絵日記8/7

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画像2 夜の二条通りには、小さな提灯が連なり、街並みに温かな光を落としている。東京と同じタクシーが行き交い、煌びやかな店々が立ち並び、車や人が絶え間なく通っているが、京都では何故か、どこか懐かしい、十年前へと時間を巻き戻したかのような感覚が漂う。
画像3 階段を下り、鴨川納涼床に足を踏み入れると、涼やかな風がやさしく迎えてくれる。川のほとりでは、多くの人が地面に座り、夜の静けさを楽しんでいる。立てかけられたマイクに向かい、若い男性が軽やかなロックを歌っている姿が見える。川岸のレストランのテラスでは、上品な装いの人々がグラスを交わし、笑い声が響き渡る。
画像4 私は、華やかな灯りが象徴する賑わいに背を向け、人の少ない方向へと静かに歩き出した。次第に耳に届く喧騒は虫の声に取って代わられ、周囲にはもう、都会の灯火も人影も見当たらない。夏の夜風が髪をそっと揺らし、子供の頃の真夏の夜を思い出す。家の前に竹の椅子を並べ、涼を求めて夜空の星を探した、あの何とも言えぬ安らぎの時間。何も考えることなく、ただただ、夜空を見上げていた。
画像5 ふと、向こう岸からヴァイオリンの音が聞こえてくる。誰かが練習しているのだろうか?さらに歩を進めると、虫の声に混じり、蛙の鳴き声が加わる。橋の下では、若者たちが花火を打ち上げ、ビールを片手に笑い合っている。大きな笑い声と歓声が、夜空に咲いた花火のように、再び川辺に青春の輝きを灯している。

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