〈認知言語学ノート#02〉生成文法と認知言語学

生成文法:
言語知識は知覚や記憶といった他の心的機能から自律した1つのまとまりを成している。
チョムスキー『心的器官』

認知言語学:
言語の能力は他の心の働きと分かちがたく結びついていて、言語知識を明らかにするには心の働きまで考慮に入れなければならない。

⇒両者は研究を立ち上げるときの方法論的決断(に過ぎない)

〈生成文法と認知言語学の対比〉

生成文法と認知言語学の対比を際立たせると…
生成文法…多様性をもたらす普遍性を考える?
認知言語学…多様性を多様性のままに考える?

・ラネカーは認知言語学を構想し始めた頃に言語相対主義(認知言語学と親和性がある)についても述べている。アメリカ先住民の調査を通じて認知言語学的な着想を得ていった面がある。

・しかし、ラネカーは普遍性を求めている面もある。意味構造は言語ごとに異なる一方で、意味を記述する道具立ては普遍的でなければならないと考えた。

⇒認知言語学は「制約をもった多様性」として意味構造を捉える、という立場

〈認知言語学ならではの問題〉

・「雨に降られた」は自然な日本語なのに、「財布に落ちられた」が不自然なのはなぜか?

「雨が降る」や「財布が落ちる」に対するわれわれの捉え方、認知の仕方から説明される。⇒〈認知言語学ノート#05〉

・1つの語がいくつかの区別できる意味をもち、なおかつその意味の間に関連性を感じられる、『多義性』の問題

・所有表現の問題

【参考文献】西村義樹・野矢茂樹『言語学の教室』 (中公新書)

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