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Uri Avner作品集を読んでみる 3-3

「Uri Avner作品集を読んでみる」は今日が最終回です。


今日使われているルールの紹介から。

Mars Circe→Fairy condition. A piece can capture only such pieces as it could capture if it was standing on its normal Circe rebirth square, and it may capture any such piece regardless of where it is in fact standing, provided that the rebirth square is not occupied by any other piece. 

駒を取る時は実戦初形位置から取るという変則的なキルケルール。何それ?という感じですので、早速作品を見てみることにしましょう。


94番

Michel Caillaudとの共作

TT Nunspeet 2001 Prize
Dedicated to Dirk Borst

H#2 2solutions  Mars Circe

1.Bc6 Rdd5 2.Rxf8 Bg6#
1.Rc6 Bc5 2.Bxd7 Rg6#

あのCaillaudとの共作。2人は一時期創作パートナーだったらしい。
Mar Circeは、駒を取る時に限り一度初期位置(黒Kの場合はe8)に戻った後に1手動くというルールである。つまり、現時点で黒Kの逃げ道はd7とf8、そしてg6の3つだ。ここまででピンと来ない方は、今一度ルールを把握し直してほしい。他に目に付くのは黒のc1Rとh1B。これらは白のB/Rが初期位置から黒Kを取るのを防いでいる。これで大体のシステムは読み取れたというもの。後は手順を当てはめていく作業となる。
初手はc6着手。続く白のRdd5/Bc5は、黒の線駒のラインに蓋をしながら、黒Kの逃げ道を1つ減らす手だ。しかし、まだ逃げ道は2つも残っている。白の駒を動かすようでは手数が足りない。Rxf8/Bxd7とするのがMars Circeらしい妙手!これで黒Kのflightはg6のみとなった。最終手でそこを埋めてやれば、h1/c1から黒Kにラインが通ってメイト。



合計6枚のR, Bはまさに唯一無二の配置で、他の案は考えられない。この発見が全てだろう。B1とW2における同地点着手や2解のコントラストはヘルプメイトそのものであり、このフェアリールールに不慣れな我々を納得させる構成になっていると思う。好作。


本作のMichel Caillaudによる解説動画は以下。ぜひご覧ください。



全15回読んでいただきありがとうございました。
非常に優れた作品集です。若島さんに連絡すれば購入できると思います。ぜひこの機会にどうぞ。詰将棋の本と同じで、後回しにしていると手に入らなくなりますよ!

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