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『チェス・プロブレム入門』感想②

前回の続き、P33から読んでいこう。


H11:作意自体は面白い。 b)の最終手だけが駒取りになっている点やツイン設定の大きさは多少の減点である。ちなみに、2枚の駒を2パターンでunpinするシステムを詰将棋で使ってプロパラで発表したことがあるが、プロブレム向きのテーマだと実感させられただけだった。

H12:ツイン設定に無理があるが、H#2でこのテーマを実現したのは本作が初めてなのかもしれない(もしそうなら素晴らしい)。

H13:非限定回避の意味付けが全て統一されており、好作。

H14:ODTが完璧に表現されている。まさに入門に打ってつけ。

H15:作品としてはダメだが、例題としては良い。セルフブロックのための成りは黒のpromotionの中でも気楽に作れる部類。

H16:最小限の配置で最大限の表現をしている。

H17:手のコントラストというよりもメイト形のコントラストという感じか。Bh8!という派手な手が片方の解でのみ出てくるのに、全体のバランスが崩壊しないのは凄い。

H18:シンプルなカメレオンエコー。多分この手の作品は山ほど作られていて、新作を作るのは難しい。

H19:自作に欲しいくらいの良い出来だ。突出したところがないからHMに留まったのか、もしくはオリジナリティの面か。
解説中の2つのミスを指摘しておこう。
「2...Xが1マス移動してyをアンピン」
「3.yが1マス移動してセルフブロック」

H20:私の考えではH#4はまだ中編なので、単解で作品にするのは厳しいと思っている。

参考図:歴史に残る作品。60年前にこれが発表されていることを考えると、ヘルプの世界の恐ろしさが分かるだろう。これに刺激を受けて、私もフェアリー詰将棋で2種がルントラウフするものをプロパラに発表したが、3種は相当難しいと思う。


【この1局】

H14

Atsuo Hara
PP 2015

H#3 2solutions

1.Sd4 Ra8 2.Kd5 Rg8 3.Ke5 Rg5#
1.Sd5 Be1 2.Kd4 Bh4 3.Ke5 Bf6#

RとBを反対側まで大きく回す。ODT。


【総括】

この問題と解説をしっかり読むだけで、ヘルプのエッセンスの多くを吸収することができる。Zilahi、AUW、Albinoなどの最低限覚えておくべきテーマも網羅されている。
作品のバランスとしては、H#2が12/20でちょっと多くて長編に手が回っていない感じだが、その辺りは後に紹介する「ヘルプメイト練習問題解説」で補うことができるだろう。

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