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『チェス・プロブレム入門』感想④

D11:こういう形をOrgan Pipesと呼んでいる。干渉点が計4つもあって面白い形である。
2.Rd2!という第三弾のNovotnyは、2...Bxd2 3.Sd4のvariationを見れば分かる通り邪魔駒消去の意味合いを持っている。つまり第二弾のNovotnyである2.Se3+とは少しニュアンスが異なるわけで、そこが少し残念か。
なお、このテーマは本手順1+Try3で4回捨てられるので、#2で実現することも可能。そういう構成ではMansfield作がおそらく最も有名だろう。ちなみにこのネタを詰将棋に持ち込んだ例としては…(おいおい)。

D12:self-pinとunpinの組み合わせ。あんまり良さが分からなかった。

D13:既成のパターンだと思うが、少ない駒数で出来ている。

D14:New German Schoolの模範的構成。実はこれ、同じ構成を持った作品が過去にあり、さらにそれを左右のキャスリングに対して(つまりダブルで)行った作品も存在するということを高坂さんに教えていただいた。うーむ、後進の厳しさを痛感する次第。

D15:オーソドックスでも上田流は顕在。傑作と思う。

D16:New German Schoolの中でも特に研究の進んでいる構成の1つ、Holstのテーマ。本作はちょっと論理が浅い感じを受けた。

D17:盤隅で2回のtriangulation!素晴らしい。

D18:このような作品を面白いと思う方は、ぜひ高坂さんのnoteでの連載「オーソドックスの可能性」を読んでいただきたい!1手おいてcheck、1手おいてcheckという長編Directmateの構成は、まだ発展の余地があるかもしれない。


【この1局】

D17

Rene J. Millour
PP 2004 1st Prize

#11

1.Kb8! Bb1 2.Kb7 Ba2 3.Kc6 d4! 4.Kb7! Bb1 5.Ka7! Ba2 6.Ka6 Bb1 7.Kb5 Ba2 8.Kc4 Bb1 9.Kxb3 Ba2+ 10.Kxa2 B~ 11.Sxf4#

3…d4!に対して白はもう1回tempoを失う必要があり、Kの奇妙な移動経路が限定されている。最後は黒Bの他に動かす駒が無くなってメイト。



【総括】

ヘルプの時と比べて解き方のほうに重心を置いた解説となっている。ヘルプはヘタに作ると解くのが不可能な「物体」になる反面、コントラストや統一がしっかりしていれば紛れの量に関係なく解けるという面がある。そういう意味で、良いヘルプは易しいことが多い(長編となると話は変わるけど)。それとは対照的に、良いオーソドックスが易しいことはそれほど多くない。やはり、ある程度紛れがあった方が良いからだ。解答競技でも#3や#4には相当悩まされるだろう。そんなわけで、日本で一番オーソドックス(というかチェスプロブレム)を解ける人物である若島さんによる解き方の解説はとても貴重である。

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