彼のやきもち

私は彼に話した。
結婚してから、ある人と両思いになったことを。
だけど、その人は、踏み込んでこなかった。
家族がいたから。私たちは一線を超えなかった。
私は、その人のことが好きだった。
その人が踏み込んできたら、私も行ったと思う。

オレ、異動なんだ。突然の告白に打ちのめされた。もう会えない。悲しかった。
でも、すぐそばにいて、好きなのに、どうにもならないときの方が、もっと悲しかったな。
その人は私の上司だった。
同じ感性で仕事をしている人だと思った。
こんなに共感できる上司は、後にも先にもその人だけ。
何度か夢に出てきて、夢の中では大胆に求め合ったっけ。でも、どうしても、私からはいけなかった。
思い切って打ち明けていたら、何かが始まっていたかもしれないけど、そしたらもっと苦しかったかも。
それから何年か経って、その人は転職した。もう同業者じゃない。辞めるときは真っ先に教えてくれた。一度、複数人で会った。数分だけ、二人きりになり、見つめ合った。
お互い何も言わなかったけど、目が語っていた。
これでよかったと。

今はメル友。ここぞというときだけ、連絡している。1週間後に返信がきて、それにまた私が返信して終わり。

彼は、私の話を黙って聞いていた。
何も言わなかった。
もう終わったことだしね。
だけど、その日は、なかなか帰ろうとしなかった。
いつもより1時間長く一緒にいた。
帰り際に、もっと一緒にいたいと感じた夜だったとメッセージがきた。
そうか、妬いてくれたのか。
分かりにくいけど。
叶わなかった淡い恋のお話。

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