5. 天使と悪魔

◯ 道端

A(男・25)、500円玉を眺めている。

A「どうすっかな〜。10円だったら遠慮なくいただいちゃうけど、500円だもんな〜」

そこへスーツ姿のB(男・20代の見た目)、やってきて、

B「交番に届けたほうがいいよ」
A「…聞いてたんですか?」
B「それ絶対交番に届けたほうがいい。バチ当たる」
A「ですよねぇ…」
B「いやいいよ届けなくて!」
A「え?」
B「貰っちゃえよ! 誰も見てないんだから!」
A「あなたが見てるじゃないですか」
B「うん、やっぱ届けよう」
A「…ですね。届けます」
B「いやいいよ! バカ。貰えよ! 今月ピンチだろ? 悩んでる場合かよ!」
A「え、なんなんですか? 警察呼びますよ?」
B「いや自分から行けよ(笑)」
A「そうじゃなくて」
B「いや行くなよ!」
A「キモっ。いや、あなたの件で、警察呼びますよ?」
B「…あ、すいません申し遅れました、わたくし、あなたの天使と、悪魔です」
A「…どっち?」
B「兼任してます」
A「…いや意味わからん」
B「どっちもやってます」
A「困るなぁ。一番兼ねちゃいけないとこじゃないですか」
B「うるせえよ!」
A「怖っ」
B「うるさくないよ?」
A「怖っ! どっちを信じればいいんですか」
B「これね、結局二人で分業してたとしても、決めるのはあなたなんですよ」
A「…確かに」
B「天使と悪魔っていうのは便宜上訪れるだけで、大した意味はないんです。そこに経費を割くわけにはいかないんです」
A「何の経費? ていうか、普通に人間の方ですよね? 僕の脳内の人じゃないですよね? 誰に雇われて来てるんですか?」
B「…いや、粋じゃないなぁ(笑)」
A「そこ突いたら無粋とかねえだろ。暗黙の了解ぶんなよ」

そこへC(男・40代の見た目)、やってくる。
全身白タイツ、股間から白鳥が伸びている。

C「すいません遅れました!」
B「遅いよ馬鹿野郎!」
C「すいません、環八混んでて…」
A「天使だよね!? たぶん天使だよねあなた! やっぱ二人いるんじゃん!」
C「(小声で)今どんな感じですか?」
B「(小声で)今、500円拾って、天使と悪魔出てきて、…」

A、二人の打ち合わせを見ている。

A「ねえ、これ何なんですか? 悪質なユーチューバーですか?」

BとC、打ち合わせを終える。

C「交番に、届けたほうがいいですよ」
A「やっぱそうだ。天使遅刻してたんじゃん。てか『天使が遅刻』って何?」
C「一緒に交番行きましょう」
A「…分かりましたよ。届けに行きます」
C「いやいいよ届けなくて!」
A「え?」
C「金は天下の回りもの! 手にした時点でお前のものだろ!」
A「…え?』
B「(割って入り)まあまあまあまあ…」
A「いやお前悪魔やれよ!」

(完)

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