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『チェス・プロブレム入門』感想⑦


F13:巨匠の手すさびで、例題として模範的だ。Annanは詰将棋からチェスプロブレムに輸出されたルールの1つ。そういうものは他にも幾つかあるが、最近ではPoint Reflection(点鏡)が特筆に値するだろう。

F14:マキシはフェアリー詰将棋での作例が少ないため馴染みのない方も多いだろうが、ルール的に考える手が少なくなるため解きやすかったりする。本作がまさにそうで、ほとんど考えるところなくメイトまで一直線。


F15:Take & Makeは、近年大流行のフェアリールール。解こうとすると超大変で、私の苦手な部類である。ただし本作には複雑さがなく、このルールを楽しむのにピッタリだ。TrittenはHelpセクションにもよく投稿をくれる、センスの良い作家の1人。


F16:モノクロームエコーになるが、ちょっと物足りない。2解目の表記に間違いがあるのでここで訂正しておこう。1.Qe5+ Kf8 2.Qc5 Se4#

F17:これが最善の配置なのだろうが、c7Gの働きが弱く、この作者としては低調か。

F18:ルールの表記が間違っているので訂正しておこう。H#2ではなく、H=2である。つまりステイルメイトを目指す。手順は平凡。

F19:Chinese pieceの共演に目が眩む人もいるだろうが、本質を見れば易しい。お馴染みのGrimshawをPaoとVaoでやったというだけで、アイデアに飛躍はないからだ。

F20:ツイン設定から考えても初手は一択。a)だけ2手目にLionが動かないのがチト弱いが、統一感よりも形の纏まりを重視した結果だろう。
b)の黒2手目はLEIとなっているが、勿論LIの間違い。またc)の黒初手はLIxc4となっているが、これも勿論c5の間違い。

F21:Kのdual avoidance。例題として悪くない。

F22:3解目は複数解の価値判断基準からすると不要なのだが、単純に手順自体の価値という意味では入っていても良い。解く方には苦痛かもしれないが、この辺りは作者の好みに委ねられた部分か。

F23:私は未だに理解し切れていない中立駒。Crisanによる軽い例題。


【この1局】

F15
Pierre Tritten
Problem Paradise 2015

H#2 2solutions
Take & Make

1.cxd3 (→e4) Kxe2(→b5)! 2.Re6 Rxf2(→d2)#
1.exf4(→d4) Kxf2(→f5)! 2.c5 Bxe2(→f3)#

ルールは「駒を取った時、その駒は同時にそこから移動する手を指さなければならない。なおその移動する手は、取られた駒の動きになる」というもの。

対照性がバッチリで、見ていて良い気分になる。


【総括】

駒数の少ないまさに例題的なものばかり選んであるため、ルールの勉強には丁度良いが物足りないという方もいるだろう。練習問題にはホネのある作品も入っているので、ぜひ解図してみていただきたい。

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