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名前を呼ぶことの効果

ここ数ヶ月、運転免許を取るために教習所に通っています。
比較的パーソナルスペースが広めの私は、はじめ初対面の相手と狭い車の中で2人きりになるのが若干ストレスでした。
ここ数週間はあまり気にならなくなってきたので、気づきを記録に残してみます。

左右盲に運転はハードモード

ところで私は極度の左右盲です。左と右という概念への理解はありますが、センスが圧倒的に欠けています。
例えば「右折」と言われた時に、「う、は、みぎ」→「右は運転席がある方」→「右に曲がる!」とタイムラグが発生します。ハンドル操作をするにも、「右に曲がりたい時はどっちに回す?」→「右はお箸もつ方だから、こっち」と、「右折だからハンドルを右に回そう」という訳にはいかないのです。
当然マリオカートはガンガンぶつかりながら進むので、最高スピードよりも加速重視でキャラクターや車種を選択します。

そんな私はもちろん技能講習が苦手です。一コマめの指導教官の方が声を荒らげるタイプの方だったこともあり、はじめのうちは緊張しすぎて、50分の講習が終わる頃には首と肩がガチガチに固まっていました。
(声を荒らげるほど私の運転が酷かったんでしょうね……)

楽しく乗れた無線講習

ミスに次ぐミス。そのミスがまたミスを呼ぶ。運転に対して苦手意識を植え付けられた私は「無線講習」という第1関門に差し掛かりました。
通常、技能講習では助手席に指導教官の方が座り、危ない時にブレーキやハンドル操作を補助してくれます。しかし無線講習は指導教官の同乗無しに1人で決まったコースを走ります。私は(ぶつかったりして車を壊したらどうしよう)と震えていました。

 夕暮れ時のゲリラ豪雨の中、恐る恐る走り出した無線講習、途中2、3度のアドバイスはあったものの、総評としては「素晴らしかったです!」の一言で無事にクリアしました。

わたし、運転できたんです。

克服すべきは助手席の指導教官

元来ひとの顔色を伺いすぎるケのある私は、隣に座っている指導教官の方々に必要以上に萎縮し、周りが見えなくなっていたようです。
多少なりとも自信はついたものの、これから始まる路上講習ではどうか?助手席に爆弾(言葉のあやです)を抱えながら、冷静な運転はできるのか?

一通りの運転操作を身につけた私は、「先生が怖い」の克服を試みました。

ここでようやくタイトルに戻ります。
かの有名な「ネームコーリング効果」とは少し違うのかもしれませんが、相手の名前を呼ぶこと、これが絶大だったのです。

「おはようございます、ままちです。
    〇〇先生、今日はよろしくお願いします。」

はじまりにこの挨拶をするだけで、講習中のやり取りが大きく変わりました。

「〇〇先生に教えていただくのは2度目ですね!」
「〇〇先生、ありがとうございました。」
など、意識的に名前を呼ぶようにしたのです。

指導教官と生徒の関係から、個人と個人の関係に

なんだかいやらしい見出しですが、そういう事ではありません。

「よろしくお願いします。」
シンプルなその言葉から始まる講習は、指導教官Aと生徒Bによるです。
双方の関心事は「運転技能の向上」のみです。教官の仕事はミスを指摘すること、生徒の仕事はそのミスを克服すること。生徒の運転技術が拙い場合、自ずと雰囲気は悪化します。

一方で名乗り、名前を呼んでからはじめた講習は、〇〇先生と私個人との講習です。
「どうして免許を取ろうと思ったの?」
「へぇ、お子さん居るの!仕事もしてるの!」
自己開示がしやすくなるため、「実は〇〇が苦手で……」など悩みごとも相談しやすくなります。

講習が2度め、3度めになるとお互い顔と名前を覚えてくるので、よりリラックスして話しやすくなりました。

授業が面白い先生も名前呼びをやっていた

教習所には教室で集団授業を受ける、学科講習もあります。
10年ぶりに受ける集団授業、仕事の合間に受けていることもあって、つい緊張の糸がほぐれて眠くなってしまうことも。
その中でも特に集中して聞ける授業がいくつかありました。
それらの授業では共通して、教員が生徒の名前を呼んで指名していました。(教習原簿という名簿のようなものに、顔写真が貼ってある)

名前を呼ばれると、自然とその相手の名前も知りたくなります。1度名前を認識した相手は、「指導教官」から「〇〇先生」にラベルが変わります。
廊下ですれ違ったら笑顔で会釈をするようになりますし、技能講習で名前を見つけたら嬉しくなります。

物にも名前を付けると、愛おしくなりますよね。それも感覚としては近しいかもしれません。
相手の名前を口にすることは、音以上の意味があるような気がします。

名前はコミュニケーションの第1歩

私の好きな漫画『トリリオンゲーム』の中で、登場人物が「挨拶は10円の投資」という話をしていました。
あまりよく知らない相手に挨拶をして、無視をされたらショックは受けますが、それは10円程度の損失。
10円の挨拶から始めて、100円の雑談、1000円の会話と少しずつベットを増やしていけばよいのです。

わたしにとっては「相手の名前を呼ぶこと」が、その第1歩だったのかなと思いました。
世間一般でいう「ネームコーリング効果」とは少し違う気がしますが、私にとってのネームをコーリングした結果についての気づきでした。

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