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The Problemist 2013.1 前編

プロブレム本の山を目の前にして、こんなに沢山の本が読める!という喜びがある反面、こんなに沢山読める気がしない…という絶望感もあった。Problem Paradiseは自分が働いている雑誌でもあるから全部読むと最初に決めて、さらに個人作品集なども読みたい……と考えると、Problem Paradise以外の定期発行の雑誌に手が回らない。その事態を避けるために、noteに書くことで雑誌を読むことを自分に義務付けようという魂胆。作品集の解説と違って真面目に書くつもりはあまりないが、お付き合いいただけると嬉しい。

今日読んでいるのはJCPSが2ヶ月に1冊発行しているThe Problemistの2013年1月号。ちなみに、この雑誌は私が現在購読している唯一の海外誌で、内容も充実しているし安いし英語で書いてあるという3拍子揃った本。おすすめ(若島さんにお願いすれば購読可能)。


2013年1月号はまずH.F.W.Lane特集だがそれほど刺さるものは無かった。それが終わると次はJohn RiceによるA Section of Kobe Awardwinnersがあってこれはいくつか紹介しなければならないだろう。


bernd ellinghoven & Fadil Abdurahmanovic

1st Prize Helpmate Tourney Kobe 2012 Version

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H#2.5 2solutions

1...Bc4 2.Ba7 Bc5 3.Se4 d4#
1...Bc5 2.Ba2 Bc4 3.Sf5 Sf7#

課題は「H#2.5 in which, in two solutions or twins, White’s first and second moves are interchanged, with differing mates.」

ただの手順前後に見えないように作らなければならない、難しい課題である。


Ofer Comay

2nd Prize Quick Helpmate Tourney  Kobe 2012

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H#2 2solutions

1.Sc3 Kxd4 2.Ra3 Qh2#
1.Sc2 Kxe2+ 2.Qb1 Qh8#

課題は「H#2 involving pinning during the solution, either actual or avoided.」



Emanuel Navon

3rd Prize Sabra Tourney  Kobe 2012

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H#2 2solutions

1.Rd5 Rf2(Rg6?) 2.Sb8(Sd8?) Bxf7#
1.Rf3 Rg6(Rf2?) 2.Sd8(Sb8?) Bd7#

課題は「H#2 where a white unit pinned in the diagram can be unpinned be Black on his first move, but actually is not unpinned until the second move.」



Satoshi Hashimoto

1st Prize French Champagne Tourney  Kobe 2012

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PG 21.5

最後は世界のHashimotoの作品。課題は「Long-distance travel」のはず。

これはとても久しぶりに解図に挑戦したので、思考過程を書いてみる。PGの解き方が分からないという方は参考にどうぞ。


まずは手数計算。白の手を勘定すると最短が22手でピッタリ。白は左のBやSを動かすためにPd3と早く突きたいところだ。しかしその前にBd3→Bg6としておく必要があり、そのためにはPe2が早く消えなければならない。今度は黒の手を考える。Pe2を最も早く取る方法はPb6→Ba6→Bxe2だが、白の手を考えると1.c4が必須のため、a6→e2のルートが使えない。というわけでPe2を取るのではなく移動させるしかない。Bb7→f3のルートはあるが、白の手3.Qc6に妨害される。よってPe6→Qf6→Qf3としてexf3と取ってもらうのが正解。となればPg2は黒に取られる駒だと分かる。さてこのポーンを取る駒といえば……Bc8しかない(Sだとチェックがかかってしまう)。あとは楽しいtravel!ビショップが帰ってくる論理は分かりやすくて、最後のRb8→Rc8という手順を成立させるにはビショップにbKを守ってもらうしかない。最後の難関は11手目。手なりでSe2と指してしまって苦戦したが、Rを先に動かしておくことに気がついてようやく解決した。

それでは作意手順を。

1.c4 e6 2.Qa4 Qf6 3.Qc6 Qf3 4.exf3 b6 5.Bd3 Ba6 6.Bg6 Bb5 7.d3 Ba4 8.Bd2 Bd1 9.Bb4 Be2 10.Sd2 Bf1 11.Rc1 Bxg2 12.Rc3 Bf1 13.Ra3 Be2 14.Sf1 Bd1 15.Se2 Ba4 16.Rg1 Bb5 17.Rg4 Ba6 18.Seg3 Bc8 19.Ra6 b5 20.Rb6 Sa6 21.Rb8 h6 22.Rxc8+

易しくて素晴らしい!


今回はここまで。後編はSelected Problemsあたりから拾う予定。


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