与える利益をしっかりと定める】

ゲームの面白さはケースバイケースで多岐に渡りますが、一番分かりやすいのは上手いプレイをしたときにプレイヤーが利益(快感)をゲットすることなのかな~と思います。
北国狩人物語とラストディフェンダーでの上手いプレイとは両者共通で『こちらへの被害を抑えつつ短いターンで戦闘を終わらせること』です。北国では短いターンで勝利することで探索力の減少を抑え、より多くの獲物を得ることが可能になり貨幣を多く得て、結果としてソーニャを生き永らえさせることに繋がりバッドエンドを回避できるという利益を得られます。
ラストディフェンダーでは短いターンで勝利することでHPの低下を抑え、より突破戦のゲージを高めることが可能になりシナリオを進行できるという利益に繋がります。
両者とも上手いプレイ=短いターンでの勝利を収める為にはキャラの成長(能力値の上昇)、敵への対処の習熟が必要であり、それはゲームのサイクルの中でプレイヤーが得ていくものとなっています。こうすることで徐々に壁を乗り越える快感を得られる構造にするようには意識しました。ちなみにラストディフェンダー続章の上手いプレイは上記の短いターンで勝利することに加えて、『敵を1体ずつおびき寄せて倒す』こととしました。そうすることで探索の継続力を確保して先へ進めるという利益が発生するようになっています。
そして、これらの面白さは大体のゲームで無意識に備わるものだと思いますが、意識して設計することで面白さの精度というか威力に差を付けることができるかもしれません。

【成長は分かりやすく】

RPGはキャラクターの成長が付き物で、数値の成長それ自体がプレイヤーにとって嬉しいごほうびにもなります。
しかし、その能力上昇の結果をプレイヤーが分かりやすく実感できることがより重要と思います。
例えば攻撃力が5上がったとして、それは如何ほどのものなのか?
とりあえず数値が+5されるので嬉しいことは間違いないのですが、それによって敵へのダメージはどれほど増えるのでしょう。
ツクールデフォルトのダメージ計算式であるa.atk * 4 - b.def * 2が適用されている状態で、例えばHPが100、防御力が10の敵が居たとします。主人公の攻撃力が初期値10だと20ダメージ/1ターンで、倒すのに5ターンかかります。
ここで攻撃力が5増えるとダメージが単純に20増えて2倍になると40ダメージ/1ターンで、なんと3ターンで倒すことが出来るようになります。
攻撃力が5上昇するということは、倒すのに今まで5ターンかかっていた敵が3ターン倒せるようになるという意味合いを持ち、非常に重要な要素になります。このような設計であればプレイヤーは能力値の成長を実感できて、より成長を価値あるものとして楽しめるようになるでしょう。
逆に計算式次第では攻撃力が100増えてもダメージが微増程度で撃破ターン数に影響しないとなると、プレイヤーは成長に対してあまり価値を感じずに、結果として楽しさが減少してしまうものと思われます。これを最初の方にやってしまうと結構致命的かもしれません。ただ、ツクールデフォルトの計算式は能力値の成長によるダメージの増減が極端すぎて、短編以外のRPGでそのまま使うのはあまりオススメはしませんが……。

自分の場合は初期値の攻撃力だと最初の敵を1体葬るのに3ターン必要として、一回攻撃力が成長したら2~3ターンで倒せるようにすることで成長の楽しみを担保しています。
ちなみにラストディフェンダーの基本的なダメージ計算はa.atk * 20 / (10 + b.def / 1 )でやってました。
意図としては攻撃力上昇による変化の恩恵が大きくしたく、かといって防御力も無駄にならずにそこそこ機能する塩梅を目指した感じです。もっと攻略の自由度の高いゲームだとちょっと攻撃力優性で制御不能に陥りがちですが、このゲームはシナリオ一本道ゲームなので、物語の進行に合わせたインフレが操作しやすいので可としました。

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