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「麻雀つれづれ日記~切った牌はもどらない~」を読んで

" 一体いつからだろう 
 ミズハラアキナに興味を持ったのは "

2023年2月24日、U-NEXT Pirates&最高位戦日本プロ麻雀協会所属の瑞原明奈プロ(以下、瑞原さん)による初の自伝フォトエッセイが発売された。
発売当初から評判のよいエッセイ本について、「瑞原明奈」という人に興味を持った一人の人間として感想を述べることにする。

本記事内では度々、瑞原さんの著書から引用という形で部分的に文章を掲載させていただく。(問題があればご指摘ください)
※本記事内の引用元「麻雀つれづれ日記 切った牌はもどらない(著:瑞原明奈)」

1章 麻雀と人生

わたしはいつも人間について興味があって、面白いと思っています。

(P39 神に祈るデジタル雀士)

1章の「麻雀と人生」では「人」や「人間」というキーワードが頻繁に出てきて、瑞原さんの「人」に対する考え方の根幹が伺い知れる内容となっている。

自分もいつしか「瑞原明奈」という人間に興味を持った。
知り合ったのは瑞原さんがプロ1年目の2014年のことだ。

正直な話をすると、自分が「瑞原明奈推し」だと周囲から思われていることにずっと違和感のようなものを感じている。
応援をしているという意味では間違ってはいないし、そう思われることが嫌だという気持ちは微塵もない。むしろうれしいくらいなのだが、少し心に引っかかりのようなものを覚える。

自分は「瑞原明奈と純粋に麻雀で勝負したかった」だけなのだ。

同卓をしてもほとんど会話をしなかったと思う。
すべての神経を研ぎ澄ませて、瑞原明奈と真剣勝負をする。
それが本当に楽しかった。

瑞原さんを応援したくなった理由は「麻雀に対してものすごく真面目に取り組んでいて向上心が高いところ。そしてプロ意識がかなり高いところ」である。

Mリーグ2019シーズンを前にドラフト指名候補を取り上げる特集が組まれた。そこに瑞原さんの名前が挙げられた。
麻雀は好きだが、プロのことはほとんど知らない友人に瑞原さんを応援するように連絡すると、その時に友人から「かわいいっすね!」と言われてハッとした。

それまで瑞原さんのことを一度も「かわいい」と思ったことがなかったのだ。

「かわいい・・・のか??」

顔とか容姿とか関係なく、麻雀と性格の部分で応援してきた。
それが瑞原明奈という存在である。

俺の眼は節穴か?

好きなものや夢中になれるものは、多ければ多いほど人生は楽しくなるに決まっている。なにを後世に残すとか、偉業を成し遂げるとか、他人に高く評価されるとかではなく、楽しい時間や幸せの多さこそが人生の価値だと私は考えています。

(P27 出逢い)

瑞原さんの人生のモットー。人狼をやっているとき楽しそうだし、推しの松嶋桃プロと一緒にいるときも楽しそうだよね。
人軸の話でいうと、瑞原さんは自身のYoutube配信で「推しは増やしたほうが楽しい」と発言している。

瑞原さん自身、二人のお子さんを育てながら、好きなものや夢中になれるものを増やしている。これは簡単にできることではない。
仕事と家庭を両立し、麻雀を仕事として認めてもらえるようにMリーガーになり、一流の成績を残しているのは本当に尊敬の一言である。

余談ですが、わたしは神様にお祈りするのは家族の健康と幸せだけという決め事をしています。いろいろ願いすぎると良くないような気がするためです。麻雀のことで祈るときには、別にいる「麻雀の神様」にお願いしています。誰に迷惑をかけるわけでもないので都合のいい設定を作りました。へへへ。

(P41 神に祈るデジタル雀士)

真面目な文章の中に唐突に出てくる「へへへ」という文字。
かわいいかよ。

2章 U-NEXT Piratesという名の船

たまたま放銃やアガれずという悪い結果が続いたせいか、そもそも卓上で自信のない選択をすること自体への恐怖が強かったのか、個人初年度のシーズンの冬に、わたしは完全にバランスを崩して迷子状態になりました。

(P66 バランスブレイク)

Mリーグ参戦初年度の2021~22年シーズン、瑞原さんは個人2連勝という絶好のスタートを切るも、その後は逆風にさらされることになった。
その中で、シーズン中の冬に麻雀のバランスを崩してしまったという瑞原さん。

U-NEXT Pirates公式PV(パブリックビューイング)に参加したときのことだ。

東発、親番6巡目ピンフドラ4。69s待ち。
リーチする?しない?

瑞原さんは冷静にダマを選択して、12000をアガったんだけど、当時難しい問題だなと思った記憶がある。
期待値的に考えるとリーチもダマもほとんど差がなさそうだった。

対局終了後、公式PV会場に戻ってきた瑞原さん。
イベントが終わり、退場時にパイレーツメンバー全員でお見送りをしてくれたのだが、瑞原さんは開口一番「あれ、立直だったかなあ?」と聞いてきた。

瑞原さんとはそれまで幾度となく麻雀に関する話をしていたし、自分もかなりデジタル寄りで麻雀を考えていた時期だったので、聞いてもらえたこと自体うれしかったのだが、今思えば、瑞原さんはこの頃からすでに悩んでいたのではないだろうか。

今の瑞原さんならノータイムでリーチをかける気がする。(違ったらごめんなさい)

2020年3月27日第1回戦、東四局1本場で、チンイツのテンパイをしていたわたしは、あろうことかアガリ牌が出たのにロンというわずに見逃してしまったのです。

(P69 麻雀プロ人生最悪の日)

この時のことはよく覚えている。
TLはものすごく荒れていたが、自分はかなり冷静に状況をみつめていた。

鬼の首を取ったかのように責める人、一緒に悲しみにくれる人、それぞれの立場でそれぞれの反応が渦巻いていた。

これはかなりマイルドに書いたツイートではあるが、TLがこれ以上荒れないように冷静に考えてくれる人が増えてくれたらいいなと思ってつぶやいた。

次局の配牌を取りながらさっきの手牌を考えているときに、自分がアガリ逃したことに気がつきました。

(P69 麻雀プロ人生最悪の日)

次局に入り、今まで見たことないような険しい顔になってた。それはそうだ・・・。何とか着順だけでも1つでも上で終わってくれと祈っていた。

こんなミスをしたせいで、わたしのうしろにあるすべての看板に傷をつけてしまった。チームはもちろん、Mリーガー、最高位戦、麻雀プロ、ネット麻雀、母親、女性……みんなに申し訳ない。

(P70~71 麻雀プロ人生最悪の日)

自分は何と声をかけるべきか迷っていた。
自分が一環して思っていたのは、同情や励ましは違うということ。それはプロである瑞原さんに対してあまりよいことだと思わなかったからだ。

ミスの再発防止はチームでも話し合われるであろう。
様々な意見がリプライで飛んできている中で、少しでも中和できればなと思って送った。

気の利いたことが言えなくて悲しかった。

わたしはプロ入り当初から、「アイドル的な立ち振る舞いはしない」というマイルールのようなものを設けていたこともあって、「『大好き』いってください」というリクエストは断固として断り続けましたが、こうやって卓外のことでちょっとでも盛り上がりを作れるのはとても有意義なことだと感じました。

(P83 大好き事変2020)

大好きの安売りはしない。瑞原さんの姿勢はプロだなって思った。
もちろん「アイドル的な立ち振る舞い」や「大好き」というのが悪いことだとは思わない。それが麻雀業界の認知・拡大につながるのであれば、それも一つの麻雀プロの形といえる。
あくまでも瑞原さんのプロとしての考え方ということである。

1年目と2年目を比べると、自分としては麻雀をいろいろ変えましたが、3年目に入るときは基本的に2年目のやり方のまま、できるだけ精度を上げる方針で練習をしていました。良い結果がなかなか出ない2年目ではありましたが、手応えは感じられていました。

(P94 背水の陣)

2年目を終えたときの所感として、若干ツイていないと思うことが多かった。
同じ打ち方でもプラスになっていた世界線は十分にあったのではないかと。

ただ、わたしはこの一戦を経験したい気持ちがとても大きかったのです。大きなプレッシャーのかかった状態で、同じものを懸けて偉大な沢崎選手と真剣勝負するという試合をしたかったのです。

(P106 MVP)

終わりの挨拶をしたのち、沢崎選手が「おめでとう」と手を差し出してくださって、MVPを取ったんだと、やっと頭が認識して涙が浮かんできました。

(P106 MVP)

ここで沢崎さんに真っ向勝負を挑んだこと、MVPを獲ったことで瑞原さんの打ち方に対する批判意見がほとんどなくなったような気がする。
本当に大きな1戦に自ら立ち向かい、栄光を掴み取った瑞原さんは本当にカッコイイ。

3章 麻雀プロとして、母として

トッププロがこんなに頑張っているのに、わたしは目の前のタスクをこなすだけでやっているような気分になっていて、情けないなと思いました。これが機械音痴なわたしが重い腰をあげてYoutubeチャンネルを開設するきっかけになりました。

(P173 自己プロデュース論)

トッププロとは多井さんの話。
瑞原さんを昔から知る人は、「瑞原さん機械苦手なのにYoutubeなんてできるの??」という印象だったと思う(失礼)。
でも自分で勉強して立派に配信をこなしている姿をみると、やっぱすごいなと思うし、本当に尊敬する。

麻雀プロ1年目の終わりから産休に入り、産後落ち着いたあとも月に1、2回仕事を入れられるもののリーグ戦には復帰できず、対局も限られた回数しか出られない時期が続きました。

(P180~181 母としての幸せとプロとしての焦り)

自分も瑞原さんと同じ時期に1人目の子どもが産まれた。
自分は妻が土日関係ない仕事のため、子どもといる2人でいる時間が妻とほぼ同じだったから、大変さはある程度理解できる。
特に母親にかかる家事・育児負担の割合は、父親に比べて大きい家庭が多いのではないだろうか。

リアルの麻雀牌をほとんど触れないような状況下の中、天鳳とかでレベルアップをして、Mリーガーにまでなったの本当にすごい。

結局、麻雀プロとしての立場も母親としての立場も、本当にところを理解してくれる人なんて誰もいなくて、孤独だと感じることもあります。

(P183 世界中の戦う女性たち)

瑞原さんは言いたくても言えないような大変なことがたくさんあるだろうに、それを一切感じさせず、麻雀やファンと向き合っている。
2人子どもがいると本当に大変だよ・・・。小学校の行事も多いしね。

おわりに

これまで語られなかった瑞原さんの内面が描写された本。フォトエッセイというだけあって、瑞原さんの写真が多数掲載されているが、自分はほぼ観ていない(観ろ!)。瑞原さんの書いた文章がとても素敵で、スムーズに頭に入ってくる。読み終わるのに長い時間はかからなかった。

瑞原さんの考え方はとても芯が通っていて、それを曲げないように生きているんだなというのが伝わってきた。麻雀界は女性というだけで、男性から理由もなく下に見られがちで、その立場をなんとか変えようと、女性として、母として、信念をもって麻雀プロ活動に勤しんでいるのだなと。

「プロ」という肩書も大切にしていて、麻雀プロとしての瑞原明奈で勝負したいという気持ちがひしひしと伝わってくる

そんな瑞原さんだったから、これまで応援しようと思えたのだなと、このエッセイを読んで、あらためて思った。

おしまい

瑞原さんの1冊目の感想文noteもご興味があれば。

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