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金の砂、銀の雨~齋藤芳生のエッセイ~

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齋藤芳生がこれまであちこちに発表したエッセイをまとめています。
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#現代短歌

いちめんにみどり

 アラブ首長国連邦の公立小学校で日本語教師として働いていた頃、「日本」という国を紹介する…

齋藤芳生
8か月前
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つるばみいろの思い出

 どんぐり、と一口に言ってもその大きさや色、形は様々だが、子どもの頃の私が特に好きだった…

齋藤芳生
8か月前
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「宣戦布告」の思い出~私の短歌公募館~

 さて、あれこれ慌ただしかったのがちょっと落ち着いたので、また季節を逃さないうちにアップ…

齋藤芳生
8か月前
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花の落ちる音

 今年の夏(註:2017年)は、いつまでもいつまでも降り続く雨が止むのを待ちわびている間に終…

齋藤芳生
11か月前
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夏の友だち

 高校を卒業してから、生まれ育った福島市を数年間離れては戻り、ということを何度か繰り返し…

齋藤芳生
11か月前
2

桃のにおい

 この歌をつくってからちょうど1年になる(註:2018年8月)。  昨年は今年の猛暑など想像もで…

齋藤芳生
11か月前
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さみどりの合歓

 2007年8月から2010年6月までの3年間、私はアラブ首長国連邦の首都であるアブダビという街で働いていた。日本語教師として、現地の公立小学校に通うアラブ人の子どもたちに日本語を教える仕事である。アブダビ政府と取引のある日本の石油会社が募集していた仕事だった。  外国で暮らしてみたい、という漠然とした思いはあったけれど、「アラビア」に対してそれほど関心があったわけではない。正直に言ってしまえば、アブダビという街がどこにあるのかも心もとなかった。当然アラビア語もわからないし

かなしみは自然にあらずー窪田空穂ー

こんにちは!齋藤です。 久しぶりにnote更新です。今回は、ちょうど一年前に書いた窪田空穂に…

齋藤芳生
1年前
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雪という友人~あたたかく、なつかしく~

来ましたね、冬。 今年は12月に入ってもまだあたたかいな、と思っていたら、いきなりの氷点下…

齋藤芳生
2年前
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その岸辺に佇つ

 このnoteでは大変お久しぶりです。齋藤です。  さて本日、Radiotalkの「たんか趣房~酒と短…

齋藤芳生
2年前
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杉の木に降る雪

 樹齢五〇〇年とも言われている「大杉」は、自宅から歩いてすぐの神社の境内にある。「ある」…

齋藤芳生
3年前
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鬼に逢いに行く

小鬼のような猫が一匹飛び込んであかあかと芒野原の日暮れ       『花の渦』  新年を…

齋藤芳生
3年前
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ぎんなんのにおい

公孫樹の木に抱かるる広場ぎんなんの臭いのを笑いながら別れき     『桃花水を待つ』  …

齋藤芳生
3年前
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不機嫌な秋の終わり

 私が齋藤茂吉という歌人を知ったのは、中学生のとき。国語の授業で、このあまりにも有名な二首を題材とした授業を受けた時である。ここまではよくある話だと思うのだが、この「授業」は「よくある」それとはかけ離れていた、と今でも思う。それは、実に数時間に渡って、この二首について徹底して考える授業だった。そのために、友人たちといっしょに齋藤茂吉の生涯やその仕事について調べたし、「死にたまふ母」の一連も読んだ。もちろん、難しくてちんぷんかんぷんな歌がほとんどだったし、齋藤茂吉の仕事が近現代