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今、何が起きているのか

【本編時間】
9分弱

劇団赤飯リモートドラマ「今、何が起きているのか」の台本です。
※無断での二次使用を固く禁じます。

本編はコチラ↓

【登場人物】
池田、星、鈴木(いずれも24) … 高校からの友達。

◯ ビデオ通話

池田、ビデオ電話を開始する。
そこへ鈴木、参加してくる。

池田「おう」
鈴木「久しぶり。元気だった?」
池田「めちゃくちゃ忙しかった」
鈴木「この時期忙しいことある?」
池田「いろんな人との電話で」
鈴木「なるほどね」
池田「正直、一生このままでいいわ」
鈴木「そんなに充実してんの?」
池田「まず人間関係の煩わしさから解消されるじゃん」
鈴木「うん」
池田「かと言って、こうやってコミュニケーションも取れるわけだし」
鈴木「まあね」
池田「人間関係もサブスクの時代に入ったよね」
鈴木「自分で選ぶってこと?」
池田「そうそう。だから今が一番ラク」
鈴木「へえ〜。そういえば彼女とは仲直りしたの?」
池田「……」
鈴木「…もしもし?」
池田「ああごめん、電波がアレだった」
鈴木「ああ。だから、彼女とは仲直りしたの?」
池田「察せよ」
鈴木「ごめん」
池田「(ため息)まあどうせすぐ会うわけでもないし、いいかな〜と思って、ほっといてる」
鈴木「…ふうん」
池田「…何もねえのかよ! じゃあ聞いてくんなよ!」
鈴木「いやでも、いつ外出れるようになるんだろうな。5月6日なんて絶対収束してないじゃん。このままだとマジで年末とかまで…」
池田「あー待って! 言わないで!」
鈴木「は?」
池田「言わないで!」
鈴木「何を?」
池田「それ以上のことを!」
鈴木「いやそれ以上はないよ。このままだと年末とかまで自粛しそうだな〜って…」
池田「言わないで!」
鈴木「何なの?」
池田「いや俺さ、…知らないんだよね」
鈴木「何を?」
池田「なんでこうなってるのか」
鈴木「…いやいやいや、そんなわけないじゃん(半笑い)」
池田「いやマジで。あれよあれよという間に学校もバイトもなくなってさ、気付いたらもう、この状態だったもん」
鈴木「なんだそれ」
池田「あとウチ、テレビ壊れたし」
鈴木「百歩譲ってネットは見るだろ」
池田「…通信制限なんだよね」
鈴木「そのレベルの話じゃねえぞ。もういいよその嘘、膨らまないって」
池田「話変えていい?」
鈴木「急だな」
池田「いや俺さ、知らないじゃん。だからいろんな人に、今どうしてこうなってるのか聞いてんのよ」
鈴木「お前人間関係煩わしいんじゃねえのかよ」
池田「ことわざで『百聞は一見に如かず』って言うじゃん? だから、『何聞だと一見に如く』のかを調査してる」
鈴木「…それ何人に聞いたの?」
池田「(スマホを見て)…今98」
鈴木「聞きすぎ」
池田「これさ、100ピッタリで正解出たらすごくない?」
鈴木「何のゲームだよ。じゃあちなみに、今どんな理由だと思ってんの?」
池田「(スマホを見ながら)えっとね、…まず、ウイルスなんだよね」
鈴木「おお」
池田「で、感染すると肺炎とかを引き起こす可能性がすごく強いと」
鈴木「おお、もう正解出てんじゃん」
池田「で、肛門からしか感染しないから、手洗いうがいよりも肛門を清潔に保つことが…」
鈴木「ダウトダウトダウトダウト。それ遊ばれてる」
池田「え、肛門じゃないの?」
鈴木「もし肛門だったら出歩いてもいいだろ」
池田「あそっか。まあだから、98だとこんな感じよ」
鈴木「逆に今までどんなのがあったの? 98までの間に」
池田「(スマホを見ながら)ん〜、最初は隕石が落ちてくるって言われて」
鈴木「早速遊ばれてんじゃねえか。もっと信頼できる奴に聞けよ」
池田「(同)…あ、で4人目にウイルスだって言われて、あっという間に世界中に広まって、感染力が凄まじいから人との接触を8割減らさなきゃいけないとか」
鈴木「四聞で済んでるよ。それが正解」
池田「いやいやいやそんなわけない! っつって(笑)」
鈴木「いや、そうなんだよ!」
池田「そんなウイルスあるわきゃない! ってなってさ(笑)」
鈴木「俺らもそうだったんだよ! でも実際そうなってんだよ!」
池田「でもしばらくず〜っと同じようなこと言われて、…24人目かな? ガリバーがウンコしたせいだって言われたのよ」
鈴木「どういうこと? ウンコが臭うから外出禁止ってこと?」
池田「まあこっちのほうが合点がいくな〜と思って」
鈴木「いかねえよ。親に言われても信じねえよ」
池田「まあそっから流れ流れて、肛門って感じかな」
鈴木「絶対ウンコから転じていっただろ」
池田「じゃあお前、99人目やって」
鈴木「…何この無駄なハードル」
池田「知ってることをちゃんと教えてくれればいいから」
鈴木「…まずコロナウイルスっていう名前で、中国で最初に発生して、そこから世界中に拡散して…」

そこへ、星、参加してくる。

池田「お、星来た」
星「うぃっす」
池田「ちょうどよかったわ。今って、なんで外出しちゃいけないんだっけ?」
星「…え? ガリバーがウンコしたからでしょ?」
鈴木「お前かよ! ガリバーウンコ説流したの!」
星「…え、違うの?」
鈴木「お前マジで言ってんの?」
星「いや俺も人からそうやって聞いたんだけど」
鈴木「なんでそれを鵜呑みにできるの?」
池田「……」
鈴木「池田なんか喋れよ」
池田「星」
星「ん?」
池田「…ふざけんじゃねえ!!!」

池田、画面越しに星を殴る。

星、「うっ!!」と言いながら後ろへ吹っ飛ぶ。
再び画面に戻ってきて、

星「…すまなかっ…うっ!!」

池田、再び殴る。
二発、三発と殴り続ける。

池田「おい、リモートでよかったなぁ!! リモートじゃなかったら死んでたなお前!!」

池田、最後のパンチをお見舞いする。
星、後ろに倒れる。
口を拭いながら起き上がり、血痰を「ペッ!」と吐き捨てる。

星「…リモートでよかった」
鈴木「え、何これ?」
池田「お前なんで殴られてるか分かるな?」
星「…ごめん」
池田「お前の口から言え」
星「…池田の彼女と、…浮気しました」
池田「だな。じゃなかったら、ガリバーウンコ説唱えねえもんな」
鈴木「…え、ガリバーウンコ説を唱えたのは池田の彼女で、それを知っているから星の浮気がバレたってこと?」
星「こんな時期だから、絶対バレねえと思ったんだけどな」
鈴木「そういう問題じゃなくね?」
池田「別に浮気したことにキレてるわけじゃねえよ。…外出んなよ」
星「…だよな」
池田「1人の油断がこの状況を長引かせることになるだろ」
星「すまん。軽率だった」
池田「…で、今何が起きてるんだっけ?」
鈴木「全っ然分からん」

(完)

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