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今日も空は青く山は美しい

私が住んでいるアメリカのコロラドは一年で300日以上晴れの日があるという。真夏は40度を軽く超える日もあるが、乾燥しているので日陰に入ると涼しいそよ風が心地よく、夜は肌寒く、クーラーを稼働させる日は数えるほどしかない。木々の間から差す太陽の光はまぶしく、今日も鳥のさえずりは心地よい。

6月5日に誕生日を迎えた。昨年、7月にステージ3の癌が分かり、10か月に及んだ【癌治療3点セット(抗がん剤治療、放射線治療、手術)】を終えて迎えた47歳は「ああ、よくここまできたな」とちょっと感慨深い。抗がん剤の副作用である手足の痺れもまだあるし、そのせいか、大好きだった料理も裁縫も全くする気になれないけれど、でも、生きて娘の成長を見守れるのは誇らしいし、私の代わりに夫が食事を作ってくれるし、どこかの誰かに感謝したい気持ちにすらなる。癌にならなければ当たり前だった毎日がまぶしすぎて、病気になってよかったとすら思う。
 でも、お腹がいたくなると胃に転移したかなと不安になるし、頭痛があれば脳転移があるかなと真っ先に考える。不安で眠れない夜がたくさんある。がん治療三点セットを終了して「癌サバイバーマニュアル」という卒業証書のようなものを医者からもらっても、月に一度の注射と毎日の飲み薬、血液検査は月に一度5年間しなくちゃいけないし、検査をするたびに結果を見るときにそれなりの覚悟がいる。数々の薬の副作用とも一生付き合っていかないといけないことにも苛立たしいこともある。
…だけど、それは生きているという証ともいえる。再発や転移が怖くて日々を過ごすのも、病気を通して得られた感謝の気持ちも、生きているからこそ持てるもの。癌で亡くなった方がいる中で、今、私は生かされている。家族に悲しい思いをさせずにすんでいる。それならば、今、目いっぱい死を怖がって、今日という日を無事に終えられたことを目いっぱい感謝していこうと思う。

今年の娘からのプレゼントには包丁を使わなくてもスライスできるキッチングッズが入っていた。日本渡航禁止令が出てしまって今年も帰国ができない私の為にお小遣いをつかって買ってくれたヨックモックも。彼女の優しさに今日も泣けてくる。

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