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China Dolls チャイナ・ドールズ

2021年12月2日

自身が中国系四世(といっても曽祖父が中国人である8分の1)のリサ・シー。彼女の曽祖父の名字がシー(氵に四)で、それをずっと使っているようです。今でこそアジア系アメリカ人作家が随分増えて嬉しいことですが、ちょっと前まではAmy Tangとか限られていましたよね。でも、彼女の場合、母親もキャロリン・シーといってシーの名前をもった作家さん。カリフォルニアだからかもしれませんが、クォーターであるとはいえ、アジア系であることに誇りを持っているようで好感を持っていました。

しかし、本の選択を間違えました。戦前に日系アメリカ人三姉妹(タカ・シスターズ)の一人が殺されるという事件があり、その話だと(なぜか!)思って買ってしまったのです。

もちろん、この話も面白かったです。本当の三姉妹ではなく中国系でいいとこのお嬢さんのヘレン(とはいえ中国本土で日本兵に大変な目にあった過去も)、両親との折り合いが悪く家を飛び出したグレース、この二人の中国系アメリカ人に日系のルビーの三人が三姉妹よろしくダンサーとして活躍するお話。最後に「チャイナ・ドールズ」というナイト・クラブで登りつめるのです。

よく、こんなお話が作れるなぁ、と感心するドキュメンタリーのような詳細さがあります。上述したように、アジア系(あるいは中国系?)アメリカ人社会における戦争中の日系の微妙な位置。ルビーは実際、真珠湾攻撃の後しばらく中国系として収容所行きを免れていたのですが、誰かの密告により(最初はグレースが密告者では、と疑われます)収容所に収監。しかし、スポンサーを運良く見つけることが出来、早くに出てきて、ヘレン、グレースと合流します。

こうした歴史と社会に振り回された三人の女性の半生記。丁度前回の「クラーク・アンド・ディヴィジョン」と並行で読んでいたので、日系収容所の話も出てきて、両方とも終戦前に収容所を出た女性の話。シンクロが楽しかったです。

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