「Fairy World」 を読む(1)

つい先日、ある方からチェスプロブレムの本を200冊もいただいた。Problem ParadiseやThe Problemistといった定期発行の雑誌が多かったのだが、その中からIosif Krikheliの個人作品集「Fairy World」を掘り出した。一目見てこれは良い本だと確信したので、まずはこの本を読んだ感想をnoteに纏めていこうと思う。

まず作品集について。この「Fairy World」にはHelpmateのみが時代順に179作並んでいるロシア語の本。Fairyと銘打っているのにHelpしかないというのは不思議だが、Helpがまだ1ジャンルとして確立していない(Fairyの一部だった)時代の作品集なのだろうか?

次に作者について。Krikheli(1931〜1988)はソビエト生まれで創作GMの資格も持つ大作家。Kricheliという表記の方が見る機会が多いかもしれない。長手数のオーソドックスを得意としているイメージがあるが、ヘルプも流石にうまい。

前置きはこの辺にして作品を見ていこう。


8番

Jugoslavenski Sahovski Glasnik  1st Prize 1963 (FIDE ALBUM 1962-64 収録作)

画像1

H#3*

1...Bd3 2.Sf5 Bb1 3.Sg7 Bd2#
1.Sf4 Bd2 2.Kh5 Bc1 3.Sg6 Be2#

白黒両方にHalf-pinがある形からecho mates。可愛い作品。なお、本手順においてセットの手順が再現できないことを確認しておこう。1.Sf5 Bd3 2.Sg7 Bb1 まで進んで、ここで手待ち(Tempo)が存在しない!

Half-pin・・・ある線駒からKまでのライン上に同色の駒が2枚挟まっていて、1枚が動くともう一方の駒がpinされる形。2手順を用いて、Aが動いてBがpinされる、Bが動いてAがpinされる、の両方を見せるのが基本となる表現である。



9番

Probleemblad  2nd Prize 1963 (FIDE ALBUM 1962-64 収録作)

画像2

H#3 3solutions

1.Ba3 Be5 2.Bf8 Qd1 3.Sf4 Bd4#
1.Be5 Bb4 2.Bb8 Qd5 3.Sf2 Bd2#
1.Bxf6 Qf8 2.Bd8 Qf1 3.Sd4 Bf4#

3通りのUnpinとecho mates。たったこれだけの配置で全てが限定されるのは凄い!人の手が入っているとは思えない、そこにあるものを拾ってきたようなヘルプ。



今回はここまで。番号の若いほうから面白いと思った作品を取り上げていく予定です。感想、意見等はコメント欄かTwitterでよろしくお願いします。


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