マガジンのカバー画像

金の砂、銀の雨~齋藤芳生のエッセイ~

32
齋藤芳生がこれまであちこちに発表したエッセイをまとめています。
運営しているクリエイター

記事一覧

いちめんにみどり

 アラブ首長国連邦の公立小学校で日本語教師として働いていた頃、「日本」という国を紹介する…

齋藤芳生
7か月前
6

つるばみいろの思い出

 どんぐり、と一口に言ってもその大きさや色、形は様々だが、子どもの頃の私が特に好きだった…

齋藤芳生
8か月前
9

「宣戦布告」の思い出~私の短歌公募館~

 さて、あれこれ慌ただしかったのがちょっと落ち着いたので、また季節を逃さないうちにアップ…

齋藤芳生
8か月前
14

会津を歩く――髹(ぬり)の辻まで――

 夏休みにアップして以来、また時間が空いてしまいました。 もうすっかり秋ですね。寒い。  …

齋藤芳生
8か月前
7

花の落ちる音

 今年の夏(註:2017年)は、いつまでもいつまでも降り続く雨が止むのを待ちわびている間に終…

齋藤芳生
10か月前
1

夏の友だち

 高校を卒業してから、生まれ育った福島市を数年間離れては戻り、ということを何度か繰り返し…

齋藤芳生
10か月前
2

桃のにおい

 この歌をつくってからちょうど1年になる(註:2018年8月)。  昨年は今年の猛暑など想像もできないほどの冷夏だった。最近は友人たちと「去年と今年を足して二で割るぐらいがちょうどいいのにねえ」と冗談めかして話してはよく笑っているが、あの冷夏はなんだかもう遠い昔のことのような気がする。  冷夏でも猛暑でも、福島市で生まれ育った一人として毎年夏を過ごすために欠かすことのできないのは、桃である。猛暑の影響で今年は全体的にやや小ぶりだと聞いたが、やはり今年もおいしい。あのまるい形

さみどりの合歓

 2007年8月から2010年6月までの3年間、私はアラブ首長国連邦の首都であるアブダビという街で…

齋藤芳生
10か月前
6

かなしみは自然にあらずー窪田空穂ー

こんにちは!齋藤です。 久しぶりにnote更新です。今回は、ちょうど一年前に書いた窪田空穂に…

齋藤芳生
1年前
17

雪という友人~あたたかく、なつかしく~

来ましたね、冬。 今年は12月に入ってもまだあたたかいな、と思っていたら、いきなりの氷点下…

齋藤芳生
2年前
9

その岸辺に佇つ

 このnoteでは大変お久しぶりです。齋藤です。  さて本日、Radiotalkの「たんか趣房~酒と短…

齋藤芳生
2年前
10

杉の木に降る雪

 樹齢五〇〇年とも言われている「大杉」は、自宅から歩いてすぐの神社の境内にある。「ある」…

齋藤芳生
3年前
10

鬼に逢いに行く

小鬼のような猫が一匹飛び込んであかあかと芒野原の日暮れ       『花の渦』  新年を…

齋藤芳生
3年前
12

ぎんなんのにおい

公孫樹の木に抱かるる広場ぎんなんの臭いのを笑いながら別れき     『桃花水を待つ』  人間と同じように、樹木にも性格がある。 「種類」ではなく、「性格」。神社などに鬱蒼と茂っている杉の木は、無口でまじめで、何かいたずらをしたら叱られてしまいそうな「性格」。白っぽくてすべすべした樹皮に、いつも大きな葉をひらひらさせているプラタナスは、おおらかで陽気な「性格」。白い花がわあっと咲いた時にはにぎやかだけれど少し恥ずかしがり屋なのは、ちょうどこの季節、小さな葉を真っ赤に染めるドウ