交点捨ての纏め(Novotny編)
チェスプロブレム用語には、NovotnyやPlachuttaといった「線駒の利きの交点への捨駒」に関する用語がある。私は詰将棋に対してもこの2つの用語を使うことがあるのだが、その度に何それ?という反応をされている気がするので、この機会に用語の意味や作例を纏めておきたい。
今回はNovotny編。
Novotnyの簡単な定義は「同陣営の、異なる動きをする2枚の線駒の交点への捨駒」である。言葉だと分かり辛いので詰将棋での簡単な例を見てみよう。
久保紀貴
1・3・5手ランダム詰将棋第092問
23飛、
同角/同飛、
22銀打/12銀打まで3手。
同陣営(玉方)の、異なる動きをする2つの線駒(25飛と34角)の利きの交点(23地点)への捨駒。初手をどちらで取っても、取らなかった方の利きが消えてしまうのだ。
ちなみに、飛と角の交点に捨てていてもそれぞれのラインを切った効果がどこにも現れない場合はNovotnyには該当しない。
この21歩成をNovotnyと思う人はいないだろうが、念の為である。
さて、Novotnyでラインを遮断した後に、さらに玉方の線駒を動かす捨駒を入れるとどうなるか。
上田吉一
将棋世界付録 2005年3月
27香、同龍、87角、同龍、25飛まで5手。
(同角成、25飛まで)
初手87角には65合〜54合で逃れる。65にも交点があるのがミソだ。
【余談だが、この65合はNovotnyと言えるだろうか?確かにこれも飛と角の交点への中合(←玉方による捨駒)ではある。しかし、これは王手義務という詰将棋独自の性質によってそもそも同飛と取ることができないからNovotnyには該当しない?】
続いて、Novotnyの手筋を繰り返した例として自作を引用する。
『Organ Pipes』
詰パラ 2021年7月
まず紛れから。
34香(Novotny)、同角、33銀打、21玉、24香(Novonty)、同角。
ここで飛の利きが止まったので、本来なら23香と打つはずだが、それには同角があるので詰まない。31銀成、12玉、13香も同角でダメ。よって作意は…
35香、同飛、
同角なら33銀打、21玉に24香(Novotny)が決め手。この場合は同角に23香が打てるのである。
34香、同飛、
同角の場合は35香のNovotnyの効果が出て、1筋まで追って13香で詰む。
31桂成、22玉、
これが34地点でのNovotnyの効果。43桂のpinが外れて桂が動いた。
25香、同飛、
いきなり24香(Novotny)で良さそうだが、同飛寄が逆王手になってしまう!よって、先に25で捨てておかなければならない。同角なら23銀打まで。
24香、同飛引、13銀打まで11手。
最後の交点捨て。飛で取れば13銀打、角で取れば23銀打までだ。
さて、このNovotnyをテーマ的に発展させるとどうなるか。『中編名作選』に収録された小林敏樹作が有名だが、ここでは小林作と同じ構想を短手数で描いた作品として長谷川作を引用したい。
長谷川雄士
詰パラ 2022年10月
53桂、同歩、32銀、同龍、51金、同角、42飛、同龍、33桂、同龍、52銀まで11手。
3手目が問題。いきなり42銀と打ち込むと、同龍・同角どちらで取られても詰まない。つまり、3手目から51金、同角、42銀は同角で無効だし、32銀、同龍、42銀も同龍で無効というわけだ。
作意は32銀〜51金。これで2枚ともが42地点の反対側に移動した(このような駒の移動をクリティカルムーヴと呼ぶ)ので、初めて42飛が有効になる!手順前後の問題も上手く解決していてお見事だ。
42飛を同龍と取らせて角の利きを遮ることができたが、今度は龍が33に利くため、さらに33桂が捨駒になって収束するのも良い。
Novotny編はここまで!
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