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The Problemist 2014.7

今回はSelected Problemsより。


Janos Csak

1st Prize StrateGems 2012

S#10

1.Bc2 exd5 2.Ba7+ Kxe5 3.Qh2+ Sg3 4.Rh5+ Sf5 5.Kb1 d4 6.Kc1 d3 7.Bb8+ Kd4 8.Qg1+ Se3 9.Rh4+ Se4 10.Bb1 d2#

白Kが隅に居ては詰まないので動かしたいが、黒側はexd5の1手しか指せる手がなく、このままではstalemateに陥ってしまう。
それを回避するのが2〜4手目の3連続checkだ。初形と別の場所で黒KとSを縛りながら、黒Pにのみ移動先を与える。そうやってPをd3まで運んでくればあとは仕上げ。もう一度3連続checkをかけて全ての駒を元に戻せば良い。
うーん、何というシステム!こんなのは初めて見た。


Satoshi Hashimoto

2nd Honorable Mention Problemesis 2003

PG 25.0

Selected Problemsに橋本作が載っているときは解図するというのがマイルールだ。初形を見れば分かる通り駒取りの発生していないPGで、これなら私にも解けそう。以下に自分の思考の推移を書く。初心者の方は参考にしてみてください(でも、まずは考えてみてね)。


まずは手数計算から。
黒は考えても仕方なさそうなので、白の手を考える。P:5手、S:3手、B:4手、Q:2手、K:3手と、ここまでは明白だろう。問題なのは2枚のRだ。Pの壁があることを考えると、最短でも8手かかりそうだ。全て足すと25手なので、白には1手の余裕も無いことがわかる。そして、Rが最短8手になるパターンは2つしか存在しないように思えた。

パターンA:「a1R→h5(5手) & h1R→d4(3手)」
パターンB:「a1R→d4(4手) & h1R→h5(4手)」

ここからは実際に駒を動かす作業に入る。a1Rを運ぶためには先に色々な駒を移動させなければならない。その1つがc1Bだ。これを先に動かすためにはPをd3と突く必要がある。この時点でパターンBは矛盾する。なぜならa1Rが4手でd4に行くルートが、d3を突いた時点で塞がれるからである。

ではパターンAしかないはずなので考えてみよう。h1Rは3手でd4に行くので、Pを動かす前にd4まで運ぶ必要がある。すると今度はRが、d3と突いた後にしか動けないc1Bの最短ルート(e3→b6)の邪魔になってしまうのだ。つまり、パターンAも矛盾

ということは前提が間違っているということ。
あとは「a1R→h5(4手) & h1R→d4(4手)」というパターンくらいしかない。考えてみると確かに、a1Rはg1→g3→h3→h5というルートを使えば、4手でh5に辿り着ける!これはちょっと見えづらいルートだ。

これなら25手で形を作ることができるので恐らく作意だろう。あとは黒の手との兼ね合いだが、g8Sをf6→d5→b6→a8と動かす過程で取られないように、Bb6を極力遅らせれば良い。あとは黒Rが端で手待ちをするだけだ(黒Sでの手待ちはできない!)。

ここで、図面と作意を纏めておこう。


(再掲)

1.d3 Sf6 2.Be3 Sd5 3.Kd2 Sb6 4.Kc3 a6 5.Kb4 Ra7 6.Sc3 Sa8 7.Bb6 Rg8 8.e3 Rh8 9.Qg4 Rg8 10.Qc4 Rh8 11.g4 Rg8 12.Bg2 Rh8 13.Bd5 Rg8 14.Sf3 Rh8 15.Rag1 Rg8 16.Rg3 Rh8 17.Rh3 Rg8 18.Rh5 Rh8 19.h4 Rg8 20.Rh3 Rh8 21.Sh2 Rg8 22.Rf3 Rh8 23.Rf4 Rg8 24.Rd4 Rh8 25.f4 Rg8

正しい白Rのルートが一筋縄では見つからないのが良い。白の手が決まればほとんど解けたようなもので、黒の手との絡み合いは序盤の数手しかない。
狙いはRによる長手数の手待ちで、最短でS2枚を幽閉しているのが実現の鍵。これほど長い手待ちは他にあるのだろうか?

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