可愛い居住者さんの話
洗濯物がないか、Yさんの居室へ。
いつもと変わらず布団の上にちょこんと座っている。
「今から洗濯をするのですが、洗うお洋服などありますか?」と聞くと、床に雑に積まれている洋服などを指して「それを洗ってくれる?」と言う。
「じゃあお預かりしてお洗濯してきますね。乾いたらまた持ってきます」と伝えて退室。
その5分後である、
「ちょっと誰か来て!」
Yさんが大声で叫んでいる。
急いでYさんの所へ行き、話を聞く。
「Yさんどうされましたか?」
「今、窓から泥棒が来て全部持ってちゃったよ」
出た。認知症の症状の一つ、幻覚だ。
「何がなくなりましたか?」
(さっきまで洗濯物があった場所を指して)
「そこに置いてあった物全部」
違った、幻覚じゃなかった。
「ごめんなさい。ここにあったお洋服でしたら、私が持っていって今洗濯中なんです。Yさんにお伝えしたつもりだったのですが、勝手なことをして申し訳ありません」
「違うよ。アンタじゃない。たくさん男の人が来て洋服だけじゃなくて全部持って行っちゃったんだよ」
どうしよう、こういった時の対応がまだ全然わからない、、、
困っていたら先輩が助けてくれた。
「それは大変ですね。すぐ警察をよびますから、Yさんはお部屋で待っていてくださいね。また泥棒が入って来ないように、窓の鍵を閉めておきますね」
Yさんは安心していて、5分後には泥棒のことなど忘れていた。
この仕事に就く前までは、物忘れ程度にしか考えてなかったけど、認知症には4種類あってその症状は様々である。
毎日、夜になると帰宅願望が強くなる人もいて、何十分も
「家に帰りたい」
「家族が待ってるから帰らなきゃ」
「知り合いが家に来てると電話がきた」
「家族が迎えに来るから帰る」
いろんなバリエーションで帰りたがる。
私たちはその度に「今日はお泊まりですよ」と嘘をつく。
このやりとりがしんどくて、逆流性胃炎になったのだ。
それでも翌日会うと何事もなかったように、笑顔で楽しく会話ができるから仕事が好きだった。
楽しいって言葉が正しいかわからないけど、楽しかった。
「よく他人のシモの世話ができるね」と言われることがある。
排泄介助を嫌がる人は多い。当たり前だ。
私も恥ずかしいから排泄介助なんてされたくないもん。
でもね、介助前はすごく嫌がってる人たちも、終えると「やってもらえてよかった」って笑顔になるんだよ。
笑顔で「ありがとう」なんて言われたらさ、こっちも嬉しいし、他人の便の気持ち悪さとかそんなのどうでもよくなっちゃうんだよ。
できることならしたくないけどね。
だってさ、オムツ交換してる最中に排便されちゃうことだってあるんだから。
マジかーってなるでしょ??絶望よね。
それでも、そんな気持ちなんて吹き飛ばすほどの笑顔が見られるんだから、やり甲斐しかないのよ!!!
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