きっかけ

それは本当に偶然のできごと


長らく音楽から遠ざかっていた

フジロック サマソニ ライブハウスからコンサートホール 

音楽のために心を弾ませ遠征することから遠ざかってどのくらいだろう

音楽とともにはじまり音楽とともに終える毎日は いつ途切れてしまったのだろう

無意識に音楽を口ずさみながら過ごす時間

頭に流れる音楽に心奪われながら過ごす一日

そんな日々は一体いつわたしの毎日ではなくなってしまったのか

気がつけば鏡の中の自分は わたしがわたしと思い描く脳内のイメージからは遥か遠い 40歳のそれになろうとしている

自分と向き合うよりも必死に向き合ってきた小さな命 彼女が成長するにつれて少しずつできてきた自分の時間と心のすきまにするりと入り込んだ40歳の現実

何も成すことのないまま これからの未来を下ってゆくおばさんが 鏡の中にいる

そう思うとなんともいえない虚しさと孤独感に包まれた

そんなとき偶然たどり着いた

10代に心を焦がした音楽でも20代にライブハウスで追いかけた音楽でもない

CDすら持っていない

けれど多感な10代にきっと耳にしていたその唄声

一瞬で25年前に引き戻された

そして涙が出てきた

なんの涙かわからない 

わたしの毎日に 心に 何かが戻ってきた

音楽がなくても 決して つまらない毎日ではなかった

けれど何かをどこかで失ってしまった気がしていた

もう音楽にときめくことなんてないだろうと思っていた おばさんとはそういうものなのだろうと

けれど あのころとなにも変わらない あのころ以上にただただ美しく素晴らしいその声に 

40年目の日々が色づきはじめた

音楽とともにはじまり音楽とともに終える毎日

毎日が色づいたのではなく 心が色づいたのか


それは本当に突然のできごと














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