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黎明期のOrthodox傑作選 04

今回はOld German Schoolの作品をご紹介しよう。Old German Schoolは1860年代から半世紀に渡って3手メイト・4手メイトの世界を席巻した流派で、「主要な変化はmodel mateにすべき」「手順は静かに始まり収束に向かってアグレッシブにすべき」等を掲げている。

Philip Klettはこの流派を代表する作家であり、これから紹介するShinkmanやWurzburgのような作家と比べると駒数が多くて難解な作品が多い。そんな彼の作品群の中から、比較的明快なものを1作セレクトした。


Philip Klett
Schachprobleme No.73

#4

1.Ba8 (2.Qxb4#)
1...Bb8 2.Bg1(3.Sf7+ Kc5 4.f3#)
 2...Kc5 3.Qd4+ Kxd4 4.f4#
 2...Kxe5 3.Bh2+ Kf5 4.Be4#
 2...Kc7 3.Sf7 R any 4.Qc4#

1...Rxa8 2.Qxb4+ Kd5 3.Qd2+ Kc5 4.b4#

keyは1.Ba8の限定移動(限定の意味付けは後に判明する)。これにより1...Rxa8の変化が生じるが、2.Qxb4+から軽く詰ませておこう。
本題は1...Bb8とする変化。ここで、さらに驚くべき2.Bg1!が登場する。主力に見えるBが脇に逸れては絶望のようだが・・・
2...Kc5に3.Qd4+!と捨てるのが、2.Bg1と結びついたまさに絶妙の手順。この美しいmodel mateがメインの変化であり、Old German Schoolの刻印だ。
また、2...Kxe5の変化も見逃せない。こちらは、初手と2手目に動いた2枚のBがいずれもSwitchBackしてメイトになる!
最後に、keyが限定される理由について。2...Kc7の変化を見ていただければ1.Bb7が成立しないことは明白だ。これだけなら1.Bh1でも良さそうだが、それでは2.Bg1のthreatで、最後に4...Kd5の受けが残る。
これだけの内容があれば、short threatも気にならないのではないか。本格派による4手メイトの傑作だ。


前回までのLoydの軽い作りとは対照的な、Klettの重厚作を楽しんでいただけたと思う。次回からはあのShinkmanが登場である。

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