かめむし

1946年に創業した新京成電鉄は、千葉県北西部である松戸市、鎌ケ谷市、船橋市、習志野市の4市にまたがり運行しています。路線距離26.5km、駅数24駅と、駅間の距離が非常に短いのが特徴。
と新京成HPと記載されている。

千葉県で育ったが新京成線も知らなかったし乗ったこともなかった。
結婚後、新京成沿線に住むことになり身近な電車となった。
この電車は、どっかでみた誰かが仕事を終えて乗っていることがある。
コンビニで会いましたっけ?もしや皮膚科の先生では?
顔を見たことあるような、ないような、見たとしたならばどこだっけ?ここか?と記憶をもぐらたたきする機会がある生活に身近な電車だ。
記憶をたどるうちに病院の受付の人か!本屋の店員さん!と気づくことがある。駅間が短いから思い出せないでいると降車してしまうことがある。
ブブーと残念ブザーが聞こえるような気もする。

半袖を着始めた季節、平日の昼下がり車両には、眠そうなおじいちゃんと、品のいいおばちゃん、バイト帰り?なお姉さん、学校が終わった小学生… 家路に向かう人で車両はのんびりした雰囲気だった。

駅に停車すると、車内の空気が変わった。
ヤツは車両の中を右往左往。あっちへこっちへ。
車両の乗客は、声に出さずにキャー!表情がキャー!
絶対に来ないで!と皆の視線が釘付けになる。

ヤツとは、かめむしだ。

乗客の視線を浴びながら飛び回りガラスにあたってカチと音を鳴らすことを繰り返す。
乗客は当たらないように頭を下げたり横にずらす。

カチ ドアに当たって床に落ちた。

かめむしが飛び回らなくなって車内がほっとした空気に包まれる。

しかし、そそくさと体制を整え飛び立とうとするかめむし。それを見た乗客。どうか、飛びませんようにと願いが車内を巡る。

かめむしが飛ぼうと構えたかのように見えたと思ったら駅に着いた。
どやどやと話に夢中の女子高生が数人乗り込む。


あ!
かめむし蹴られた。
ひっくりかえっちゃった。

かめむしは足を動かし起き上がろうとしても起き上がれない。
もがくほど、クルクル回る。ルーレットかめむし。

ぁ!
かめむし自らひっくりかえった!

足を地につけて飛び立つ方向を定める。
すぐさま飛ぶ準備。
またもや車内の注目の的
無音の絶対こっちにこないでねコール炸裂

ここでまた駅に到着。
ついたら、またもや賑やかな女子グループがどやどやと乗車。

あ。かめむし!
踏まれて・・・・
靴の下敷きに。

思いがけない結末、かめむしから視線を外すとはす向かいの女性と目が合った。








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