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「Fairy World」を読む(13)

最低限ALBUM収録作は載せておこうと思っていますが、ALBUMに載っている即ち名作と限ったわけでもありません。今回はどうか?


98番

Feenschach 1st Prize 1970 (FIDE ALBUM 1968-1970収録作)

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H#4 2solutions 

1.Sc4 Se6 2.Sc7+ Sxc7 3.Sa3 Sb5 4.Sc2 Sc3# 
1.Sd3 Sd7 2.Sb6+ Sxb6 3.Sc1 Sc4 4.Se2 Se3#

Sは動きを限定するのが難しい駒だが、2解合わせて16手全てがSの着手で、1手のダブりもなく限定できている。wKの配置がまさに絶妙で、これによってSb2の軌跡が一通りとなり、Sa8によるtempo move(tempo check)も入った。初形も美しく傑作と思う。


101番

Europa Echecs  1st Prize 1970

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H#3* 

1...Qf1 2.Rd1 Qe1 3.Rd4 Qa5#
1.Kxd5 Qg1 2.Re1 Qf1 3.Re5 Qc4#

白の初手はいずれもtempo move。ほとんど原理図のようだが上手くできている。tempoを用いる多くの作品の創作上の苦労に、wKを縛っておかなくてはいけないというのがある(置かなくて済むならそうしたい)。本作はBd6が効率良い配置でwKを抑える配置がP2枚で済んでおり、またwK自身もwQの移動の限定に一役買っているのが良い。


109番

Die Schwalbe  1st Prize 1970 (FIDE ALBUM 1968-1970収録作)

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H#2 2solutions 

本作は「作意だけ見ても狙いが分からない」タイプなので構造を見ていこう。まず確認すべきはKの逃げ道。g2とg4が開いているため、Se5にはKg2、Sh4にはKg4と逃げられる。つまり黒は2手かけてg2もしくはg4を塞げば良い。wKにcheckがかかってしまうためbSは動かせないことに注意すると、Rh2-Rg2とすることを思い付くだろう。問題はここから。白の手を考えてみよう。2手目はSe5だが、初手に指せる手がない!

というわけで、初手でg2/g4を抑えるためにBf1/Bf5とするのが作意。それによって抑えるべき地点がe4/e2に変わるが、現状はそこをブロックするためのbSが動かせない(wKにcheckをかけてしまう)。よって初手が黒のR, BのHideawayに決まるという構造。

1.Bf8 Bf1 2.Se4 Se5#
1.Rh2 Bf5 2.Se2 Sh4#

wKを縛るためのQ配置がちょっと苦しい気もするが、代えてPa3, Pb3だと1.b2+ Kxa2のcookがあるため仕方がないか。また初形から2手でg4をself-blockする手がないのも微妙だ(Ra4~Rg4はSh4をRxh4と出来てしまう)。

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