14. 傾向と対策

○ 取調室

刑事(男・45)と容疑者の男(25)、向かい合わせで座っている。

刑事「…なんであんなことしたんだ」
男「……」
刑事「やってませんとは言わないよな?」
男「……」

刑事、机を叩き、

刑事「なんとか言え!!」
男「…僕が、やりました」
刑事「お前二度目だよな? 次こそ豚箱行きは免れないぞ」
男「告訴を取り下げてくれたあの子には、本当に感謝しています」
刑事「ならなんでまた人前で全裸になんかなるんだ!!」
男「…あれは、前回ここから帰った時のことでした」

○ 男のアパート(回想)

重い足取りで帰ってくる男。
ドアに鍵を入れて回すが、手応えがない。

男「…?」

ドアノブをひねると、既に開いている。
慌てて部屋の中へ。
あらゆる引き出しが開けられ、物色された跡が。
呆然とする男。

男の声「僕の家は、空き巣に入られていたんです」

(回想終わり)

○ 取調室(戻り)

刑事「警察には」
男「言ってません」
刑事「なぜだ」
男「だって、警察にお世話になってた人間が、その日に被害者として警察にお世話になるって、訳分からないじゃないですか!」
刑事「それでどうしたんだ」
男「わーってなって、…家の中で、一旦全裸になりました」
刑事「…まあそれは、家の中だから咎められないな。それで」

○ 同(回想)

空き巣に入られた翌日。
家を出る男。
ドアに鍵を刺し、回す。

男「……」

男、急に服を脱ぎ始める。
すると隣の住人(主婦・45)、ゴミ出しをしに家から出てくる。
全裸の男を見て、

主婦「…きゃああああああ!!!」
男「おはようございまぁす」

(回想終わり)

○ 取調室(戻り)

刑事「なぜまた脱いだ。わーっとなったのか! 部屋に戻るという選択肢はなかったのか!」

男、ボロボロ泣きながら、

男「鍵を閉めたことを、記憶に定着させようと思って、…それで、それで、…(机に突っ伏す)」

刑事、立ち上がり、男の肩を持つ。

刑事「…そろそろ、大人になろうな」

(完)

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