〔鶴見線探訪〕A girl... 〔田辺新田可動橋〕
幻の可動橋
▶鶴見線の武蔵白石~浜川崎間に可動橋があるのをご存知だろうか。
▶正確には鶴見線本線ではなく川崎貨物駅方面につながる高架の連絡線上になる。
▶「田辺新田可動橋」。富士電機株式会社川崎工場の出入口に架かっている、現役の昇開橋である。
▶武蔵白石方面へ下りてくる高架橋がちょうど富士電機川崎工場の出入り口にかかってしまい車両通行の支障となるため、このような昇開橋が設置されたと考えられる。
▶使用されるのは、川崎工場で製造された製品を船舶により出荷するため白石地区に輸送する時であるという。
▶以下は本橋梁のスペックである。
田辺新田と富士電機
▶「田辺新田」は武蔵国橘樹郡小田村の名主・田辺佐五右衛門により天保年間に開発された海浜新田に由来する*。
* 「かわさき区の宝物シート」より
▶1923年(大12)に富士電機製造株式会社が取得、1925年(大14)に川崎工場が完成した。
高架線について
▶田辺新田可動橋が属する高架線は、塩浜操(川崎貨物ターミナル)から浜川崎駅ヤードの上空をスルーし、武蔵白石付近で本線に合流、安善駅へ到達する貨物別線である。
▶田辺新田可動橋は前掲資料によると1972年(昭47)9月竣工。上の写真にある竹の下架道橋は1971年(昭46)1月に完成している*。
* 現地空頭標より
▶線路自体の供用は1975年(昭50)2月*¹。1975年3月改正の時刻表に上下10往復の記載がある*²とのことである。
*¹ 日本国有鉄道施設局『鉄道線路開業一覧表』より
*² 懐かしい駅の風景~線路配線図とともに<http://senrohaisenzu.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-eb8c.html>
高架線の敷設のわけは
▶今後基幹ヤードとして発展が見込まれる塩浜操から対鶴見線方面の輸送について、既に取扱う貨車の容量が限界に達していた浜川崎駅を経由しないルートを確保するためである。
昇開橋のゆくえ
▶現在は廃線状態(1986年ごろからと見られる)であるこの高架連絡線だが、今後活用される可能性がある。
▶東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(答申)に東海道貨物支線貨客併用化の計画が記載されている。
▶いつか昇開橋を車窓から眺める日が来るのかもしれない。
参考資料
・「人もモノも運ぶ新しい鉄道に夢を乗せて -東海道貨物支線の貨客併用化を検討しています」東海道貨物支線貨客併用化整備検討協議会https://www.pref.kanagawa.jp/documents/11285/panhulet202404.pdf
・かわさき区の宝物シート宝物 No. 23-4田辺新田https://www.city.kawasaki.jp/kawasaki/cmsfiles/contents/0000025/25729/23-4.pdf
・東京圏における今後の都市鉄道のあり方についてhttps://www.mlit.go.jp/common/001138591.pdf
・「浜川崎の高架橋」懐かしい駅の風景~線路配線図とともに
http://senrohaisenzu.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-eb8c.html
・「東海道線鶴見・塩浜操間線増工事誌」1976日本国有鉄道東京第二工事局
・「鉄道線路開業一覧表 昭和57年3月現在」1982日本鉄道施設協会
・「企業の歴史と産業遺産⑧-富士電機システムズ」小形 秀夫(富士電機システムズ川崎工場総務部長)
・『可動橋一覧と近代橋梁の利活用』―「土木史研究」第22号/2002年5月
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