ベルちゃんがやってきて1ヶ月

2022年10月5日に船橋競馬場から
ベルクオーレ(ベルちゃん)がやってきてから
1ヶ月がたちました

馬運車の後ろの扉がひらいて
チップ&ディールのメンコをかぶったベルちゃんが
降りてきてから
毎日お世話をしていて
こんなお馬がいるんだ、ということに
日々おどろき、新鮮な気持ちになり
そしてベルちゃんのことが
どんどん好きになっていっています

いままでじぶんが知っているお馬たちは
とにかくやんちゃでげんきいっぱいの
セン馬や牡馬ばかりでした
年齢や種類に関係なく油断ならない性格のもちぬしばかり
にんげん相手にいっぽもひかない気の強さと
やりたいことをやろうとする意志の強さ
パワフルでいたずら好きで食いしん坊で
運動がだいすきで、じぶんたちの仕事にほこりを持っていて
にんげんを独占しようとする魅力的なお馬たちを相手に
日々アタマをふる回転させて過ごしてきたのです

ところが、ベルちゃんときたら
まず、いや、がないのです
朝おはようをして、無口をもってくると
すぽん!とあたまを入れてくれます
ここで、声をかけた途端、おしりをむけたり、
わいわいと騒いで、外に出たいのに無口をかじろうとしたり
はやくはやく、と、まえがきをしたり、しないのです
引いて馬房から出すときも、とことことついてきます
わーっとにんげんを引っ張って走り出し
一瞬で馬場にワープするようなことはないのです
歩いたらいっしょに歩く
とまったら止まる
カラスさんや、遠くの鳥さんに驚いても
急に立ち上がったり、バタバタと体当たりしたり
しりっぱねして、走り去ろうとする瞬間に
にんげんに横蹴りしたりはしないのです
ただ、おどろいたようにあたまをあげて
ちょっとさがったり、とまったりするだけです
声をかけて、引き手をそっと引くと
またついてきてくれるのです

ベルちゃんからしたら
このにんげんは、いったい何をそんなに
警戒しているのかしら?と
かんじたかも知れません
長年のあいだに身についたもので
馬を引くときには、あたまを下げさせて
2本の引き手の間にかならず人差し指をいれて
ちょっとこぶしで前に押し出し
肘はのばさずにまげて
あまった端っこは反対側の手でよゆうを持たせて握り
馬とじぶんの体の間に、かならず肘をいれるようにして
急に体当たりされたり、馬が走りだそうとしないように
つねに抑えがきくように、立ち上がられても
あたまを前肢ではたかれないように…
今日は、げんきそうだな!と思ったら
鼻にチェーンをかけたり、チェフニービットを使って
引いて歩くのが日常だったはず…

もちろん、ベルちゃんだって馬なので
油断はしてはいけないのですが
でも、こんなにおだやかに、のんびり歩いてくれるなんて
手ごたえが全然なくて、ほんとうに馬を引いてるのかしらと
体感が違いすぎて、ふわふわしてしまったのです

お手入れのときも、戸惑うくらい
ベルちゃんは穏やかです
馬をブラッシングするときには、かならず
ブラシを握っていないほうの手のひらで馬体をさわり
もし、馬が何かしようとしたら手で押して
馬の蹴りや飛んでくる噛みつきをよけて
はいはい、と返事をしながら、淡々と手入れをする…
という態勢をしているのですが
どこをさわっても、ただただ、おだやかに
耳を伏せることもなく、ブラッシングされています
後ろに回って尻尾をといても、なーんの反応もありません
肢をあげて、と、かがんで
肢をちょっとさわると、ぴょい!っと蹄のうらを
見せてくれます
肩を馬に押し付けて、肢をあげさせる必要はないのです
肢をあげるふりをして、にんげんに体重をかけてきたりも
もちろんしないし、一瞬で肢を下ろしたり
わざと反対の肢をあげてみせたり
おろした肢でにんげんを踏もうともしません

お手入れが終わって、だいすきな、にんじんさんを
あげるときは、べるちゃんなりに
早く食べたい!という意思表示がちょこっと
あるのですが、
勢いあまってひとの手を噛んでしまうこともなく
上手に、ちいさく刻んだにんじんさんを
唇ではさんで、もっていきます
前がきも、ちょこっとしますが
しつこく、ブラジルのひとが起きてきちゃうような
すごい前がきはしません

ああ、なんてかわいいのでしょう

そうやって10月中
ベルちゃんは引き馬と
調馬策をして、乗らずに、のんびりと
新しい場所に慣れてもらうことに専念して過ごしました
乗馬クラブでは、お客さんが来られて
馬に乗るので、プロばかりの競馬場や
トレーニングセンターより
もっともっと慎重に
不測の事態がないように気を付けなくてはいけません

もちろん周囲のお馬たちは
そういう環境にすっかり慣れている
ベルちゃんよりは、ずっと年上のお馬たちばかりですから
若いお馬たち同士のように
一頭がバタバタしたら、みんなつられてバタバタ…
ということはなく
その点では、周りのお馬たちの様子をよく見て行動する
ベルちゃんにとっては
あんしんできるんだろうな、と思います

それでも、記憶力のよいお馬たちは
なんでも、一番最初が肝心。
にんげんからの指示がなっとくできるように
落ちついて指示を待てるように
あんしんしてもらえるまで、時間をかけてあげたかったのです

11月になって、ベルちゃんの乗り運動を始めました
9歳になるまで110戦走ってきて
スマートだった体にも、疲れがたまっていたと
思うのですが
1ヶ月がたち、すこしふっくらとして
毛艶もよく、ごはんも食べられるようになり
お腹の調子もよく
歩様に力強さもでてきたので
もう乗っても大丈夫そうです

べるちゃんに乗って
いちばん驚いたのは
対向馬(逆方向にむかうお馬たちがすれ違うこと)を
気にしないことです

競馬場からきたお馬たちは
対向馬をとても気にして
横っ飛びしたりしてよけようとしたり
対向馬にむかって耳をしぼって怒ったり
ひどいときには立ち上がって威嚇したり
あるいは、後ろからくる馬の蹄音だけでおどろいて
走り出そうとすることがあります

ベルちゃんには、それがなくて
ほんとうに驚きました

調馬策のときから思ってたように
速歩がどんどん速くなることもないのもすごいのです
速歩が伸びていって急に走り出すこともありません
駈歩の発進は落ち着いているので
丁寧に練習すれば、怖くなく、だれでも乗れそうです

というわけで
まだまだトレーニングは続きますが
ベルちゃんといっしょに、さいしょのいっぽは
踏み出せたかな、と思っています

これからも、チビスケやシロちゃんたちにも
たくさん支えてもらって
ベルちゃんが、立派なお馬になれるように
がんばっていきたいと思います

ぶちこ。

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