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インタビュー企画④ー大崎壮太郎(前編)

インタビュー企画の第4弾です。
構想派の雄で最近絶好調の大崎壮太郎さんにお話を伺うことになりました!
いつもはこちらが一方的に質問する形式ですが、今回は大崎さんの詰パラ発表作について、2人で語り合う形式にしました。このトークから大崎さんの詰棋観を感じ取っていただければと思います。
最後には【特別出題】もありますので、ご確認を。



オープニングトーク

大崎:僕はもうすぐ40歳なんですけど。
シ:ええっ、そうなんですか。ということはイノテツさんより上ですか?
大崎:上ですよ~。
シ:同世代の作家って誰になりますか?そんなに多くないですよね。
大崎:そうなんですよ。僕は谷間かなあと思ってるんですけど。詰将棋冬の世代というか。今でも活躍してる人で言えば、石本仰さんが同い年のはず。ただ、僕が一番活動していた20歳前後の頃に、石本さんの名前をパラで見た記憶はないんですよね。会合に来るイメージもないですし。
シ:活動時期が違うと。
大崎:僕が同世代だと思っているのは糟谷さんなんですよ。年齢は1個か2個違いなんですけど。それくらいしか同世代の感覚の作家はいなくて。
シ:あー、なるほど。イノテツさんとかはやっぱり下のイメージなんですか?
大崎:イノテツさんの活躍も、自分が積極的に活動していた20年前よりちょっと後なんじゃないかな。そう考えるとシナトラさんの世代は良いですよね。馬屋原さん、久保さん、kisy君とかがいて。
シ:馬屋原さんは一回り上なんですけど(笑)。
大崎:でも僕からすると馬屋原さん久保さんはまだ若手みたいな気持ちで。今の世代、良いですよねえ・・・。
シ:同世代の認識はなかったです。
大崎:そうか。当事者になるとそうですよね。
シ:だって、少なくとも馬屋原さんとかの世代と僕ら世代の間には鈴川さん・宮原さん・武島さんという世代があるわけじゃないですか。
大崎:ああ~。そこも凄いなあ。
シ:そこ3人が一番活発にやってた時代の終わる頃に、みっちゃん(斎藤光寿さん)とかKisy君が本格的に活動し始めたんで。それよりまだ上の世代が馬屋原さん・久保さんですから。
大崎:でもさあ。やっぱり3手5手作品集とかやってるからさー。
シ:『ランダム詰将棋』ですか?
大崎:だから同じ感覚になりますね。kisy一族とか。
シ:ああ、一味みたいな(笑)。
大崎:僕が詰工房に行ってた頃って、詰将棋をガチでやってる20代30代とかあんまりいなくて。
シ:そうなんですか。
大崎:エンジョイ勢みたいな。ただ集まって飲むだけっていう。
シ:それ楽しいんですか?
大崎:確かにな。なんか楽しかったんですよね。なんでなんだろう?


シ:いつもは、インタビューする時って固定の質問があるんですよ。
大崎:僕もねえ、インタビュー読み返して予習しました。
シ:ええっ。大崎さんってそういうタイプやったんですか?なんかイメージでは、もっと豪放な感じなんですけど。
大崎:ノリで来ると思いました?
シ:ノリで来ると思いましたし、敬語を使うタイプとも思ってませんでした(笑)。勝手なイメージなんですけど。
大崎:久保さんみたいな。
シ:インタビューなんですけど、予習していただいたのは無駄になるかと思います。
大崎:(笑)
シ:というのも折角の大崎さんやから、構想作中心に話を聞きたいなと思って。今回、大崎さんと喋るから勉強せなあかんと思って。
大崎:予習してきたんですか?
シ:予習してきました。
大崎:お互い予習してる(笑)
シ:詰パラを新しいほうから遡っていって大崎作を見つけ次第棋譜ファイルにするっていうやり方で。そこから大崎さんの詰棋観を拾い上げられたらなと思っています。
大崎:僕でもそんなに持ってないのに。
シ:なんでですか?
大崎:投稿したら投稿用紙も棋譜も消しちゃうんで。
シ:え?なんのために?
大崎:詰パラ見返したら分かるじゃないですか。でも僕結局詰パラも捨ててるんで。自分の過去作わかんないんですよね。
シ:ええ?
大崎:必要になったらpdfで買えばいいかと思って。紙の本は捨ててるんです。引っ越しのタイミングで捨てたりしてて、最後の引っ越しの時にアカシア書店に連絡したら「詰パラのバックナンバーの買い取りはしてません」って言われちゃって。古本屋からも価値ないと思われてるんならもういいやと思って、今は読んだら捨ててます。
シ:不便じゃないですか?
大崎:不便なんですよね。数か月前のが読みたくなった時とか。
シ:いきなり衝撃的でした。


インタビュー本編

[入選59回]

詰パラ2021年6月

33角、46玉、55角成、同玉、58香、57角合、
33角、45玉、46歩、同角成、55角成、同馬、
35龍まで13手。

シ:気を取り直して作品を見ていきましょう。まずは59回のこれ。
大崎:ああこれですね。大学かどこかに、香打って角中合する斎藤慎太郎作があって、そこから着想しました。

斎藤慎太郎

詰パラ2020年7月

93角、77玉、87金、同玉、79桂、88玉、
77銀、同玉、66角成、同玉、69飛、68角合、
93角、76玉、77香、同角成、65銀、同桂、
66飛、同馬、87金まで21手。

シ:ああこれですか。めっちゃ同じじゃないですか!
大崎:めっちゃ同じではないでしょう!
シ:失礼しました(笑)。大崎作のほうが短編的に纏めてますね。
大崎:そうなんです。
シ:左下の折衝を削るっていう考え方ですね。
大崎:すぐ角を成り捨てたほうがいいなと思って。
シ:作者的な評価はどうですか?
大崎:僕は好きだったんですけど、発表後に鈴川さんがブログで「この手順はこう作るべき」っていうのをあげてて、「ほんまやなー」と思いました。

大崎:ただ、その図の唯一の欠点は2回目の55角成が捨駒になってないんですよ。
シ:龍捨ててから角成までってことですか?
大崎:確かそうでした。
シ:1回目が成捨だから2回目も同じ風に見せたいってことですか?
大崎:僕もそこまで考えてないんですけど(笑)、鈴川作との無理やり違いを挙げるならそこで。それに価値があるとも思わないけど、まあ成り捨てたほうが良いかなと。
シ:この1作だけでも結構エピソードが出てきますね。
大崎:僕は昔、石黒さんに「いただき妥協作家」と言われたことがあって。
シ:はい。
大崎:僕は結構、的を射ているなあと思って。人の作品から何かをいただいて、それを完全に突き詰めて推敲するでもなく、まあこんなもんかで発表するっていう(笑)
シ:なかなか厳しい批評ですよねそれ。
大崎:いやでもね、石黒さんと僕の仲だからというところもあるけど、割と正しいかなと。
シ:確かに、いただいてるイメージは正直ある (笑)
大崎:いただいてますよ、僕は。
シ:新しい構想作が発表されたときに、2号局狙ってません?
大崎:いや、狙ってるわけじゃないんですよ。なんか作ろうかなーと思ったときに、まあこれの2号局でも作っとくかって。みんなは2号局作ってもなーと思ってるでしょうけど、僕は2号局でもいいやと思ってるんで。
シ:2号局作る時って、1号局になかったプラスを求めますか?
大崎:僕は求めますよ。求めているつもり。
シ:今回で集めた作品の中で言えばこれ。これはいわゆる2号局系ですよね。

[入選68回]

詰パラ2021年11月

84飛、15玉、17香、16桂合、同香、同玉、
94桂、26歩合、同飛、15玉、16飛、同玉、
17歩、15玉、27桂、25玉、36金まで17手。

★名誉手筋。16桂合なら94に、16歩合なら74に跳ねる。

大崎:まあ実際には3号局だけど。
シ:まあ青木作(裏短コン2020年11月)との出た順番はあるけど。2号局系ですよね。
大崎:そうそう。
シ:これは馬屋原作(詰パラ2019年2月)からどう発展させたんですか?
大崎:これは、手数が短くなったんですよ。
シ:あ、なるほど。いや、なるほどです。参りました(笑)。
大崎:構想的な発展じゃなくて、短くするっていうのも結構好きで。構想の密度が上がるっていうか。「これを短編にするか~」っていう気持ちで作り始めてたりするんで。
シ:青木作を見たときはどう思われました?あれは7手でしたけど。
大崎:あれ見たとき「やられた~」とは全然思わなくって。
シ:全然思わなかったんですか。
大崎:自作も投稿済みだったと思うんですけど、自作のほうがスッキリできてると思って。
シ:枚数の問題ですか?
大崎:駒の多さかなぁ~。あとロジックも複雑だった印象。自作はシンプルです。馬屋原作とほぼ同じなんで(笑)。
シ:なるほど。
大崎:青木さんも結構「いただき」なところがあると思ってて。もちろん0→1も強いけど、いただきもあって、青木さんのいただきでも、今回は違うけど、「やられた~」って思うことありますよ。「自分がこれいただきたかったな~」って。
シ:先にいただかれたっていう(笑)。それは2号局と3号局に差があるってことですか?
大崎:優れた構図でシンプルにできた時ってあるじゃないですか。その洗練構図を2号局でとられちゃうと、次は発表しづらくなりますよね。そうすると「これは自分がいただきたかったなぁ~」となります(笑)
シ:なんか分かるような分からんような話です(笑)
大崎:1号局を思いつく自信は無いんですよ。
シ:そうなんですね。いただくイメージも確かにありますけど、大崎さんってバリバリの構想作家かと思うので。
大崎:でも1号局だと胸を張って言えるのは1個くらいしかないですね。
シ:その1個ってどれですか?
大崎:人と合作したやつなんですけど、桂の4連続中合で、その意味付けは1号局だと思います。
シ:それは誰との・・?
大崎:ご存じないだろうけど、流さんっていう人がいて。
シ:半期賞作家の。
大崎:そうそう。あの人と合作したやつで。
シ:あっ、ブログにあげてました?
大崎:最近金の4連続中合を作った人がいて、それが「大崎さんと流さんの合作に影響されて」って書かれてて。
シ:この「流崎。」名義の作品ですか。逆側まで玉が回った時に、という意味付けで。

大崎:そうそう。それは一号局だと胸を張って言えるけど、他は全部いただきです。
シ:そんなことあります?
大崎:久保さんみたいな評論家が「これも一号局だよ」って言ってくれたら喜びますけど、自分では他にはない気がしています。
シ:へ~。
大崎:たぶん久保さんに言わせたら、大なり小なり、どの作品も過去の作品を一歩進めてるだけっていう。
シ:うんうん。
大崎:その一歩が0→1に見えるか、そうでないかっていう。
シ:構想作はそういうとこありますよね。要素を抽出すると過去にあるんで。どこまで細かく見るかで見解が変わってくる。


シ:そうだ、憧れの作家って誰か聞いていいですか?
大崎:森長宏明さん好きなんですよね。
シ:なるほど。他にもいますか?
大崎:相馬さんとか、若島さんには憧れてないんですよね。凄いなとはもちろん思います。僕、相馬さんの凄さって、最近なんですよ、僕の中ではね。僕が詰将棋が血肉になるほどのめり込んだ時代に、相馬作品が取り込まれてないんだよなあ。
シ:その頃は冬眠中ですもんね。
大崎:相馬さんって僕の中では4銀連合。若島さんも簡素な形から粘り腰みたいな印象で。難解みたいな。
シ:2004年でしたっけ?解答選手権が始まったことで風向きが変わった。
大崎:そうそう!僕はビフォア解答選手権の人間なんで。
シ:ビフォア(笑)
大崎:ビフォア解答選手権で構想作やってたのって、やっぱり森長さんなんだよな。
シ:確かに。
大崎:森長さんの今の現役感凄くないですか?久々に出てきたら全然現役だった。あ、忘れてたけど、最初の憧れは山田修司さんですね。
シ:なるほど。巨椋さんは?
大崎:巨椋さんの凄さに気づいたのが『この詰』以後なんで、自分の血肉になってないんですよね。二十歳の僕に刻まれてない。
シ:やっぱり若い時に受けた衝撃が大事ですか?
大崎:自分がひよこの時に何を見たかで親が決まるみたいなところありません?山田修司についていこう、みたいな。あの頃に巨椋さんを見ていたら違った人間になっていたかもしれない。もう今は作風も凝り固まっちゃったんで。
シ:作風が定まったのはいつくらいと自覚してますか?
大崎:僕たぶん最初に投稿したの15歳とか16歳なんですけど、その頃から本質は変わってないと思いますね。今の人は羨ましいですね。色んな作品を知れて。
シ:ネットありますもんね。
大崎:僕の時は詰将棋を解説するブログなんて風みどりさんくらいしかなくて。
シ:その頃からブログを続けてる風みどりさんってやっぱり凄いですね。
大崎:ブログが無いんで本を読んで勉強しました。僕は『看寿賞作品集』と『近代将棋図式精選』、『夢の華』に育てられた人間です。『極光21』もまだ出てなかったな、あの頃は。
シ:『極光21』は2001年ですね。
大崎:その頃には凝り固まってますね。
シ:『極光21』で入ってたら変わってたかも。
大崎:変わってたかもしれないですね。洗練されてますよね。あっ、そういう意味では、僕最近『酔鯨』読んで。
シ:サイコロトークで言ってましたね。
大崎:芹田修さんの作風を、20年前みたいにスッと血にはならないんだけど、どうにかすり潰して身体に取り込もうとしてます。
シ:実はその話、人から聞いたんですよ。大崎さんが最近「芹田流を目指す」「煙詰を勉強する」と言ってるって。
大崎:そうそう。芹田さんは煙詰作ってないだろうけど、芹田さんといえば逆算作家で、逆算面白いなとなったんですよ、芹田さんきっかけで。それで一生懸命やってますよ。煙詰。
シ:そういえば、馬屋原さんも最近逆算でよく作ってるんですよ。手筋ものブーム?
大崎:そうなんだ。最近馬屋原さん詰将棋サロン出てましたもんね。
シ:そうなんですね。サロン読んでないので知りませんでした。サロン読んでるんですか?
大崎:芹田流を取り込んだことによって、僕は詰将棋サロンを目指さないといけないと思ったんですよ。
シ:それで買い始めたんですか?
大崎:そうそう。
シ:でもさっきの話やとすぐに捨てるんですよね(笑)
大崎:いや、将棋世界は楽天マガジン読み放題に含まれてて、それで見てますね。
シ:なるほど。そういうことでしたか。えーと、話を纏めると、憧れの作家は・・・。
大崎:当時は山田修司、森長宏明。今は芹田さん。どうにか芹田さんになろうとしてますね。そのきっかけじゃないんですけど、無理やりこじつけると、前にC級順位戦に出したら降級したことがあって。それは97角遠打の構想作だったんですね。解説の鈴川さんにも「こういう作品が落ちたのはおかしい」と書いてもらったんですけど。頑張って構想作作るより、頑張って芹田流で作ろうかな、みたいな。そのほうが評価されやすい気がして。芹田さんは構想作のほうが評価されやすいだろと言うかもしれないけど。
シ:大崎さんにも評価されたいっていう感情があるんですね(笑)
大崎:まあ、順位戦やってる時はね。順位戦も長らくやってなかったんですけど、やろうかなと思って。やるからには昇級したいんで、そのためには芹田さんの血を取り入れるしかないなと。
シ:大崎さんが今になって手筋ものを作り始めるのはなんかやっぱり違和感が・・・(笑)
大崎:田舎のお母さんに見せたいってのがあるじゃないですか。Creepy Nutsも紅白出たいみたいな。そういうのも多分あって。世の中の詰将棋マニアじゃない人にも見てもらいたい。
シ:そういう気持ちなんですね。
大崎:10年後20年後に残りたい。
シ:それなら構想作じゃないですかね。
大崎:構想作は上書きされちゃうじゃないですか。特に僕は2号局だし。
シ:上書き側ですもんね(笑)。
大崎:1号局は残るときもあるけど2号局は誰も覚えてない。それなら手筋もので圧倒的なさ。
シ:もちろん圧倒的なのは残りますけど。今って構想作ブームとまでは言わないまでも、テーマ寄りの作品が流行ってるじゃないですか。駒をたくさん置いても文句言う人は多分昔より少なくなった。なのにここで大崎さんが手筋ものに移動するのも面白いですね。
大崎:天邪鬼なところがあるのかもしれないですね。1999年、2000年に詰将棋作ってる頃は、僕の解像度が低いのもあるけど、なんでみんな構想作作らないのかなと思ってたんですよ。
シ:うんうん。
大崎:あの頃構想作・・・ちゃんと見たらあったのかもしれないけど、僕は全然誰も構想作作ってくれないじゃんと思ってさみしかったんですよ。
シ:低迷期というか。
大崎:いま低迷期を抜けてさ、若島相馬の時代になってさ、久保さんとか馬屋原さん、青木さんとかがどんどん構想作を作って深めていってる中で、疲れたじゃないけど、別のことやってみようかなと。
シ:逆にここで離れるっていう(笑)
大崎:今になって煙詰作ろうと頑張ってます。
シ:今から煙詰はなかなか茨の道ですよね。
大崎:そうなんですよ。だから困っちゃう。僕が作る煙詰なんてまだまだ全然なわけで。
シ:例えば岸本裕真が凄い煙詰作りました!なら引きがあっても、ただ煙りましたではなかなか相手にされない。
大崎:ダメでしょ?酷いっすよね。
シ:まあ添川さんを中心に、いくらでも作れることが証明されちゃってますもんね。
大崎:そうなのよ。この時代に煙詰を作り始める人は可哀想・・・。でもさ、スマホ詰パラとかに結構良い煙詰出してますよね。知らない人がさ。
シ:ペンネームなだけでめっちゃ知ってる人かもしれないですけどね(笑)
大崎:確かに。

大崎:鈴川さんのブログでさっきの改作をされた時に、「老後の楽しみを奪ってやる」って書いてあったんですよ。僕ずっと詰将棋の推敲は老後の楽しみで良いって言ってるんですよね。
シ:半期賞のコメントで書いてましたね。
大崎:書いてましたっけ。それで僕は妥協なんですよね。もちろん80%は頑張ってますよ。でも20%くらいサボってる。僕って作ろうと思って構図が1個見つかったらそれで走りきるんですけど、久保さんとかだと構図を捨てるんですよね。
シ:まあまあの構図が取れたらもういいやと思っちゃうのは分かります。一から出直しは苦痛なので。
大崎:煙詰作ってるときにも最近それ感じてて、1個逆算の道を進んでいったときに、これ添川さんならこの道を捨てて戻ってるのかなと思って。

シ:これ既に1時間喋ってますけど、まだ入選59回目の作品と名誉の3号局、この2作しか喋れてません。
大崎:1時間もやってるのか。僕も自分の過去作見たいからサクサクいきますか。
シ:別にサクサクじゃなくてもいいんですよ。脱線歓迎なので。まあ次の作品いきますか。



[入選60回]

詰パラ2021年6月

35角、23玉、93龍、73歩合、13角成、同玉、
55金、68歩合、同馬、同香成、14歩、23玉、
73龍、同香、24歩、34玉、35歩まで17手。

★初手45金は後に73歩合、55金は73桂合とされる。73合を先に決めさせ、金の移動を後出しする酒井。

大崎:これ僕結構好きですね。
シ:分かります。僕も結構好きです。
大崎:これ良い作品ですよね。
シ:先に金を動かすと玉方が合駒を選べちゃう。13玉型で龍を入るのは移動合がある。
大崎:そうそう。
シ:17角なんて駒を置いても余詰なくできるんですね。こんな置き方すると結構余詰みやすいじゃないですか。
大崎:運良かったです。良い作品ですね。
シ:良い作品ですねしか言ってないんですけど(笑)
大崎:いや、これだって良い作品じゃない?最近流行りの態度打診?保留からの打診?後出しじゃんけん?これが打診の何かを前に進めてるかと言われると進めてないけど、シンプルに出来ててさ。構想のエッセンスだけ抽出みたいな。作品集に載っけても良いな。
シ:作品集作る意志はあるんですか?
大崎:いずれは作りたいと思いますよ。
シ:でも推敲が老後の楽しみってことは、老後にしか出ないってことですか?
大崎:そうです。作品集作るときに手を入れます。
シ:じゃあ少なくとも20年は出ない。
大崎:死ぬ前に。
シ:今の時点で入れる作品はどれくらいありますか。
大崎:最低50は揃えたいんですけど、50は揃わないです。
シ:なかなか厳しい。


[入選64回]

詰パラ2021年8月

28飛、33玉、29角、38歩、同香、43玉、
42と、54玉、55歩、65玉、31香成、56角合、
57桂、76玉、78飛、同角生、65角、同桂、
77歩、同桂成、85銀まで21手

★角ラインを飛香ラインの交点に入れてカットするための飛限定打。

大崎:あー。これは自作集に載せるかどうか微妙なラインですね。
シ:前に春霞賞の選考でこの作の話をして、なかなか良いねという話になりました。
大崎:収束妥協してるんですよ。どうしても28飛、29角、38香が発生するんで、この3枚を右側だけの配置で捌き切りたいんだけど、できなくて左に持っていって。
シ:収束手順自体は良いですけどね。
大崎:別のテーマになっちゃってますよね。最初の構想と関係ない。
シ:まず構想が面白いんじゃないですか?
大崎:ありがとうございます。でも33角もダメな配置ですよね。取られるだけの。
シ:詰上りに残らないんでそんなに気にならない。
大崎:テーマ思いついたときは面白いと思ったけど、いやー、失敗しましたね。



[入選67回]

詰パラ2021年11月

31飛成、同玉/同角、43桂生/43桂成まで3手。

★変同で桂の成生。

大崎:これ良い作品ですね~!
シ:まじですか?
大崎:ええ!?
シ:別に普通じゃないんですか?
大崎:変同で成と生でさ。
シ:よくありませんか。
大崎:あるかもしれないけど(笑)。いやー、だめか、じゃあ作品集には載せないですね、これは。
シ:あるんちゃうかな、と思ったんですけどね。なかったらすみません。

★前例が思い浮かぶ方いたら教えてください。



[入選69回]

詰パラ2021年12月

45桂、32玉、33桂成、同玉、44銀、22玉、
29飛、24桂打、33角、32玉、42角成、同香、
39飛、36桂打、同飛、同桂、33歩、22玉、
34桂まで19手。

★6手目32玉は39飛で桂合できず早い。あえて角を取らせる22玉。

シ:これちょっと良いと思ったんですけど。
大崎:ああ、これか。忘れてたけど、悪くないかと。桂捨てる手が入って完成しましたね。これは森長さん影響ですね。
シ:この作品、森長さんっぽいですよね。
大崎:禁じられた遊び手筋大好きなんですけど、森長さんの影響はかなり大きいですね。



[入選71回]

詰パラ2022年6月

91角成、38銀打、同飛、同銀成、46飛、37玉、
48銀、同成銀、41飛成、26玉、37馬、同玉、
46飛成まで13手。

★飛角の最遠スイッチバック。

シ:順位戦で降級した作品です。
大崎:これで降級すんの?これで?
シ:そうです。
大崎:ひどいなあ。これも多分ね、原田さんのパクリなんですよ。飛を取られないために最遠に飛ばす。たしか、その作品は角を開く部分もあったんですよ。自作は飛角両方を最遠にしようと思って作ったはず。
シ:それはだいぶ話が違いますもんね。それで両方スイッチバックすると。
大崎:そういうことですね。これで降級とは恐ろしい・・・。
シ:この時の上位の作は大したことないと思いました。点数で選ぶと難解作が上に行っちゃうからなあ。

★インタビューの時には思い出せませんでしたが、大崎さんの言う原田作は多分これ。参考図の一番最後です。


[入選73回]

詰パラ2022年7月

26飛、27歩合、同飛、28銀合、39金、同玉、
49飛、38玉、29角、同銀生、48飛、39玉、
28角、同桂成、49飛、38玉、39歩、同成桂、
48飛まで19手。

★9段目で不成とするための銀合。

シ:構想に前例はあるけど、全体の纏まりが良いですね。
大崎:いただきに躊躇がないんで、これ長谷作じゃんって言われるけど、気にしないで作れるんですよね。それは僕の強みだと思うんですよね。出来上がってみると長谷さんとも違う感じで。
シ:これ作品集はマルですね。
大崎:マルです!


[入選75回]

詰パラ2022年9月

58角、36金合、同角、同角成、13銀成、同玉、
25金、同馬、13飛成、34玉、46桂まで11手。

★擬似中合。

大崎:これ良い作品ですよね。
シ:これですか?
大崎:ええ?ダメ?36金合が珍しいでしょう。
シ:そうですかね?
大崎:これが36桂とかならしょうもないですよ。金ですから。
シ:積極合で、強い駒ですね。
大崎:その金で防いだ46桂で結局詰むんで。攻防になってるじゃないですか。それからこの駒数。
シ:47金合なら同角、同馬、26桂という筋もありますね。
大崎:変化としてはありますね。本当はそっちを作意にしたかったんですけど。
シ:この金合って、僕としては例えば27銀型で36金合とするのと変わらないというか。
大崎:まあ擬似中合ですからね。それは58に玉方の利きもあるとして?
シ:そうですね。攻方飛の利きを通すっていうロジックがあれば58の利きの有無は関係ないので。例えば69角→57歩+27銀だとして、36金合というのは普通の受けだと思いました。
大崎:それはちょっと詰将棋を分かり過ぎてますね。この36金合は紐無しですよ(笑)。擬似中合についてはね、誰か論評してほしいんですよ。
シ:ただの紐付き合駒より優れてますよってことですか?
大崎:何かが違うんだけど、その何かが分からない。
シ:感覚だけの問題かなと。
大崎:はるか昔に、小学校で擬似中合の作品が中合扱いで解説されたのかな。その時に擬似中合をブログで纏めなきゃなと思ったんです。まず捨合・中合の定義が定まってないと思って。擬似中合はどこに属するんだと。取る場合と取らない場合もあるんで、分類をしっかりして解答者に分からせないといかんと思ったのが…ブログの下書きを見ると2015年だわ。
シ:大崎さんは36金を中合と思ってる?
大崎:思ってないですよ。でも擬似中合には中合っぽさを感じてほしいと思ってますね。結局普通合かと言われたらそうなんだけど、普通合じゃない何かを感じてほしい。擬似中合だからこそできる構想もあるんじゃないですか?擬似中合については何か鉱脈が残ってると思うんですよ。若島さんの自己ブロック合駒とかも擬似中合だけどさ。
シ:セルフブロックって擬似中合が多いですよね。そういえば、大崎さんの最近の作品で擬似中合がありましたね。

[入選81回]

詰パラ2023年5月

13龍、14桂合、19香、27玉、36銀、26玉、
24龍、同桂、35馬、37玉、38歩、同馬、
77龍、47歩合、同龍、同馬、38歩、同馬、
46馬、26玉、27歩、同馬、35銀まで23手。

★線駒(19香)の利きを通して打歩にするための限定合(14桂合)。

大崎:これか、確かに。
シ:これってネタとしては「香の利きをより通すという玉方にとってマイナスな合駒位置を選択する」テーマだと思うんですけど、「龍の利きをより通さない」というプラスの意味も見えるんで、打歩絡みの構想として見辛いっていう意見を、ある人が言ってました。確かにな、と。
大崎:これの元になってる馬屋原作(詰パラ2022年11月)は、むしろ手前で合駒してるんですよね。そのほうが自然な作り方と思ったけど、遠くでやりたくなっちゃったんですよ。
シ:分かります。馬屋原さんとこの作の話になって、流石大崎さんと思いましたよ。馬屋原作を作ってるときには、遠くに合駒というのは考えもしなかったので。
大崎:でもこれは玉方の得ですよね。
シ:龍で合駒を出したあと、すぐに龍を捨てて、それから香を打つほうが伝わりやすいのかな?まあこういう擬似中合もありますよというところで。


★もう1万字を超えてしまいました。インタビューの続きは後編で。
★最後に、冒頭でも触れた特別出題をします。大崎さんから「発表先が無いのでnoteで紹介してください」と図面をいただいたものです。


【特別出題】

大崎壮太郎

★ヒント:87手詰
★解いていただいても、機械に解かせて鑑賞でも構いませんので、作品の感想をこのnoteのコメント欄か、私のDMに送ってください(このnoteの感想も添えていただけるとさらに嬉しかったりします)。インタビュー後編の記事で纏めて公開させていただきます。締切は、とりあえず12月末日としておきます。


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